第31話
今回の世界は少し長くなりそうです
さてさて、新たな組織が登場し、ますます盛り上がりを見せる…。
というか複雑になっていってるオレたちの冒険、そして辿り着いた9つめの世界とは…。
「魔法が一般的に扱われてる世界だったとさ」
「何?」
「いや、別に…何も…」
というわけでそんな世界だ。
右を見れば馬車のような乗り物が人を乗せて馬なしで動いてるし、
左を見れば人のもつ杖で操作されたレンガや木が家を建築してるし
空を見れば手紙がふわふわ飛んでいる。
魔法が発展しているせいか科学はあまり発展していないようだ。
「魔宝の反応は……なしか?」
どうやら今回はハズレのようだ。
「さて、どうやって過ごそうか」
そんな事を考えてるオレの目の前に男が一人歩いてくる。
そしてその男とすれ違う瞬間結界が張られるのとほぼ同時に
オレたちの真下からいくつもの氷の針が突き出た。
そのままいれば串刺しになってた所だったがオレたちはヤツの攻撃を避けていた。
「よくわかったな。オレが敵だって」
男はこちらへ振り向きながら言う。
「お前は他のヤツらとわずかに魔力が違ってたからな。
それに殺気が抑えきれていなかった」
おそらくヤツは朱き月の一人。
けっこう強力な結界が張られている。
これなら少しぐらいの魔力を持つヤツなら効果はありそうだ。
「へぇ、お前だったらけっこ楽しめそうだな」
そう言うとヤツは抑えていた魔力を一気に上昇させる。
「奏、あいつはオレが殺る。お前は離れて見とけ」
「ピンチになったら助けるから」
「勝手にしろ」
それを聞くと奏は後ろの方へ飛んでいった。
「始めるか…」
オレは魔剣を取り出す。
「いくぜっ!」
『アイス・ベルク』
急に辺りの気温が下がり、ヤツの目の前に大きな氷山が突き出る。
さらにいくつもの氷山が突き出しながらオレに迫ってくる。
動きが見えているので軽々避ける。
『アイス・ツァプフェン』
ヤツの周りに鋭い氷の槍、つららがいくつも創り出される。
当たり所によっては刺されば即死だな。
だったら……。
『ファイアボール』
1個だけではない。
ヤツの出したつららと同じぐらいの数の火球を創る。
そのせいで気温もさきほどより少し上がる。
「「放て!!」」
同時に叫んだ2人の声が重なり、周りの火球やつららが動きだし互いにぶつかり合う。
そしてぶつかり合わなかった火球が2、3個ヤツの周りを囲むように向かう。
「炸裂!」
ヤツに当たる直前でオレは火球を爆発させる。
やったか?
だがまだヤツはやられていなかった。
「まだかっ!」
煙の中つららが5本オレへ向かってきた。
つららは剣で弾いたり、
避けたりしたのだが煙でヤツが見えない間に続いて下から鋭いつららが突き出す。
「ぐぁっ!」
そのつららは避けきれずつららが1本二の腕を貫通する。
右腕に力が入らなくなり、魔剣はカランと音を立てて落ちる。
「これじゃあ剣は使えねぇな」
こんな時両利きだったら便利なんだがオレはそうではない。
ケガをしてない左手で扱えば実力は通常の半分。
つららを抜いた後仕方なく剣をしまう。
「どうした?自慢の剣なんか片付けちゃってよぉ?」
ようやく煙が収まりヤツの姿が見える。
何をしたかはわからんがヤツは無傷だ。
「いや、お前なんか武器を使わなくっても勝てるっつーの」
『ファイアフィールド』
オレを中心に半径50mの範囲に囲むように炎を壁を作る。
そして再び気温が大幅に上がる。
『プロミネンス』
オレが右の壁から炎の柱が突き出すイメージをすると炎の柱が右の壁から左の壁へ突き出る。
「くっ」
ヤツは辛うじてかわすがオレは左手を振り、炎の柱を突き出させて攻撃をしかける。
イメージするより動作で扱った方が威力もコントロールも良くなる。
「くそっ!」
ヤツは氷の魔法を使い、向かってくる炎を消そうとしたが、
すぐには消えず魔力が衝突し合う。
その間にオレは痛む右腕を使い、炎の壁をヤツへ向かわせる。
予想通りヤツは左右からの攻撃を防ぐために両手が塞がった。
その隙にオレは左手を前に勢いよく押し出す。
手の動きに合わせたように勢いよく炎の柱がヤツへ向かい、当たった。
「ぐあああっ!!」
威力は十分ある。これでかなりのダメージを与えられたハズだ。だが―――
「まだだぁっ!!」
ヤツはまだ生きていた。
今の攻撃でかなりのダメージを受け服も焼けて
ボロボロだったが叫び声を上げるほどの体力はあったようだ。
「調子に乗るなぁ!!」
ヤツの魔力が一気上昇し、それと反比例するように気温がどんどん下がっていく。
オレたちを囲んでいた炎が消滅し、代わりに氷の壁が現れる。
そしてヤツの右腕全体に膨大な魔力が集められる。
その魔力により次第にヤツの右腕は尖った氷に覆われる。
先ほど突き出してきた氷山を腕に装備した感じだ。
「くらえっ!」
突進してくるヤツの動きが格段に速くなっている。
なんとかかわしたがヤツの通った右腕に触れてもいない地面が凍っていくのが見えた。
ヤツはすぐさま反転し、再び突進してくる。
「これじゃ迂闊に近づけねぇな……。 !?」
避けようと動かそうとしたオレの足は凍らされている。いつの間に…。
「避けられるか!?」
ヤツはオレの胴体目掛けて向かってくる。
「ちっ…だったらこうするだけだ!」
オレは足に魔力を集め、炎を帯びさせ氷を溶かす。
ギリギリの所でかわし、左手でヤツの顔面を鷲掴みにする。
オレの着ているコートは頑丈にできているので
よっぽどの事がない限り凍らされることはない。
「燃えろ!!」
『燃え盛る手』
今度は左手に魔力を集めると左手が炎に包まれる。
そしてそれはヤツの顔にも伝う。
「ああああああああああああ!!!!」
ヤツの右腕を覆っていた氷は砕け、悲痛な叫びをあげる。
「ま…だ…だ…」
ヤツの魔力が背後に感じられるが気にしない。
「ぐっ…」
背中から鋭いつららが刺さる。
心臓からは外れたが痛みからして軽傷ではなさそうだ。
その傷口から血が流れるが離しはしない。
しばらくしてヤツは焼死した。
背中に刺さったつららも砕けたが右腕と背中の傷口からは未だに血が流れ続けている。
そして血を失いすぎたオレは気を失い倒れた。
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