第29話
さて、神殿の中に入ったわけだが意外と入り組んでいる。
まるで侵入者を自分の所へ来させないようにしているようだ。
今までにも何回かあったんだろうな。ここに侵入したヤツが。
そこらへんに骨が転がっていない所を見ると
迷路を彷徨って飢えて死ぬってわけでもなさそうだ。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
「な〜んにもねぇな」
しばらく歩いているがただ石でできた壁と床と天井と、あと奏しか視界に入ってこない。
こんなグダグダな展開は避けたかったな。
「おい!いたぞ!」
誰かの声が聞こえるなぁ……とか思っていると
「そこの2人動くな!こちらは『次元管理局』の者だ!
これ以上この世界に干渉することは許されない!今すぐ投降しろ!」
次元管理局ってなんだ?
とりあえずこの世界の人間ではなさそうだが。
振り返ってみると男が3人杖をこちらに向けていた。
杖と言ってもハリー○ッターで使ってるような
ひ弱そうな物ではなく長くしっかりとした杖だ。
銃よりは強力かな。
「で、何だって?」
「おとなしく投降しろ!」
「………嫌だね」
オレは一気にヤツらの目の前まで迫り、
魔剣レーヴァテインを取り出すと真ん中にいるヤツの腹目掛けて振る。
だがその時ヤツの前に魔法陣が現れ、オレの攻撃を防いだ。
その魔法陣とオレの魔剣がぶつかり合いバチチチチッという音がした。
「無駄だ!その程度では我らに傷を付けることはできない!」
その程度…ねぇ。
別にマジになってないんだけど。
「じゃあこれならどうだ!」
魔剣の切っ先をヤツらへと向け炎を放った。
魔剣のせいか使った魔力のわりに威力が大きい気がする。
「何!?くっ」
ヤツらは一瞬驚いたものの魔法陣でシールドを張る。
そろそろヤツらの顔に疲れが見えてきた。もう無理だな。
「ぐあっ!うあああああああああああ!!!!」
シールドが破れヤツらは揃ってオレの攻撃の直撃を受ける。
別にそんな叫び声を上げたくなる程強くしたわけじゃないんだけど。
その後オレたちを襲ってきた3人は(多分)気絶し、足下に倒れている。
「え〜と誰だこいつら?」
服からしてとりあえずは同じような組織にいるヤツだろうけどな。
ロキの手下か?
そういや『次元管理局』とか言ってたな………何だよそれ。
「ま、いっか」
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
階段を登ったり降りたり、右へ行ったり左へ行ったり……。
まるでゲーム内のダンジョンにいるみたいだ。
でもしらみ潰しに歩いていけばいつかはゴールに行き着くものだ。
「魔玉発見」
てなわけで魔玉を見つけたのだ。
おそらくここが最深部だろう部屋には魔玉が剥き出しのままでバリアで守られている。
で、やはりお約束なのが
「それを盗らせるわけにはいかない!!」
ラスボスっぽい感じで登場する邪魔者だ。
「今度は誰だよ」
と振り返れば中年のおっさんとさっき現れた男が3人。
中年のおっさんと言っても鍛え上げられた肉体を持つおっさんだ。
外見だけ見ての予想だが。
「隊長!あいつらです!」
両脇を抱えられた男がオレたちを指さす。
あのおっさんは仲間か。
「お前達!大人しく捕まってもらおうか」
どうやらこいつも争いは避けたいらしいな。
まぁ確かに避けたいが戦うのは別に嫌いじゃない。
「嫌だって言ってんだろ」
「ならばしかたないな」
そう言うとおっさんはさっきの男たちの杖の強化版のような杖を取り出した。
「死んでも文句はないな?」
オレは魔剣を取り出す。
「…待って」
さあ始めようかという時に奏がオレをボルテージの上昇を止める。
「来る…」
何が?と言う前に『彼女』は漆黒の羽を舞い散らせながら現れた。
「祢音!!」
「お姉様!!」
目の前に6枚の黒い翼を持った祢音が現れた。
その感情のない眼はじっと魔玉を見据えている。
「バカな!?ここに直接転移してくるなどありえん」
何があったかは知らんがおっさんは祢音の出現に驚いている。
「……………」
祢音はバリアで守られている魔玉に手を伸ばす。
「!? 触るな!!」
おっさんの叫び声が聞こえていないのか、
無視しているのか、祢音はゆっくりとだが動きを止めない。
祢音が魔玉を囲むバリアに手を触れた瞬間、ジュッと何かが灼けるような音がする。
「やめろ!それ以上続ければ腕が焼け爛れるぞ!!」
「祢音!」
だが祢音は動きを止めない。
それにもう少しで魔玉に手を触れる所まで近づいている。
奏が飛び跳ねて無理矢理祢音をどかそうとしたものの
「邪魔よ」
祢音が手を翳すと魔法陣が現れ、シールドとなる。
「くっ」
奏はシールドに弾かれまいと耐えているが最後には弾かれてしまった。
そしてついに祢音は魔玉を握り、バリア内から取り出す。
バリアに触れていた右腕は焼け爛れるどころか火傷すら負っていない。
「もうここに用はないわ」
祢音は一言そう言って次元転移しようとする。
「させるか!」
おっさんは杖の先端を祢音に向けるといくつものエネルギー弾を放つ。
だがそのエネルギー弾は祢音に届く前に爆発する。
エネルギー弾を破壊したのは奏だった。
その手にはミスティルテインが握られている。
「邪魔をするでない!」
「あなたなんかにお姉様に傷は付けさせない」
奏はそう言うと祢音の方へ振り返る。
「お姉様!戻ってきて!!」
「そうだ!戻ってこい!!」
「……………」
一度は動きを止めた祢音だがオレたちの叫びも無意味に次元転移の詠唱を再開した。
「くそ!!こうなりゃ意地でも!」
オレが祢音へ走り出すと祢音はシールドを張る。
魔剣を取り出しシールドへ攻撃し、しばらくぶつかり合うとシールドが破壊される。
だが祢音は転移し始めている。
「行くなぁぁぁぁぁ!!!」
剣をしまって必死に手を伸ばしたがその手が祢音に届くことはなかった。
するとオレが落胆する間もなく地震のような地響きが起こる。
ていうか浮いてるから地震はないんだろうが。
「とんでもないことをしてくれたな」
おっさんが強い口調でオレたちに向けて言う。
そういえば他のヤツらがいないな。帰ったか?
「どういうことだ?」
「そのようなこと言わずともわかるだろう。
ここでは飛行石と呼ばれている魔玉の力を失ったこの島は崩れ落ちる」
一応予想はしていたがまぁ予想通りだな。
『隊長!島が崩れ始めています!』
急におっさんの目の前にさっきの男の1人が映った映像が現れる。
「やはりそうなったか。お前達、外を見てみろ」
『お前達』ってのはオレたちのことなんだろうな。
ちょうど窓……というか外が見える穴があったのでそこから外へ出てみる。
「おお、こりゃヤベぇな」
遠すぎてよく見えないがどうやら島は端の方から崩れていってるみたいだ。
飛行石に崩れる島ってラ○ュタか!なんてツッコミをしないでおこうか。
それともオレは落ちていく人たちを見て
『人がまるでゴミのようだーー!!!』
とでも叫ぶべきなのだろうか。
「さて、この状況、どうする?島が消滅すれば何人もの人々が死ぬことになるぞ」
別にこの世界がどうなろうと知ったこっちゃないのだが
さすがにこのままバイバイとはいかなさそうだ。
「! そうかこれなら!!」
オレはバリアの張ってある元々魔玉があった台まで戻ると
今までに集めた魔玉の1つを取り出す。
「おっさんバリアを解除しろ!」
「無理だ。まさかこのようなことになるとは思っていなかった。
このバリアは永遠に張り続けられるようにしている上、破壊もできない」
「仕方ねぇ!」
バリアの中へ魔玉を握らせた右手を突っ込む。
「ぐああっ!!」
オレに右腕に高密度の魔力を帯びさせて
バリアの魔力に押し負けないようにしているのだが十分熱い。思わず叫んでしまう。
祢音のヤツよく声を上げずにできたな。
なんとか中心に魔玉を置いて右腕を一気に引き抜いた。
所々火傷の痕があるがしばらくすれば治るだろう。
「……どうやら、止まったみてぇだな」
地響きが収まったということは島の崩壊も防げただろう。
「どうだ?これで文句はねぇだろ」
オレはおっさんの方へ振り向いて言った。
「ああ。だが、島は少しばかり崩壊した。端の方の街は今頃海の底だろう。
お前達はあの女の知り合いのようだな。話を聞かせてもらおうか。
警備員やうちの者たちを傷つけた事にもついてな」
「その前に消えてもらおうか」
ということで魔剣を取り出そうとしたのだが
「あれ…?」
いつもなら魔剣がオレの手の中に現れるはずなのだが出てこない。
「無駄だ。先ほどこの辺一帯に魔力が使用不可となる結界を張った。
じきに他の部隊も到着する。諦めて捕まれ」
どうやら逃げた方がよさそうだな。
とうとう今流行りのアレに出てくる単語も使っちゃいました。
でもパクリじゃないんで。名前、違うっしょ?
それよりも学生を初めとしてほとんどの人は今日GW最後の日ですよねぇ。
連休明けの学校は辛いっすよ・・・・orz