第16話
今回は色々と動きが激しいかも
オレたちは北にある街『フリカ』、そこに向かって街道を歩いている。
持っていた金で装備アイテムは買わずに念のための回復アイテムを数個買った。
「長くなりそうだな、面倒くせぇ」
「いいじゃねぇか。焦んのは好きじゃねぇし」
「まぁな」
確かにオレも焦るのは好きではないが、
オレは焦っているのではなく面倒なのだ。
ま、別にいいんだけどな。
「お、プレイヤー発見!話聞いてみるか」
街道をしばらく歩くと、
前に立ち塞がるように上から下まで真っ白な服に身を包んだ男が2人並んでいるのが見えた。
「明らかに敵だろ」
「見かけだけかもしれねぇぞ?」
いや、眼が敵対意識丸出しだしな。
「あのさ、フリカって街の近く――」
オレは止まったがメデスはそのまま歩き続けフレンドリーに話しかけたのだが
話している途中で2人のうちの大柄の男がメデスの背後に瞬間移動したような速さで移動し、
短剣を取り出すとメデスの背中に無表情のまま刺した。
「ぐあっ」
メデスにけっこうなダメージが与えられる。
ちなみに背後から攻撃した方がダメージが大きいそうだ。
「お〜い、何ダメージ受けてんだよ」
「いや、瞬間移動なんて考えてなかったからなぁ」
オレたちがそこらのゲームプレイヤーに負けるとは微塵にも思ってないし、
ヤツら相手にオレも参戦する必要もないのでメデスに任せ、
オレは腕を組んでその様子を見ていた。
「さて、いってみるか」
メデスは槍を取り出すと向かってくる相手に備えて構える。
「!?」
だがメデスはそこから動くこともなくそのまま斬られてしまう。
「おいおい」
そのまま攻撃受けても攻撃力が上がるわけでもねぇし。
「動けねぇんだよ!」
そう言っている間にもメデスはダメージを受け続けている。
「しゃあねぇな」
このままではメデスのHPが減っていき、回復アイテムを使わなければならないので
オレは腕組みを解いて刀を取り出そうとしたのだが
「ちっ!動けねぇな・・・・・」
「だから言ったろうが!」
ずっと同じ体勢でいたからわからなかったのだろう、
いつの間にかオレも動けなくなっている。
表情を変えたりや話すぐらいは自由がきくようだが指1本動かせない。
そう言えばもう1人の小柄なヤつはオレたちに向けて手を翳しっぱなしでいる。
魔力を感じることができないならおそらくヤツらは瞬間移動やサイコキネシスを扱う超能力者だ。
「やっかいだな」
この体勢では刀を出すどころか魔法を使うこともできない。
そもそもサイコキネシスを解除する魔法なんてあるのかもわかんねぇし。
「ちょ、このままじゃオレヤベェんだけど!」
ヤツの幾度もの攻撃により、現在メデスのHPは5分の2程度。
このままではメデスはリタイアだ。
そして次はオレになるだろう。
だがオレもメデスも動くことはできない。
ここで終わるのか……?
その時――
「うわっ」
超能力により、オレたちの動きを止めていたヤツが
地響きと共に背後の地面から突き出た岩の柱によりダメージを受けよろめく。
「うらああああ!」
今の地響きと砂煙により動きを止めたヤツら2人に見覚えのある金髪が持っている剣で
オレたちの動きを止めていたヤツを薙ぎ払う。
「はあああああ!!」
そして無月たちと同じコートを着用し、フードを深く被っている大男が
2mはありそうな大剣を振り回し、メデスを攻撃し続けていた男を吹き飛ばす。
勝てないと悟ったのか男たちは瞬間移動を使って逃げ去った。
「ガラにもなく手こずっているようだな」
深く被っているフード上げて地の調律師『ゴート』が顔を見せた。
調律師の中で最も背が高く2mほどあり、赤土のような色をした短い髪をしている。
そしてゴートはただでさえ身長がそれほど高いというのに
その背の丈を超えそうなほどの土色の大剣を持っている。
「よっ、久しぶり・・・だな」
そしてもう一人の金髪の男は前の世界で会ったライだった。
しかもオレたちの事を覚えているようだ。
ということはオレたちは世界を移動していないということだ。
おそらくその原因はメデスだろうな。
「まさか続いて調律師とライに出会うとはな…」
無数にあると言われている異世界の中でたまたま同じ時間、
場所にいるというのは神の意志でも働いているようだ。
☆働いてます☆
「で、ゴートがここにいるのは何となくわかるんだが。
何でライがここにいるんだ?」
オレたちは現在次の街である『ポッタ』に向けて歩きながら質問する。
「1週間経ってもお前らが戻ってこないから心配しながら過ごしてたんだけど、主に姉さんが。
それから3日ぐらい後の学校でおもしろいから
このゲームをやってみろって無理矢理押しつけられて借りたんだ。
仕方ないから自分の部屋でやることにして、電源付けたらこの有様だ。
で、最近は影もなかなか現れなくって暇だったから
2週間ぐらいやってたら無月と同じ服を着たこのおっさんと出会った」
ということらしい。
「こいつとはたまたま街でこの少年に出会ってな。
最初に声かけてきたのがこいつだった。
『無月を知ってるか?』ってな。
腕を見せてもらった所、何があったのかは知らんがなかなかの腕前だから連れてきた」
このゴートという男見た目と同じくしてけっこう大雑把な男なのだ。
まぁその行動がオンラインゲームなら普通なのだろうが。
「お前らがいるならここの魔宝は大丈夫そうだな。
オレは次の街で帰らせてもらうとしよう」
ちなみにこのゲームをやめるには街へ行ってセーブ屋のような場所へ行けばいいそうだ。
さらに死なない限り何度でもプレイ可能。
こーゆうオンラインゲームには廃人とか言うヤツらがいるらしいしなぁ。
面倒だからあんまし相手はしたくないな。
☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★
だがそんな心配は無用のようで、
オレたちより遙かにレベルの高いプレイヤーと戦う事もなかったし、
ゴートとライもいたおかげで難なく次の街『フリカ』に辿り着いた。
『お前らがいればオレは用済みだな』
と言ってゴートはゲームを終了させた。
おそらくこの世界からも離れるだろう。
ちなみにライもそろそろ夕飯だということでこのゲームを終了させた。
「おいおい、またライの記憶消去忘れたろ?」
「あ〜〜ま、いいだろ。
別にペラペラ喋るようなヤツでもないだろうし」
「言い訳っぽく聞こえるな。
確かにそうかもしれねぇけど」
別にここですることは何もなかったのでさっさと次の街へ向かった。
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これといってイベントもないので省略します(手抜きじゃないですよw
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次の街は西洋風な建築物が並ぶ『パリス』。
街に着いたのはもう日が沈んだ夜だった。
HPやMPもけっこう減ってきたので宿屋で休むことにした。
しかもマジで寝てたようで起きた頃にはもう朝だった。
このゲームはリアルに時間が過ぎているらしい。
「さて、HPも回復したことだし行くか」
宿屋の前でステータスを見てHPを確認すると街の出口に向かおうとするのだが
「まぁ待てよ。昨日聞いたんだけどよ、
今この街に旅芸人の一座が来てて、そこの踊り子がすげぇ美人なんだってさ。
ちょっと見に行こ」
そういや昨夜街が異様に明るかったのはその所為なんだろうか?
元々そうゆう街だと思ってたんだけどな。
「んな時間ねぇよ」
「頼む!ちょっとだけだからさ」
そう言ってる間にもメデスはオレの手を引いて連れていこうとする。
「わぁったよ。手ぇ掴むな。
気持ち悪ぃから離せ」
オレはブンと大きく腕を振って強引にメデスの手から逃れる。
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「お、やってるやってる」
街の中心の広場にある噴水の前で芸は行われているようだった。
かなりの人数が見ているようで近くでは観客が壁となって芸が見られない。
「まだその踊り子はやってねぇみたいだ」
オレより背が高いメデスはピョンピョンと跳ねて覗いている。
「前行こうぜ」
「オレはここでいいよ。1人で行ってくれ」
別に芸が素晴らしくても踊り子が美人でも別に興味はないつもりだ。
「ちぇっ、シケてやがんなぁ。じゃな」
そしてメデスは観客たちをドンドン除けていき消えていった。
で、オレはブラブラしてメデスとはぐれるのも面倒なので、
ずっと観客たちの一番外側で聞いていた。
中では皿回しとか綱渡りでもやっているのだろう。
と思っていると観客たちが一斉に沸く。
どうやら噂の踊り子とやらが登場したようだ。
「おい!無月、ちょっと来い!」
「何だよ。てか腕掴むなって言ったろ!」
オレは再び腕を振ろうとしたが既に人混みの中にいたためうまく振れない。
「ほら!」
ようやく人混みを抜けた先に見た光景とは……。
「祢音?…と奏か?」
そこで踊っていた踊り子とは祢音と奏だった。
踊り子らしい露出の多い大胆な衣装を纏って見事に踊っている、というか舞っている。
祢音はオレと視線が合うと一瞬目を見開いたがすぐに元の表情に戻り舞を続ける。
ちなみに奏はオレと視線が合っても無表情のまま舞っている。
「おいおい、嘘だろ」
またこんな場所で調律師に出会うなんて絶対神の意志が働いてるハズだ。
★働いてます★PART2★
と、いうわけで祢音に会うために芸が終わるのを待ち、会うことにした。
だが芸が終わった後も握手会+サイン会と
芸能人さながらのファンサービスがあったためなかなか解散とはいかなかった。
「いや〜もうアイドルだなぁ。あの2人」
そう言っているメデスの手には祢音と奏のサインが書かれた2枚の色紙。
いないと思ったらそんな事してやがったのか。
15分経ってようやく観客が散り散りになり、
騒ぎが収まるとオレたちは旅芸人たちの下へ向かった。
「いや〜ビックリしたね。まさかこんなトコで出会うなんて」
着替えを終え、そう言って頭を掻く祢音は黒いコートを着ずに他の芸人の服と似たような服を着ている。
「何してんだよ」
「見ての通り旅芸人だけど?」
「そうじゃなくて―――」
「わかってるって。10日ほど前だったかな?
このゲームに入って、ここからけっこう南の方にある『リール』って街に着いたの。
宝箱の事はそこで聞いてさて行こうかって時に
ちょっとした広場で旅芸人さんたちが芸をやってたからせっかくだし見に行ったの。
それがもう感動物でねぇ♪
話をしてたら北の方に行くって言ってたし、
丁度欠けてた踊り子として一緒に行くことにしてもらったんだよ」
一気に話し終えると祢音は少し大きく息を吸う。
「ねぇねぇせっかく会ったんだし私たちと一緒に行かない?」
と誘ってくるがオレの答えは決まっている。
「一緒に行くってのは旅芸人の一座とも一緒に行くって事だろ?
オレは馴れ合いは好きじゃないし、芸をやりながらだから遅くなるし面倒だ」
「お兄ちゃんヒドイ。祢音ずっと寂しかったのに。そんな事言っちゃヤダよ」
泣きそうな声を出して瞳を潤ませる祢音だがこれが演技だってのはオレにはわかっている。
「…………一緒に行こ♪」
「嫌だ」
「行こ♪」
「嫌だ」
「行こ♪」
「嫌だ」
「行こ♪」
「嫌だ」
「むぅ〜〜〜〜〜」
祢音は頬を膨らまして唸るが別にそんなモンでオレは騙されやしない。
「やっぱお兄ちゃんには効かないかぁ」
それで何人の男を落としてきたんだ?なんて事を妹に訊けるほどオレはバカではない。
だが妹よ、お兄ちゃんはお前の将来が心配になってきたぞ………。
「じゃあな」
と言った瞬間
ぐぅ〜
とオレの腹の虫が鳴る。
そういやここに来てから何も食ってなかったな。
全身がゲームの中に入ってるようなものだから腹も減るし眠くもなる。
「ふ〜〜ん、お兄ちゃんお腹空いてるんだぁ」
それを効いた祢音はヘンに顔をニヤニヤさせてオレの前に顔を出してくる。
「今から渡したちお昼ご飯はんだけどなぁ。しかもタダで」
だから何だと言うのか、ソレでオレを勧誘しようってか?
「『ルーエ』さんの料理はおいしいんだけどなぁ」
それを聞いた瞬間メデスの眼が光る。
「何ぃ!?それはマジかぁ!!」
そして一気に祢音まで詰め寄ると確認をとる。
「マ、マジ…だけど」
その勢いには祢音も押され気味だ。
何があったのか知らない者には今の勢いにはビビるだろうな。
だがここは普通の人間じゃ来れないはず。
ということはルーエも何か特殊な能力があるのだろうか?
「無月、一緒に行くぞ!来なかったら殺す!」
何でオレまで巻き込まれなけりゃならないんだ?
「メデスもそう言ってることだしさ、行こうよ」
「はいはい、行きますよ」
まさに四面楚歌、奏は敵なのか知らんがまぁ味方でないのは確かだ。
「やぁったぁ!!」
飛び跳ねんばかりにはしゃぐ祢音が妙に腹が立つ。
とりあえずこの世界でライとルーエの出演決定
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