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第12話

「ふふふ………もしかして趣味はナンパかしら?私は趣味のための女?」


「いいえ、オレはいつでも本気です。ナンパは本気と決めた方しかしませんよ。


お付き合いしたいというならいつでもOKです」


食事の最中になんて話してやがるんだこの2人は。


次の日の朝、オレは屋敷のメイドに起こされて食堂へと向かった。


そこにはすでにメデス、ライ、ルーエが綺麗に調理された朝食の前に座っていた。


そして豪華な朝食を食べ始めたのだが…。


「どう?この後私とショッピングでも……」


「それはお断りします。ショッピングではなくデートと行きましょう」


「じゃあそうしましょうか」


目の前の2人は早速そんな会話を始めやがった。


ライはどう思っているのかは知らないが黙々と食事を続けている。


オレは何度もメデスのこんな所を見ていた。


ライがこの状況に無反応だということはルーエもいつもこの調子なのだろう。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



食事の後、オレはメイドに呼ばれて一緒に自分の部屋へ戻った。


「こちらが無月様の制服とカバンです。


ユイ様が今朝持ってきて下さいましたのでお渡ししておきます。


ライ様が20分後エントランスでお待ちしているとのことです。ご質問はありますか?」


「いや、ない」


オレは受け取った制服を眺めながら答える。


制服は紺色のブレザー。制服としては悪くない。


水月学園は学ランだったからネクタイは慣れてないし慣れるまで鬱陶しそうだな。


「わかりました。それでは私はこれで」


そう言ってメイドは部屋から去った。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「うっわ似合わねぇ……」


というのがメデスの制服姿のオレを見た第一印象。


「うるせぇ。てか何でお前がいるんだよ。学校来ねぇだろ?」


数人のメイドに紛れてメデスがエントランスにいる。


ちなみにライはオレの隣にいるし、ルーエは部屋にいるらしい。


「まぁいいじゃん。どうせデートの時間までヒマなんだし」


マジでデートすんのか?


「じゃ、行ってくる」


「「「行ってらっしゃいませ、ご主人様」」」


テレビでしか聞いたことのないセリフを背に受けてオレとライは屋敷を出て行った。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「この子が転入生ですか…」


現在オレは教師たちと顔合わせをするためにライと別れて職員室にいる。


そして教頭と思わしき眼鏡を掛けた男性に値踏みするようにじっと見られている。


「で、先生のクラスに入れる……と?」


その視線がオレからオレの隣にいるユイに移される。


どうやらほとんどの教師がオレが転入してくることを知らなかったようである。


で、ユイせんせーが話をつけてる最中である。


「ええ、私のクラスに♪」


ユイはオレの後ろに回って抱き締めてきた。


メデスには言わない方がよさそうだな。


「そうですか、手続きは既に済ませてあるようですしね。


理事長の許可もありますし、仕方ありません。認めましょう」


ここに来るまでにユイは何やら色々な手続きを済ませており、


いまさら変更なんて言ってられないようで、


とりあえずオレはここに入学することになったようだ。





「いや〜危なかったねぇ。教頭先生のしつこさには呆れるよねぇ」


「そうですね…」


職員室から教室に着くまでの間、オレはずっと手続きの苦労を聞かされていた。


「…………さて、ここが無月くんのクラスだよ。まず私が入るから呼んだら出てきて」


「はい」


そしてユイはオレを廊下に残して教室に入っていった。


「はーーいみんなーHR始めるよー」


なんつー気軽な教師だ。


そこまでテンションの高い教師なんて聞いたことがない。


まぁ教師でなかったら何人か知っているが。


「で、今日はサプライズだよ!


なんとこのクラスに転校生が来ることになりましたー!」


と言い終わると同時に教室内が騒がしくなる。


男か女かとかかっこいいかかわいいかとかまぁ当然の反応だろうな。


オレは期待通りか期待外れかわからんが。


「じゃあ入ってきて!みんな拍手!!」


生徒たちはちゃんと言う通り拍手し始める。


どうやらユイの性格にも慣れているようだな。


ガラガラガラッ


とドアを開けてオレは教室内に入る。


オレの姿を見たほとんどの生徒が歓声を上げる。


ライはというと無反応にオレの顔をじっと見ている。


「如月無月くんでーす!名前からわかる通り、この子は外国から来たんですよー」


と勝手にユイが簡単なオレの自己紹介を始める。


それしか知らないからもう言うことはないだろうけどな。


「無月くん、何か言うことは?」


と言ってユイがオレの顔を見てくる。


「よろしく」


別に何も言うことはなかったがこれぐらいは言った方が何かと都合が良いだろう。


「無月くんは一番後ろ、ライくんの隣に座ってね。


後は別に連絡することもないし、HRはこれで終わりっ!じゃね〜」


オレが自分の席に着く前にユイは手を振って教室を出て行った。


とりあえずオレは教室の一番後ろの席に着きカバンを置く。


するとわっとクラスメートとなった生徒たちが集まりオレにいくつも質問を浴びせてくる。


誕生日とか血液型とか自己紹介にあるような質問から好きな人はいるのかとか浮ついたものまでだ。


鬱陶しかったが適当だが全ての質問に答えていく。


授業開始のチャイムが始まるとオレの周りにいたクラスメートは散ってそれぞれの席に戻っていく。


「さ〜て授業始めるよ〜」


そう言って教室に入ってきたのはユイ。いきなりあんたか…。


授業は終始ユイのハイテンションで行われた。


授業を受けている生徒は同じようにハイテンションになったわけではなかったが。


オレは別にこの世界の学を学んでも意味がないので適当に受けていた。


で、昼休み。


「無月、ちょっといいか?」


休み時間の間にわざわざ校舎案内をしてくれた、


暇で物好きなクラスメート+αのおかげで食堂の場所はわかった。


腹も減ったので早速向かおうと立ち上がると隣に立っていたライに呼ばれた。


「何だ?」


イスを机の下に押し込みながらオレは答える。


「影が現れた。討滅するから付いてきてくれ」


と言うとライは走って教室から出て行った。


「おい!待てって!」


オレは走り出したライを追い、


一緒に食堂へ行こうと誘ってくる数人のクラスメートを避けて教室を出て行く。




下駄箱らへんで靴を履き替えるライに追いついた。


「影なら他のヤツらに任せればいいじゃねぇのか?」


今オレたちは学生だ。昼休みと言えど抜け出して後で面倒なことにはできればなりたくない。


「あいつらはあいつらでやることがあるんだよ。出現地点はこっから近いしな。


ついでに聞くがあのスケベ親父はアテになるのか?」


「今はならないだろうな、お前のねーちゃんと遊んでるんだろうし。


そうゆう時のあいつは存在の意味がない」


「そうか」


「で?場所はどこなんだ」


「この近くに公園がある。そこだ」


ライは手に持っているドラ○ンレーダーのようなモノを見ながら答えた。


そして靴を履き終えたライはオレより先に走り出す。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「ちっ、ヤバい!」


一度止まり、公園を見たライが再び走り出すのが見えた。


少し遅れて到着したオレが公園を見たのは真っ黒で巨大な蟷螂が異様に大きい口を開け、


今まさに砂場で遊ぶ男女の子供の内、男の方を喰おうとしている所だった。


そいつらには迫る影の姿が見えていないようで楽しく遊んでいる。


「お前らぁっ!逃げろぉ!!」


ライの叫びが聞こえたようで、


2人の子供はこちらを見るがその瞬間音も無く男のガキが喰われた。


命、そして形を失った男の子供は影のように黒くなり、溶けるように地面へ消えた。


「きゃああああああああ!!」


男の子供が消える様子を見てようやく事態を把握した女の子供が悲鳴を上げる。


「ちっ」


それにも構わず再び子供を喰おうとする蟷螂の口から


ライは走りながらそいつを抱えて砂場から離れた。


「悪いな、記憶を消させてもらう」


そう言ってライがポケットから取り出したのは前のようなカンテラではなくジッポー。


子供の目の前で着火させるとそいつは気を失った。


「さっさと終わらせるか」


オレは刀を取り出し、飛び上がって蟷螂特有(?)の細い首を目掛けて振ろうとしたが


ヤツの首に届く前にヤツの鎌がオレを襲ってきた。


「くっ」


オレは振り上げた刀を体の前へ移動させ防御する。


「うわっ」


影のくせに意外と力が強い。


オレは宙に浮いていたのでそのままもろに地面へ叩きつけられる。


さらに地面へと叩きつけられたオレに向けて再び鎌が振り下ろされる。


オレは刀で防御しようとしていたのだがその前にライがその腕を斬り落とす。


斬り落とされた腕は音もなく地面へ落ちたがその衝撃で砂埃が舞った後消えた。


今だ!!


オレは一度止まったその隙をついてヤツの首を斬った。


ヤツの首は落とされても声のない叫びを上げ続けながら体と共に消えた。


「あの子供はどうすんだ?」


ライに助けられた子供は砂場から離れた木陰で気を失っている。


「記憶を消したからな、目を覚ました時には今のことは忘れてる。


さっさと戻るぞ、昼休みももう終わる」


ライは携帯のディスプレイを見てそう言うとさっさと走り出してしまう。


「あ〜あ、飯が食えなかったな」


オレは昼からの授業中、ずっと腹が鳴っていた………。


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