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第11話

書いてはいませんがこの世界に魔玉の反応があることは2人ともわかっていますのでご了承下さい。

「『形を失った虚ろなる霊』、ねぇ…」


ライが言った言葉をメデスが復唱する。


「平凡な人にはその姿は見ることができないわ。突き詰めれば霊だからね」


「ヤツらは『形』を食物としている。


普段は何かの影に取り憑いて食事の時はああやって姿を現すんだ」


「ですので私たちは『影』と呼んでいます」


「影が生物を食べるのはその者の形。


喰われた者は形を失いその場ではなくしばらくしてから『影』となる。


しかし形を喰ったとしても一度『影』となった者はもう戻ることはできない。


だがヤツらは喰い続ける。無駄だとわかっていてもな」


「そうして影が増えていくわけですが普通は霊界にも行けず、この世で誰にも取り憑けず、


自縛霊にもなれず、居場所を失い、自分、つまり形を失う。そういった霊が影になるんです」


「はい、他に質問は?」


一通り説明を終えたのか一段落つくとユイがどうぞとこちらに掌を見せる。


「いや…今の所は…ない」


オレは即座に思いつかなかったので考えながら答える。


「オレもだ」


「そういやそちらの兄さんの名前は聞きましたがあなたはまだですよね?」


そう言い終わるとフロウがオレを指さして言ってきた。


「『如月無月』だ」


「で、2人とも、年は?」


「オレはピチピチの23です!ユイさんはおいくつで?」


年を聞かれたのに疑問の声も上げず、そう答えて再びユイの両手を握るメデス。


「私はヒ・ミ・ツ」


そうして笑顔満面で返すユイ。その顔は絶対言わせないとでも言っているようだ。


「これは失礼。女性に年を聞くのは野暮と言うものでしたね」


そう言って手を離すメデスにもう諦めたのか面倒になってきたのかライはもう剣を抜くことはなかった。


「オレは16だ」


メデスが答えてオレだけ答えないのも何なので一応答えておく。


「ふ〜ん。無月くんはライくんと同い年だね。


メデスくんはともかく無月くんはどこかの学校に通ってるの?」


ユイがそう言うとライが片手で頭を抱え、フロウがやれやれというポーズをし始めた。


「い、いえ…」


いやな予感がしたが嘘を吐いてバレるとそれはそれで面倒なので本当の事を言っておく。


「え〜〜!まだ16なんだったら学校いかなくちゃ!私の学校に来ない?」


「は!???」


全く意味が理解できない。5W1Hが全て当てはまる勢いで。


「また始まりましたね、ユイさんの異常なまでの世話焼き」


「他人の生活なんてどうでもいいだろ」


とフロウは呆れ顔で言うし、これは世話焼きレベルではないだろう。


どこに初対面のヤツを学校に入れさせようとするヤツがいるんだ?


「ユイさんは『ルイシュ高校』の教師なんですよ」


ああ、だからか………なんて納得できるわけねぇし。


「無月、OKしておけ。後が怖いぞ」


とライは言っているが断るとどうなるんだ?


「ライくん、私はそんなことしないって。で?どうするの?」


「言っておくが無月、ユイさんの誘いを断ったらオレが殺すぞ?」


メデスまでユイ側に付いている。しかも断ったら死刑ときた。


他のヤツらは絶対オレ側ではなさそうだし、ここは同意するしかないのか。


「わぁったよ。行けばいいんだろ、行けば」


「そう!じゃあ明日から転入だね。


クラスはライくんと一緒になるように裏工作しておくから、


学校生活の事はライくんに聞いてね」


うっわ、裏工作ってどんなに権限があるんだよコイツ。しかもライと一緒のクラスらしい。


「じゃあ今日はここで解散といこうか」


言いたいことが言い終わるとユイは解散を提案する。


「はぁ、マジかよ」


「いいな〜ユイさんと毎日いつでも会えるなんて」


ガックリと肩を落とすオレに肩を叩きながら気楽に話しかけるメデスがウザイ。


「お二人さん、泊まる場所はあるの?」


教会の出口に向かって歩き始めると後ろからユイが声をかけてくる。


「どっかのホテルでも泊まろうかと思ってるけど」


「ふ〜ん、だったらライくんのうちに泊まっていけば?」


と言ってユイはライをちょいと指さす。そこまで世話焼きなのか……。


「な!?」


そんな声を上げたのは今にも教会を出ようとしたライ。


「いや、オレとしてはユイさんの家に泊まろうと思うのですがどうでしょう?」


と言ってメデスはユイに迫るが


「残念でした。私の家は無理で〜す」


と一発拒否。


「いえいえ、そこまで一緒にいても見飽きるなんてことはありえないですよ」


誰もそんな理由で断ってないのに余計な話を創り上げて未だに迫るメデス。


「私、しつこい男は嫌いです」


「そうですか…」


メデス撃沈…。


「いいでしょ?ライくんの家一応二人暮らしじゃない。


家は大きいんだし部屋は余ってるはずでしょ?」


「………わかった、断ると後が怖いしな。2人共、ついてきてくれ」


しばらく考えるようにこちらを見つめた後、ライはそう言って教会を出て行った。


「それじゃ無月くん、また明日ね」


「ああ」


「ではまたお会いしましょう。ユイさん」


そしてオレたちもライのあとを追って教会を出た。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



で、着いたライの家は


「「ほぉ〜〜」」


と、思わず溜息をきたくなるような―もうしてるが―豪邸。


口を開けてほうけているオレとメデスを残して、


ライは立ち止まることなく扉へ向かっていく。


そして豪邸に入れば


「「「お帰りなさいませ ご主人様」」」


十数名の若いメイドからそう出迎えられる。


……しまった!メデスは!?


「さすがこんな豪邸にお仕えするメイドだけ会ってお美しい。


ぜひともこの瞬間からオレ専属のメイドに………」


遅かったか。メデスは両サイドに並ぶメイドたちのうちの一人に手を握って声をかけている。


しかもそのメイドは頬を赤く染めてるし…。


まぁ見かけだけならメデスはかっこいい男だが性格が性格だからな。


普通はそのナンパに使うセリフだけで拒否反応を示すモンなんだがな…。


「おい、くだらねぇことしてんじゃねぇよ」


オレはいつまでもメイドに向かって歯の浮くような口説き文句を言っている


メデスの襟を後ろから掴み引きずってライについていく。


「ではこの話はまた後日〜〜」


はぁ、こんなヤツ放って次の世界へ行くべきだったかな。


「お前の親は出迎えに来ねぇのか?」


ライの家に入ってしばらく歩いているが家族と思わしき人には出会えてない。


「オレの親は2人とも海外出張だよ。


父さんはイールスグループの社長として、母さんはその社長秘書としてだ。


家にいる日なんて数えるぐらいしかねぇな」


イールスグループがどんなにでかい会社かは知らないが、


やはりこんな豪邸に住むぐらいでかいのだろう。


するとライはあるドアで立ち止まり、コンコンと2回ノックする。


「姉さん、帰ったよ」


そう言ってライはドアの前から去ろうとしたのだが


「あら、今夜も遅かったわね」


体を横に向けた瞬間ドアが開いてライの姉さんとやらが姿を現した。


社長の娘だから特別な英才教育を受けてきたんだろう目つきは嫌に鋭く第一印象は冷たそう、だ。


「あら、こちらの方は?」


だが社長の娘としてはベタかもしれないが美人なわけで、ということは


「オレの名はメデス。いやぁさすがこのような豪邸に住むお嬢様だけあって気品がある。


今からでもオレの奢りで夜の街に行きませんか?」


と、なるわけであり、そして『お断りします』、となるわけだ。と思ったのだが……


「今日は疲れたし、いいわ。また次の機会にね」


あれ?なんか予想外。ユイにはフられたがさっきのメイドといい、このお嬢様といい、


どうやらこの世界ではメデスは比較的モテるようだ。


「この人たちは友達だよ。


こっちがメデスでこっちが無月。


しばらく泊まらせてやってくれないか?」


とライは順々にオレとメデスを指さして簡単に紹介する。


「ふ〜〜ん。2人ともいい男じゃない……いいわよ。私は『ルーエ』よろしく」


? オレまでターゲットか?


まぁ第一印象はなかった事になるほどいい笑顔ではあった。


ルーエはそう言うと部屋の中に戻っていった。


「いやぁ、お前の姉さんいいなぁ」


さっきからメデスは何度も後ろを振り向いてはそう言っている。


「気にすんな。こうゆうヤツだ」


「ああ、ユイを口説いた時からそう思ってた」



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「部屋はこの2つを使ってくれ。


家具や大きさは一緒だからどっちがどっちにするかは適当に決めてくれ。


家の設備はその辺のメイドにでも聞いてくれ。じゃあなオレは部屋に戻って寝る」


そう言い残してライはどこかへ去ってしまった。


「オレはこっちの部屋にするぜ。ルーエさんの部屋に1歩でも近づきたいからな」


と言ってメデスはにんまりして右の部屋を指さす。


「あ、そ」


メデスの言葉を軽く流してオレは左の部屋へ入ってすぐに寝た。


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