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第8話

『お前、魅夜ちゃんのこと好きなのか?』



『任務に情は邪魔なだけだ。いつか自分を殺すぞ』



その言葉が一晩中頭から離れることはなかった。


オレは魅夜のことが好きなのか。そんなことばかりを考えていた。


そのおかげであまり眠れなかった。


そして朝が来たが実は目が覚めたのはまだ空が瑠璃色に染まる夜明け前からだった。


起きてから何も考えず城内をブラブラしていた。


たまにお手伝いさんとでも言うような格好をした女性に会い、短く挨拶を交わす。


予定では午前中にメデスが城の上位の者に『元素使い』としての顔見せがある。


その後は何も予定はないのでブラブラとのんびり過ごそうと思っている。


城内は広いので時間をけっこう潰せた。メデスの顔見せの時間はもうすぐだ。


「さて、行くか」


オレは心にもやもや感を残したまま天守へ向かった。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



天守では両サイドにこないだと同じような人たち+佐次が並んでいる。


前回と違うのは隣に佐次がおらず、代わりにメデスがいるということ。


「はい、間違いなく私は元素使いです」


メデスがそう断言すると周りが騒がしくなる。


本人たちは細々と話しているつもりのようだがそれが逆に耳障りだ。


急に元素使いが2人も増えたのが怪しかったのだろうか。


「みなさん、静かに。メデスと言いましたね?


この国のために戦ってくれるのであればここに滞在することを認めましょう。


どうしますか?」


「はい、この国、そして姫のために戦いましょう」


メデスが膝をついてお辞儀をする。


丁寧な言葉遣いだったが『姫のために』を強調させたのがこいつらしい。


「ではお願いします。部屋は昨晩使っていただいた所でいいですね?では解――」


解散と言い終わる前に後ろの障子が勢いよく開け放たれる。


「姫様!申し上げたい事が!!」


「無礼な!まだ事は終わってはおらんぞ!」


と一人の男が叫ぶが


「構いません。どうしました?」


魅夜はその男を静まらせて問う。


流那国るなこくがこちらへ攻めてくるとの言伝ことづてが!」


「何ですって?………仕方ありません。戦の準備を!」


周りの者が慌ただしく動き回る中、状況がわからないオレとメデスは『?』状態だ。


「そういえばお二人は『流那国』のことは知りませんでしたよね。ご説明しましょう」


天守の間に魅夜とオレとメデスしかいなくなり、魅夜は説明を始めた。


「我が『夜魔国』は北、東、南、西それぞれ4つの国に囲まれています。


北にあるのは『三谷国』、東にあるのは同盟国の『鞍馬国』


南にあるのは今攻めてきた『流那国』、そして西にあるのは大国『阿修羅国』です。


流那国は元素使いが2人います。


おそらくこの国に元素使いが来たのを聞いて早く潰してしまおうということでしょうね。


今までの私たちでは勝てないでしょうが今はあなたたちがいます。


早速ですがお二人とも、戦ってくれますね?」


「はい」


「はい。姫の仰せのままに」


オレは立ってただそう言うだけだが、


メデスは右腕を前に回してジェントルマンっぽくお辞儀をした。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



「さ〜て魅夜ちゃんのために頑張りますか」


「メデス、姫様と呼べ、姫様と」


オレたちは既に準備万端、流那国軍は止まることなく進み続けているそうなので迎え撃つ態勢で準備している。


周りが相手に元素使いが2人もいることにこわばっているようだが


メデスは呑気にそう言い、佐次に注意されている。


「姫様かぁ。それはそれでいいかもな」


まったく、緊張感のないやつだ。


まぁそれもその実力故のことなんだろうけどな。


「見えたぞ」


佐次がそう言って太めの刀を前方へ向ける。


そこには続々とこちらへ向かってくる兵たちがいた。


「どいつが元素使いだ?」


と言ってみたがあまり目をこらして探す必要はなかったようだ。


2人、騎乗兵とは別に歩兵に囲まれて歩く馬に乗った男が2人見えた。


「あいつらだな」


格好は他の兵たちとは浮いていて、


とても今から戦う兵の服装ではないと思えるほど色鮮やかで派手だ。


まぁこちらはこちらで違う意味で戦う兵とは言えない服装をしているわけだが


そしてある程度見えてきた所で流那国軍は一糸乱れずピタリと立ち止まった。


オレとメデスは馬を降りて他の兵に預ける。


「無月、お前どっち殺る?」


メデスが槍を取り出して聞いてくる。


「じゃあ右だ」


「ならオレは左だな。てことで佐次、あいつらはオレらに任せときな」


「ああ、頼むぞ」



んなわけで戦闘開始!



「進めぇ!元素使いは無月とメデスに任せろ!他のヤツらを殺れぇ!」


「「おおおおおおおおおお!!」」


侍、槍兵を含めた歩兵が一気に前進する。


しかし、元素使いを避けながら。


「おいおい、オレたちと遊ばねぇの?」


脇を抜けていく兵たちを見て拍子の抜けた顔をする元素使い。


「お前の相手はオレだ!」


オレが相手する元素使いAが余所見をしている隙にオレは飛び上がって勢いのついた一撃を放つ。


「うわっ」


元素使いAは刀を取り出して防いだが勢いを押さえきれずに後ろへ馬から転げ落ちる。


「おい、痛刃つうは!」


元素使いBが痛刃と呼ばれた元素使いAを見、再び隙ができる。


「隙アリッ!」


そこをメデスが槍で馬から叩き落とす。


「うわっ」


乗る人がいなくなった馬はどこかへ走り去ってしまった。





  〜無月SIDE〜


「お前かぁ?夜魔国の妖術使いってのは」


こいつ、妖術使いって言ったな。自分がそうだというのに。


「ああ、そうだ。お前もそうだな」


こいつからは不思議な力を感じるが魔力ではない。


魔玉を探しているヤツらとは関係なさそうだ。


「へへっ。お前、死んでもらうよ」


と言うと痛刃はこちらへ走り出して斬り出してきた。


「遅い」


オレは軽くヒラリと跳んでかわし浮いている間に痛刃の右肩を斬りつけた。


「ぐああっ」


スピードが遅すぎる。


元素使いは自然の力が使えるだけであとは普通の兵と変わらないようだ。


この世界じゃその力が使えれば敵はいないかもしれないが、オレとの戦いでは無意味だ。


「ちっ、ウザイんだよ。お前!」


痛刃は赤い円が刻まれた右掌を背後に降り立ったこちらへ向ける。


ほう、『ウザイ』はこの時代にはもう使うヤツがいたのか。


「そんなこと考えてる場合じゃねぇな」


そしてヤツの右手から炎が勢いよく放たれた。おもしろい、勝負してやろう。


「はあぁっ!!」


おもしろそうなのでオレは刀の先を痛刃に向けて同じように炎を放った。


そして2人の炎がぶつかり合う。


他の兵はオレたちから少し離れて戦っているので巻き添えを受ける者はいない。


「はああああ!!」


痛刃の顔は炎で見れないのだが声からすると相当頑張っているようだ。


しかし全く手応えがない。なんだ、この程度か。


「本当の炎を味あわせてやろう」


オレは炎の勢いを上げる。するとおもしろいようにこちらの炎が進んでいく。


「な、何!?…………うわああああああ!!」


オレの放った炎そのまま痛刃の体を通過する。


そしてオレの目の前一直線には誰もいなくなった。


「やっべ、敵味方区別無しだな。まぁいっか」


そしてオレは他の兵の加勢に入った。





  〜メデスSIDE〜


「あんたがオレ様の相手か?オレ様の手によって死ねるんだ。ありがたく思え」


叩き落とされたのに偉そうなこと言いやがる。気に食わねぇな。


「何偉そうな事言ってんだ?ぁあ!?」


話をするだけでも腹が立ちそうだ。女と話す時とは比べものにならないほどな。


「この那亜流ナール様の前では口の聞き方に気をつけろよ」


あ〜あ、偉そうな女ならまだしも男だぜ?しかも名前ナールってナルシストみたいだな。


鬱陶しいな。さっさと終わらせよう。


「さっさと、死ね!」


オレは一瞬でヤツの目の前まで移動し脳天狙って素速い一撃を放った。


「おっと」


しかしヤツは体を斜め下へ動かして避けた。


後ろでは突きの勢いでできた風が芝生をなぎ倒しているのが見える。


本人は余裕で避けたつもりだろうが頬に風で切れた切り傷ができる。


「う〜ん、脳天貫いたと思ったんだがなぁ」


とぼやいていると下から声が聞こえる。


「何ボサっとしてんだ?」


下からヤツが手の甲に熊の爪のような鉄の武器を使って足を狙って攻撃してきた。


「ムリムリ」


ヤツとは違ってオ・レ・は・余・裕・で・小さくバックステップをしてかわす。


「まだまだ行くぜ!」


オレは体を起き上がらせたヤツを狙って何度も素速い突きを放つ。


「くっ」


だがヤツは紙一重で突きの雨をかわしていく。


「よっと」


ヤツがそう言うと軽く地面を蹴って上空へ飛んでいった。


「反応だけは一級品だな」


オレは上でオレを見下しているヤツを見上げて呟いた。


「オレの妖術は『空』の力を持つ。ここまでこれるか?」


なんて挑発してくるのでオレも上空へ飛んでヤツと同じ高さまで来た。


「お前も『空』か・・・・」


「何勝手に納得してんだよ。オレは『空』じゃねぇ。『水』だ!」


腹が立ったから高圧の水流をヤツに向けて放った。


「うわっ!」


遠距離攻撃が来るとは思ってなかったのか見事に直撃してくれた。


ヤツは水流に押し流され数十M離れた。


「そうか、お前調律師とか言うヤツか」


遠くからそう言ったのが聞こえてきた。


「? 何故知ってる?…そうかお前が隊長が言ってたヤツらの一味か」


「一味といやぁ一味だ。その中でもオレは協力者ってモンだけどな」


「協力者でもこの事を知っている以上お前は死あるのみだ」


オレはさっきよりさらに素速く間合いを詰めて一瞬でヤツの腹を狙って高速の突きを放った。


「くっ、今のはミスったな」


このスピードで避けられるほど反応はよくないようで、


腹には深くはないが5cmほどの突きによる傷ができる。


「これで終わりだ」


オレは勝利を確信した。


「はぁ?まだオレは戦えるぜ」


ヤツは血を流しながらも手を広げてアピールしているがもう攻撃する必要はない。


「オレのゲイボルグは突きで掠り傷でも負わせればその傷から無数の棘が生み出される。


さっきのオレの攻撃はそうなるよう魔力を使った一撃だ。お前はもう終わり」


オレがそう言うとヤツが悶え苦しみ始めた。


何度も見たがそうとう苦しそうだな。


終いにはヤツの体から無数の棘は弾けるように外へと飛び出しヤツの体はただの肉塊となった。


「お〜わりっと」



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



流那国が手強かったのは2人の元素使いがいたから。


その2人が死んだ今、元々の戦力はこちらの方が上だったので難なく撤退させ、領土も増えた。


だがオレたちはこの後とんでもない事態に陥るのは誰も知るよしがなかった。


アカシャの末裔の一人である魅夜…いや、月詠以外は…。

今回は少しグダグダ感があったかもしれませんね。

まぁどうせ元素使いとの戦いだけ書ければどうでもよかったりしたんですけどね・・・・・

さて、長くなった『魅夜編』も次で最後です。

無月の魅夜への想いはどうなるのか!?お楽しみに〜

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