第4話
「ふわ〜あ〜、ねむ…」
心地よい柔らかな日差しがオレの顔を優しく照らしている。
部屋の中にいても鳥のさえずる声が聞こえる。
朝から気分の良くなるすがすがしい朝だ……。
「って何言ってんだオレは!?」
自分で言っておきながら自分で否定するってのはおかしいかもしれないがこれは仕方のないことなんだ。
オレがこの世界に着いたのは昨日の真っ昼間、太陽がサンサンと輝いていた。
だが、そんなことはどうでもいい。
問題はこの世界だ。
着いてからというもののオレはロマンチストになりかけている。
それもそのはず、この世界の住人は全て詩人やロマンチストばっかだ。
朱に交われば赤くなるとでもいうのだろうか、
一日も経ってないのにオレもロマンチストになりかけているのだ。
こんな世界さっさとオサラバしたいのだがここに魔宝があるって反応しているから鬱陶しい。
昨日は聞き込みをしていたがそのためには住人と話さなければならない。
成果はなし。ただ相手のロマンチストが移っただけだった。
ちなみにその夜はホテルに泊まった。
部屋もなんか気にくわない雰囲気で満ちあふれている……。
「真剣に探さないとヤベぇぞ」
そしてオレはホテルを出て外に向かった。
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外はもっとオレの精神に悪影響を与えそうだ。
「ん〜、みんなが笑顔ってのは平和でいいな〜」
……またやってしまった……しかも満面の笑顔で…。
早く見つけて転移しないと自己嫌悪に陥って自殺でもしそうだ。
「おい、そこのお前っ!この世界で一番貴重な宝はないのか!?」
そこらへんで歩いている青年の服の襟を掴み、ブンブンと振りながら聞き込みを開始する。
「HAHAHA、何を言っているんだい?目の前にいるじゃないか。
君や世界のみんなの幸せ。これが一番の宝じゃないか」
この上なく気持ち悪ぃことを言いやがる。
「オ・レ・の・どこが幸せに見える!!?」
オレは首を振るのを止め、青年にガンをとばすが、
「君の活き活きとした表情、健康なのは幸せなことだよっ」
全く意味がなかった。
「もういいっ!!」
爽やかに笑い続ける青年をそう言って突き飛ばして歩きだす。
後ろから元気なことは幸せなことだとか聞こえてきたがオレは聞いてない。
「図書館なら何かあるはずだっ」
猛スピードで人混みを駆け抜け図書館へ突っ込む。
「どれだ!?」
オレはこの世界に関する資料が載ってそうな本を手当たり次第本棚から引っこ抜き、机の上に叩き込み読み始める。
「な、なんだこれは…」
住人がロマンチストばっかならそいつらが書いた本も同じことだった。
国の資料とは思えないほど内容もメルヘンチックで見てるだけで気分が悪くなりそうだ。
「さっさと意味のあるもん出てこい!!」
で、その内の1つの本を
「これか!」
と、山積みの本から適当に本を勢いよく引き抜き表紙も見ずに勢いよく開けると
「うわ…な…」
オレは気を失った……。
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「ん…くそっ…なんだよ」
目が覚めたオレの見た光景は一面に広がる野原だった。
「確か本を開いた時に本に…吸い込まれたぁ!?」
そして苦悩するオレの耳に誰かの声が聞こえる。
『愛を求める壮麗なる者よ
見事このクイズゲームをクリアせよ
さすれば望みの物が与えられるだろう』
「誰だよ、お前!さっさと元の世界に戻しやがれぇ!それにオレは愛なんか求めてねぇ!!」
オレは叫んだが返事はまったくなかった。
「仕方ねぇ。望みの物がもらえるようだしゲームとやら、やってやろうじゃねぇか!」
オレが望むもの、それは魔玉ただ一つだ。これをクリアすれば魔玉がもらえるってことだろう。
ついでにいうとさっきから気を正常に保つので精一杯だ。
ちょっとでも気を緩めればこの雰囲気に呑まれそうだ。
そう叫ぶと『この場面を最も美しく表現せよ』と書かれた看板が地面から突き出し
奥に笑顔満面の若い男女が手を繋いで花畑をスキップしている。
見ているだけで目が腐りそうだ。
「うぇ……これをか…」
オレが試行錯誤している間その男女はスキップし続けている。
「仕方ない。ロ、ロマンチストモードに…」
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如月無月のイメージを非常に乱すため回答はご紹介できません。
ゲームクリアまで少々お待ち下さい
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「はぁ〜〜…いっそのこと死なせてくれ…」
あのあとオレは同じ形式のクイズを数問解き、目の前には『ゲームクリア』と書かれた看板と宝箱がある。
「やっとだ…」
オレはよろめきながらも宝箱を開ける。
「……………」
中には紙切れが1枚あるだけ、それにはこう書かれていた。
『君が欲するものはもう君の心の中に!!また遊んでくれ』
怒りの叫びを上げる前にオレは再び気を失った。
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「うがああああ!!」
オレは図書館であるにも関わらず力の限り大声を上げた。
そうすればやはり迷惑であり当然図書館を追い出される。
「くそぉっ!!」
外に追い出されてもオレの怒りは収まることを知らない。
「何で!?確かに水晶は光って……」
で、確認のために念じて腕輪に付いている水晶をみて改めて気づいたのだが
「まさかな…………昨日もたしかこんな天気だっけ?」
その水晶には太陽が映っており、そのまま見ていなかったとしてもけっこう眩しい。
そう、この世界に来てすぐに反応を調べようと念じて水晶を見て
太陽の光を反応ありの光と勘違いしたとバカがいたのだ。
それは間違いなくこのオレだった………。