表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/73

第2部 第1話

さて、事件を終わらせ本部に戻った無月たちを迎えたのは


静寂に包まれた広間に響く労いの言葉ではなく、


「うおわああぁぁぁ!!」


水色のスライム状の動く物体だった。


そのスライム状の物体は扉を開けた無月の体に覆い被さる。



ズバッ



とメデスが槍で斬り払うとスライムは真っ二つになり地面に染み込むように消え去った。


「何…今の?」


スライム状の物体が消えた地面を見ながら祢音は呟く。


すると


「ああ!皆様、ご苦労様でした!」


奥から一人の若い青年が至って普通の剣を持って寄ってきて一礼した。


「ねぇねぇ。


今なんかスライムみたいなのが来たんだけどアレ何?」


そう祢音が問うと


「あれですか?どこ行きました?」


と返す。


「オレが斬ったよ」


「あ、ありがとうございます!


あれはですね、総帥様の部屋がなぜか今まで開かなかったんです。


ですがついさっき扉が開いたんです。


そしたら不格好な生物たちが部屋から何匹も出てきたんですよ。


それでそのまま放っておくわけにもいかないので退治して回っていたんです」


青年はそう丁寧に説明した。


「そうか。なら手伝うよ」


「ありがとうございます!生物は本部内の色々な所を動き回っていますので


見つけ次第倒してください。では私はこれで」


青年は再び一礼すると剣を右手に持ち、たったったと右の方へ駆けていった。


「その生物とやらは弱そうだし、ここは別行動にするか。


フェイト様は総帥の間で待機してください。


んで奏、お前は祢音と行動してくれ」


「「わかりました」」


「報告もしなきゃいけないし、じゃあ、終わったら総帥の間前で集合な」


「「「「了解」」」」



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★



で、数十分後の総帥の間前……。


「ふう、任務で疲れてるってのにこれはないだろ」


一番先に着いたのは無月。


このどんなに部屋があるかわからないほど広い城内を走り続けたため、


膝に手をつき肩で息をしている。


「お、一番乗りじゃなかったんだな」


次に到着したのはメデス。


年齢が上なので体格的にも差があるのか無月ほど疲れている様子はないが息づかいが荒い。


「はぁはぁ…やっと…終わったぁ…」


続いて祢音と奏が到着。


2人とも息が上がっておりぜいぜいいっている。


「みんな集まったな。じゃ、報告にいくぞ」


そして無月はでかい扉を開けて中に入った。





「皆の者、任務そして先ほどの騒動ご苦労であった」


部屋にはフェイト、そしてオーディンがいた。


しかしレミア隊長の姿はない。


無月たちから見てオーディンの右隣にいるフェイトはいつもよりしょんぼりしている。


どうやら内緒で抜け出した件でこってり絞られたようだ。


「はい。


如月桔梗前総帥補佐殺害及び『オルタナティブ』脱退事件についての報告に参りました。


如月日向前総帥は抹殺。アジトも消滅しました。


そしてこのは前総帥の研究していた人工生命体の一人です」


そう言って無月は奏を先頭に立たせる。


奏のオーディンを見る眼は親の仇を見るような憎しみの眼ではなく、いつもの無感情な眼だった。


「そうか。


ということは前総帥の罪も荷担したことになるな……ならなぜ殺さなかった?」


しかしオーディンの眼も意見も厳しいものだった。


「奏はただ前総帥のために戦っていただけで罪の意識はなかった。


ここで殺すわけにはいきません」


「ならば聞くが無月、


お前は交通事故のように罪の意識無しに起こる死亡は裁くなとでもいうのか?」


「オーディン、待ってください。今の奏は罪無き人を殺すような者ではありません。


『オルタナティブ』のために戦う心得をもっています」


とフェイトが弁護にまわるが


「勝手にこの城を抜け出したたわけがそのような口を聞くでない!!」


その声はアカシャの末裔ではなく一人の子供を叱るような怒声だった。


「はぃ……」


その怒声に少し涙目になりながら細々と答える。


「ん、まぁ死刑は免れるように配慮しておこう。


奏はそれまでお前達と共に生活させる」


とりあえず奏の死刑は免れそうだ。


あとはどんだけ監禁されるかだ。


「長老!!今すぐ報告したいことが!!」


と勢いよく扉を開け放った後そう言ったのは姿の見えなかったレミア。


「申せ」


長老は短く答えるとレミアは長老の傍まで寄り、少し長い間耳元で囁いた。


「むぅ、それは驚きじゃな。それをそのままこやつらに申してくれ」


と言ってオーディンは指さすように無月たちへ視線を送る。


「わかりました。皆様、先ほどの騒動の発端は聞いてますね。


騒動後前総帥の部屋を数人で捜索した所、失跡の理由が判明しました」


「そういや世界を創りかえるとか言ってたな」


無月は小さく独り言のように呟く。


「前総帥はおそらく世界の改変です」


「な!?そんなことができんのか!??」


その言葉に困惑の言葉を放つほど驚いたのはメデスだった。


「はい。改変のため前総帥はアポカリプスを召喚させようとしたのでしょう」


「アポカリプスって?」


祢音が首を傾げて疑問の声を上げる。


「アポカリプスとは今まで幾度も世界を破壊してきた神です。


ノアの方舟の物語、恐竜の絶滅などの形となって今まで伝わってきました。


しかし破壊と創造は表裏一体、


破壊することで新たな1歩を踏み出させ生物を進歩させてきました」


そこまで話すと再びこの部屋に来訪者が現れた。


「ご報告申し上げます!これをご覧になってください」


と言って数枚の書類をレミアに渡すとその中年の男は部屋から出て行った。


しばらくその書類に目を通したレミアは話し出す。


「話は変わりますが報せておく事がもう一つあります。


先ほどの騒動の根源である生物たちですが、


人工生命体の失敗作かと思われます。奥に研究部屋らしきものがあったそうです。


人工生命体の研究が禁止された後も隠れて行っていたのでしょう」


「まさかこんなトコでやってたなんて……」


それを聞いた祢音は低いトーンで呟く。


「それはそれとして話を戻します。


アポカリプスの召喚には各世界の『魔宝まだから』から引き出せる『魔玉まぎょく』を100個


とそれを扱えるほど大きな器をもつ召喚師が必要です。


魔玉は魔力が具現化し、形となった物です」


「各世界?異世界ってことですか?


魔力の塊ならここにいる魔法使いたちで創ればいいのでは?」


とメデスが礼儀正しい言葉遣いで質問をする。


「いえ、単に魔力の塊といっても魔法使いでは創れません。


魔玉を構成している魔力は独特のもので、私たちで生み出すのを試みましたが形にすらできませんでした。


長老様の知識でもわからないのでおそらく不可能でしょう」


「この世界の『魔宝』は全て集め終わりました。数は10個。


1つの世界に必ず10個あるのかどうかはわかりません。


後の任務では異世界へ行ってもらうことになりそうなので心の準備をしておいてください。


そこまで大きな活動をするには前総帥のみの力ではとうてい及ばないでしょう。


他にも同じ目的をもった組織が存在すると考えるのが妥当と思われます。


それを我ら『オルタナティブ』は全力で阻止せねばなりません。


任務の詳細は会議の後、お話しします。では解散してください」


「わかりました」


そして無月たち4人は部屋から出て行った。


「この後どーすんだ?」


部屋を出て最初に口を開いたのはメデス。


そのメデスの呟きに他の3人は足を止め一斉にメデスの顔を見る。


「そうだな……今は午後7時13分。


もう遅いし解散ってことでどうだ?


ちなみに奏は監視されてる身だから祢音と行動を共にしてもらうからな」


「はい」


「オレもついてってやろうか?」


と言って奏を笑顔で見ながら自分を指さすが


「いい」


「……………」


とバッサリ斬られ(断られ)項垂れるメデスだが


「ま、いっか。他の娘さーがそっ」


5秒もせずに立ち直る不屈の精神は見事なものだ。


「じゃ、解散」


その後は個々人で思い思いに過ごす。





このままスルーして次の朝でもいいけどここは無月SIDEで話を進めることにします。




  〜無月SIDE〜


「適当に歩いてみたけどやっぱここに来るのか」


無月は如月日向の私室前にいた。


何人かの研究員が忙しく部屋を行き来している。


どうやらまだ捜索は終わっていないようだ。


部屋の前に突っ立っているとたまに顔見知りの研究員が挨拶を交わしてくる。


無月が上位の階級であるため挨拶もどこかよそよそしい


「今入っても邪魔になるだけだな」


と体を90度回転させると腹の虫が鳴った。


「飯でも食いに行くか」


ローブのポケットに手を突っ込み食堂へと足を進めた。





〜食堂〜


無月が向かった食堂は普段本部で過ごしている人たちで賑わっていた。


来るのが遅かったのか、空席を見つけるのも容易ではない。


「うへ、こんなに多かったっけ?」


普段無月は自宅で過ごすことが多いし、


本部ここに来ても呑気な妹が弁当なんてものを作ってくるため、


食堂で食事を済ますことはそんなに多いわけでもない。


何ヶ月か前なぜ弁当なんて作ってきたのかと聞けば


『あそこの料理私よりおいしくないモン。どうせ食べるならおいしい方がいいでしょ?』


と返されるどころか逆に質問してきた。


まぁ別に不味いわけじゃないから嫌いではないんだろうけど……。


で、不思議と目にとまったのが


「やっほ〜!!」


と所構わず声高らかに手を大きく降る祢音とその隣で黙々と麺類をすすっている奏。


「お前なぁ、こんな場所で大声で叫ぶんじゃねぇよ」


丁度祢音の隣の席が空いたのでとりあえずそこに座る。


「いいじゃん。元々うるさいし」


確かに食堂はそれぞれの雑談が重なり合いうるさい。


「今日は弁当じゃないんだな」


「へぇ〜もしかして私のお弁当が食べたかったぁ?」


祢音は誘うような笑みを浮かべて無月の顔を覗き込む。


「オレの質問に答えろ」


しかしそれを裏切るように無月は少し脅しを含めた視線を送る。


「はいはい。任務の後だったから用意してる暇なかったから持ってないよ。


それにあの後奏ちゃんに本部ここの案内してたの。


で、やっぱ食堂は実際に料理を食べてみるのが一番だと思ってね」


祢音が説明してる間も黙々と麺をすすっている。


「ふ〜ん。結構仲良くなったんだな」


「まぁね。血が繋がってないとはいえ一応姉妹だからね」


「そうかい」


その後そこで夕食を終えた無月は祢音、奏と別れ部屋に戻って寝ることにした。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ