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第16話

「親父…アレも祢音なのか…?」


無月は闇に差し込む光の源であるそれを見て日向に問う。


「ああ。


『人間』『堕天使』ともう一つの人格である『天使』だ」


そして苦しみながらも日向はそう答えた。


「くっ、あなたまで目覚めてしまったのですか」


堕天使は手で顔に影をつくって光を遮りながら言う。


どうやら急な光に目がくらんでいるようだ。おそらく闇の力を持つ堕天使では苦痛だろう。


「大丈夫ですか?」


天使は死の呪いにより苦しんで悶えている日向へ駆け寄った。


闇が消え去ると共に無月への攻撃もやむ。


「あ、ああ…まだ何とか生きている」


日向は確かに『何とか』生きていた。


声も息を止めている状態から絞り出しているようだ。


「ならまだ間に合いますね」


すると天使はどこからは真っ白な銃を取り出すとそれを迷いなく日向に撃ち込んだ。


「なっ」


少し離れた所で見ていた無月が顔を歪める。


「そしてあなたも」


続けて天使は無月にも撃ち込んだ。


「痛みはありません。


この『ミカエル』の銃弾を浴びた者はほぼ全ての病や怪我を完治させます」


すると今にも死にそうな日向がゆっくりと立ち上がった。


今まで青ざめていた顔も生気に満ちている。


そして無月の方はというと今まであった傷がどこにも無くなった。


2人とも天使の言う通り完治したということだ。


「ちっ」


堕天使はようやく眼も慣れ、苦痛も感じなくなってきたのか元に戻っている。


「作戦は既に聞いています。私は彼女の動きを封じます。そのうちにあの魔法を・・・」


「わかった。無月、作戦変更だ。お前は黙って見ていろ。最後に父親らしいことをさせてくれ」


「はあ!?何だよ見てるだけって。それに『あの魔法』って…ぐっ」


無月の言葉を遮るように日向は無月の鳩尾を殴った。


「げほっ…ごほっ…」


本気で殴られたのか無月は咳き込み倒れていく。


「覚悟は決まりましたか?1対3といえど私は負ける気はありませんよ?」


堕天使は爪を鋭く光らせこちらへ突撃してくる。


『封術 光封陣』


「くっ」


すると何かに縛られたように堕天使の動きがピタリと止まる。


「今です!お父様!」


「わかった」


そして動きを止めている堕天使に向けて日向は呪文を唱え始めた。






―我の愛する者を救うため 我が魂を鎖と化し 我の障害を永久に縛れ―






すると日向の躰が光り出したかと思うと金色に光る鎖となり、動きのとれない堕天使の躰を縛った。


「なっ何だよこれ…」


無月は倒れながらもその光景を見ている。


「やめろ!私はまだ…まだ…」


「あなたの心はここで永久に封じられなさい」


「無月、覚えておきなさい!


光の数が増えれば増えるほど、強まれば強まるほど、影は増え、強くなる。


本体が強くなれば私もこの忌々しい鎖から解放される。


その時私は『人間』も『天使』の人格を殺し、自由になる!!」


その言葉を最後に堕天使の祢音は意識を失ったようでがっくりと項垂れ、鎖の光も収まる。


「な、何だよ…意味わかんねぇぞ!!」


無月は膝をつき、地団駄を踏むように地面に手を叩いているが音はしない。


「落ち着いて。今の魔法は自らの命を代償として万物を縛ることのできる魔法です。


殺さず封じたので祢音の怒りの感情はまだ残っています。


一方的ですが、今からあなたを現実世界に帰します。


そこで外の皆さんに説明をよろしくお願いします。では」


そして無月の意識は薄れていった………。



☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ ☆ ★ 



「……ちゃん………兄ちゃ…」


消えそうな意識の中、誰かの声が聞こえる。


「お兄ちゃん!!」


その声を聞き、無月は大きく目を開き飛び起きる。


「祢音!もう大丈夫なのか?」


無月が倒れていた時、祢音は傍で正座をしてずっと呼びかけてくれていたようだ。


上半身を起こしたまま祢音の姿を見るが見たところ別にこれといった異常は見受けられない。


「うん。ゴメンネ、迷惑かけちゃって」


「いや、もういいんだ」


気がつけば祢音の他にメデス、フェイト、奏の姿があった。


みんな(奏を除いて)じっと無月の顔を心配そうに見ていたようだ。


今は気がついたからか、少し表情が柔らかくなっている。


「お前さ、総帥どうしたんだ?」


メデスが辺りを見渡しているが彼の視界に日向の姿が入ることはない。


「それは――」


「それは私から話させてもらいます」


無月は立ち上がって話しかけたが、


話すのが苦痛だろうと推測したのか、フェイトか遮り話し始める。


「日向の使った魔法は『魂の鎖』聞いての通り魂を代償として万物を封じる魔法です。


おそらく日向はそれを使ったと思われます。


しかしそれは当初の予定とは異なるものでした。


初めはあの『堕天使』を殺すことで消滅させる予定でしたが


そうなれば祢音さんから『怒り』の感情が消え去ります。


『喜怒哀楽』の一つに数えられるほど重要な感情です。


『怒り』が失われるということは……」


「つまり如月総帥はそれを避けつつ、『堕天使』を封じるためにああしたと」


メデスはフェイトの話が長くなると予測したのか要約して答えた。


「つまりそうゆう事ですね」


解説を途中で遮られた上、要約までされたのが気にくわなかったのか口を尖らせて言う。


「じゃあお父様は……」


そこまで聞いて膝をついたのは奏。


膝に続いて手を床につき嗚咽を漏らしている。


無感情なヤツだとは思っていたがどうやらそうでもないらしい。


「そう…じゃあ私の中にはお父さんがいるわけだね」


そう言って祢音は自分の胸の中心に手を当てる。


「ああ、そうだな」







「本当にいいのか?」


「はい。妹や弟たちがいなくなるのは悲しいですが、これも仕方のないことでしょう」


5人はアジトの外の樹海の中にいた。


辺りはもう夕暮れ近くなっており、太陽がもうすぐ沈む時間帯だ。


もう使われないようにするため研究所を消滅させることになった。


ちなみに既に日向によってその仕掛けは設置されていた。


おそらくこうなる時のために証拠隠滅を図ったのだろう。


「じゃあいくぞ」


アジトの最奥にあった金庫のような箱に入っていた起動スイッチをメデスが持っている。


そしてそれを押すとアジトは消えたようだった。


震動も音もしなかったが入口が消えたのでちゃんと起動したのだろう。


「奏はこれからどうするんだ?」


無月は奏の方を見るが


「……………」


奏は何も答えずに逆に答えを求めるようにフェイトをじっと見た。


「奏さんはこれから本部に連れて行きます。そこで処置が決まる予定です」


「じゃあ死刑ってのもアリなの!?」


祢音は奏が死ぬかもしれないというのを心配しているようだ。


「ありですが私も殺生が好きなわけではありません。


死刑はできるだけ避けられるようにします」


「「ありがとうございます」」


と祢音と誰かの声が揃う。


「?」


誰かと思えばどうやらあの奏が感謝の言葉を言ったらしい。


人工生命体とはいえ、日向が死んだことを聞いた時も泣いてたから案外普通の人間なのだろう。


そして5人は本部へと帰還した。



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