表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
14/73

第14話

  〜祢音SIDE〜


「いくよっ」


まず祢音が奏に向けて右手をかざす。


『サイクロン・キャノン』


すると祢音の右手から強力な風の弾丸が放たれる。


「無駄…」


しかし、奏が掌を放たれた風の弾丸に向けると見えない壁が現れ、奏を守る。


奏は防御魔法を使ったものの衝撃で2,3歩分後ろへさがる。


「まだまだっ」


『エアスライサー』


祢音が素速く手を横に振ると風は鋭い刃となって奏へ向かう。


「当たらない」


奏はそう言ってひょいと軽くジャンプする。


風の刃は止まることなく進み、容器いれものの一つを斬り裂く。


ガラスが割れ、中から『奏』の何号体かが液体と共に出てくる。



「あーあ、どうしてくれるのよ。私たちの弟や妹になってくれるかもしれなかったのに…。


あなたは私だけでなく他の妹や弟たちを殺す気?」


奏は俯せに倒れ、身動き一切しない躰を見てもったいなさそうに呟く。


「……っ、そんなことどうでもいい!」


祢音は唇を噛み躊躇ったような動作をしたが、それも数秒。


躊躇いを裁ち切った凛々しい顔をし、上に跳ねる。


「これがあなたに見える?」


周りの壁を使い、部屋内を上下左右、縦横無尽に跳ね回る。


風の聖霊を憑依させているためスピードも普通ではなく姿がはっきりと確認できない。


「これならっ!」


『エアスライサー』


部屋の各地から奏に向けて次々と風の刃が襲いかかる。


「痛っ」


不意を突かれたのか、祢音が放った1発目の刃が奏の腕をかすめる。


「まだまだいくよっ」


祢音は動きを止める事なく刃を放ち続ける。


初めの方は奏はどこから来るかわからない刃に苦戦していたようだが、慣れてきたのか、


じわじわとではあるが確実に見切り始めている。


「もうあらかた把握できました。あなたの攻撃はもう当たりません」


奏は宣言通り襲いかかる刃をスケートをしているような滑らかな動きでかわしていく。


「では、次はこちらからいきます」


そう言うと奏はタンッと床を蹴った。


一瞬と思えるような素早さで。


「なっ」


次に奏の姿を捉えたのは奏が壁伝いに跳ぶ祢音の目の前に剣で壁を突き刺している姿だった。


おそらくあと一瞬でも祢音が速かったり、


奏が遅ければ祢音の頭は側面からぶっ刺されただろう。


「惜しい…」


そうは言ったが奏は悔しさを感じさせない無表情なままで祢音の顔を見つめる。


「……………」


祢音はというと無言だったが冷や汗が一筋二筋頬を伝っている。


時が止まっているように十秒ほど2人は動かず喋らずの状態だった。


「「くっ」」


その後2人は一時距離をとり、再び睨み合う。


『鬼火』


奏の周りに5つほどの青い火の玉が浮かび上がる。


それは順々に祢音へと向かう。


祢音はうさぎが跳ねるように跳ね、襲いかかる鬼火を避けながら奏へ向かう。


『邪炎』


奏が剣の切っ先を飛び跳ねる祢音へ向けるとそこから紫の炎が放たれる。


『ウインド・シールド』


超高圧の風が祢音を包む。


そしてそのまま祢音は炎に包まれる。


「無駄…ってことですか」


炎が通過した跡には火傷一つ負っていない祢音の姿があった。


どうやら襲いかかる炎を風圧で吹き飛ばしたようだ。


「なかなかやりますね」


「そりゃあ『お姉様』ですからね」


祢音は舌を出して目一杯皮肉を込めて言った。





  〜無月SIDE〜


「さて、ぐだぐだした話はもう終わりにしようぜ」


無月は刀の切っ先を真っ直ぐ日向へ向ける。


「ああ、そうだな」


そして日向は魔法で刃が朱く染まった大鎌を取り出した。


「『デスサイズ』…死の大鎌は健在って事か」


「総帥になってから命令するばかりでな、祢音の一件以来全く使ってないが…」


そう言いながら日向はくるくると器用に大鎌を振り回す。


「調子は上々って所だな。じゃ、いくぞ」


「おう!」


そして2人は同時に互いへ走り出し刃同士が火花を出して激しくぶつかりあう。


「いい顔になったな」


日向は刃の先に見える無月の顔を見て嬉しそうに言う。


「そうかよ」


「だが、オレほどではないな」


すると日向からの圧力が強まる。


強くなったといってもさすがに身体的な差がある。


「くっ」


無月は一瞬だけ強い圧力をかけ、後ろへ跳ね退がる。


『炎刃』


そして無月の『夢羅雨』に激しい炎が纏われる。


「いくぜっ」


無月は真っ直ぐ日向に向けて走り出す。


「はあぁっ!!」


無月は日向の腹目掛けて突きを放つ。


「はっはっは、そう簡単に当たるものか」


日向はひらりと身を(無月から見て)右に動かして突きをかわした。かに見えた。


「オレが右手しか刀を扱えないとでも思ったか?」


瞬時に無月は刀を左手に持ち替えると空いた右手で日向の衣服を掴み引き寄せると日向の首目掛けて刀を突き出す。


「ちっ」


日向の小さな舌打ちが聞こえたかと思うと無月の視界から日向の姿が消えた。


「何っ」


振り返れば日向は無月の遙か後方にいた。


「危なかったな。オレが聖霊を憑依させてなかったら串刺しになる所だった。


しっかし驚いたなぁ。まさか両利きになってるとは思わなかった」


気づけば日向には膨大な魔力のオーラが漂っている。


「バカなっ、あんな一瞬で聖霊を呼び出して憑依させるなんて…」


「できるから総帥の座にいるんだよ」


「だったらオレもやるまでだ!フェニックス!!」


『憑依』


そして無月もフェニックスを躰に憑依させる。


憑依させた無月の周りに強い熱気が放たれている。


「ほう、それだけでこのオレに追いつけると?」


すると先ほどのように日向の姿が消えた。


「これはチャンスという事にしておこう」


日向は一瞬で無月の背後に回り込んでおり、無月の首筋に大鎌の刃を触れさせている。


無月の首からは血が、頬から冷や汗が一筋流れる。


「バカなんだよ、お前は。忘れたか?オレは『音』の調律者だ。


さらに聖霊を憑依させれば音速で動くことができる。


フェニックスなんぞに捉えられると思ったか?次は『死』だぞ」


そう言って再び無月は姿を消す、いや、音速で動き続けている。


「こんなの…無理だろ」


無月は部屋を素速く見渡しているが日向の姿は残像すら捉えられない。


『どうした?これで終わりか?』


日向は音速で動いてるため、部屋全体から日向の声がする。


『おもしろくないな。これで終わりか』


その声が聞こえた瞬間、腹に激痛が走る。


「ぐあああ!」


気がつけば日向は躊躇いなく自分の息子の腹に刃を突き刺している。


「…がはっ!」


無月が咳をすると空気と共に血が吐き出される。


「なんだ。物足りないな」


日向が無月の体から大鎌の刃を抜き取ると無月は力なく崩れる。


「我が息子ながら情けないな」


日向は倒れて気を失いかけている無月を見下す。


「桔梗の方が骨があったな」


「やっぱり…お前が…」


無月は顔を横に向けたまま横目で日向を見る。


「ああ、知ってただろ?」


「正直言うと…信じたく…なかっ…たよ」


そう言いながら無月の目がゆっくりと閉じていく。


「お兄ちゃん!!」


しかしその叫びで再び無月は目を開く。


「ほう、祢音か…」


そこには奏を戦っていたはずの祢音の姿があった。


祢音の顔は青ざめていて両手がわなわなと震えている。


「祢…お……ん」


「――――――?」


祢音が俯いて何か小さく呟いたような気がするが小さすぎて聞こえない。


「また…私から『繋がり』を奪うの?


せっかく0からできた繋がりなのに……」


祢音からは怒りのオーラが静かに立ちこめてるようだ。


「ん?」


「お母さんとの繋がりを断ち切って…次はお兄ちゃん?」


その怒りのオーラは次第に怒りから憎悪へと変わりまがまがしくなる。


「許さない!!!」


静かにたちこめていた憎悪のオーラが一気に爆発するように高まる。


「ちぃっ!」


オーラは波動となり、2人を吹き飛ばすほどの風圧を生み出す。


その波動は心なしかピリピリとした痛みを感じ、あまりの風圧に目を閉じらざるを得ない。


そして目を開けると祢音の姿は変わり果てていた。


背中には左右1枚ずつ漆黒の翼が生えており、両手には鋭く長い爪が伸びている。


そして何よりも顔が青白く生気を感じさせない上に目は氷のように冷たく祢音の感じが全くしない。


「目覚めたか…『堕天使』が」


今の祢音は日向の憎悪で満ちている。


「いくらお父さんでも殺すよ」


祢音は一瞬のうちに無月の傍に立っている日向の目の前まで移動すると長い爪で引き裂こうとする。


「ちっ」


日向は音速で移動することで祢音の攻撃をかわす。


「『疾い』な」


日向は祢音の背後に回り込むと大鎌の刃を突き立てる。が―



バチチチィィッ



祢音は自分を覆うように球体のバリアを発動させ電気が流れるような音がして日向の攻撃を防ぐ。


『ダークネスボール』


振り返った祢音の右手から膨大な魔力が凝縮されている紫の球体が発生したかと思うと


それを日向の腹目掛けて放とうと構える。


「くっ…。 !?」


日向はかわそうとしたが体が動かない。


よく見れば日向のもつ大鎌の刃を祢音が左手で力強く握っている。


しかし刃物を握っているにも関わらず、左手からは一切血が流れていない。


そして祢音はそのまま紫色の球体を放った。


「ぐおあああああ!!」


もろに攻撃を受けた日向は部屋の端まで吹き飛ばされる。


「ぐあっ」


そのまま部屋の壁に背中を打ち付け声を上げる。


そして壁に打ち付けられ歯を食いしばって痛みを耐えている日向に向けて祢音は羽ばたく。


「死ね…」


そう呟いて祢音は日向の左胸目掛けて鋭い爪を伸ばす。


『結界術 護封壁』


どこからか呪文を唱える声が聞こえ、祢音と日向の間に光の壁が発生した。


祢音の爪はその壁を貫くことはなかった。


「間一髪ですね」


「ふう危なかった」


「お父様!!」


祢音が声のした方向を見る。


そこにはメデスと奏………そしてフェイトがいた。


何故か奏からは敵意を感じられず、戦う気はないようだ。


「お父様!」


奏は焦ったように日向の傍まで寄り、壁から引き出し、床に寝かせる。


「お姉様…?」


奏は怒りの目を祢音へ向けたが祢音の変わり果てた姿を見て不思議そうに呟く。


「どうやら遅かったようですね」


「あれが祢音ちゃんだってのか?」


フェイトは知っていたのか冷静で、逆にメデスは宇宙人でも見ているような目をしている。


「早く祢音ちゃんを元に戻さないと!」


「それよりも無月さんの治療が先です。


メデス、その間奏さんと協力して祢音さんの相手をしていてください」


そう言うとフェイトは無月の元へ駆けていった。


「そうゆうこった。いいか?奏」


それを聞いたメデスは日向を抱えている奏に呼びかける。


「仕方ありません。お父様にこれ以上負担をかけるわけにはいきませんから」


「じゃあ共同戦線といきますか」


メデスは『ゲイボルグ』を取り出し、呪文を唱え始める。






―氷の結晶より美しく華麗な女神よ 謳え 海より深く透き通った声で


                    水の調律者の名の下に告ぐ 我の前に姿を現せ―






「いでよ!『ウンディーネ』!!」


そしてメデスの背後に『ウンディーネ』が現れる。


肌は水色で容姿に大人の美しさを備え水のように青く透き通った羽衣を纏っている。


『憑依』


ウンディーネは青い光玉となりメデスの躰に入った。


「まさか祢音ちゃん相手に聖霊を使うとはな」


「使わなければ死にますよ」


メデスの呟きに既に『妖狐』を憑依させていた奏は無感情に言い放つ。


「わかってるよ」


「邪魔をするならあなたたちも殺します」


相手がメデスと奏であるにも関わらず祢音は冷たく言い放った。

皆々様〜あけましておめでと〜ございや〜す♪

毎年思うんですが何で干支にねこがないのかと思うんですよねww

まぁ今年もよろしくお願いしますね〜(色々とw)


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ