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第13話

〜無月・祢音SIDE〜


「ここは……何だ?」


メデスが赤髪の男の相手をしている間にドンドンとほぼノンストップで先へ進んでいった


無月と祢音だったが、ある部屋で立ち止まった。


その部屋は厳重なセキュリティと兵たちの先にあり、中はかなり広かった。


「あれって…!!?」


すると祢音の顔が今まで見たことがないくらい驚きと恐怖に満ちており言葉すらでないようだった。


「いやああああああああああああ!!!!」


祢音がようやく出したのは空気が震えるほど悲痛な叫びだった。


祢音は頭を抱え腰が抜けた時のように崩れたその体は震えていた。


「どうした!?……まさかこの部屋は…」


この部屋には柱のように長く太い容器いれものがあり、ガラス張になってる所からは


十代前半の若い男女の肉体が裸のままで液体と共に入っているのがわかる。


『ようやく来たわね』


その声と共に『あの少女』が2人の目の前に現れた。


「気づいた?ここはあなたが創られた場所よ、『かなで 001号』」


「お前は!」


そう、先日圧倒的な強さで2人を限界まで追い詰め、『病院送り』にした少女が。


「ここはあなたたちの本拠地にある封鎖されていたはずの部屋をそのまま持ち込んだ部屋」


「『封鎖されていたはずの部屋』だと?どういう事だ!それに『奏 001号』って」


無月は未だにしゃがんだまま震えている祢音の肩を抱えながら問う。


「それはお父様がよく知っていらっしゃる事ですからお父様に聞けばいいでしょ?」


すると少女は少し不機嫌な表情になり、口調もぶっきらぼうになる。


「女に手を出すのは良い気しねぇんだがここはやるしかないようだな」


無月は立ち上がり刀の切っ先を真っ直ぐ少女へと向ける。


「『油断大敵』って言葉、知ってますか?」


するとそれに応じるかのように少女も研ぎ澄まされた輝く剣を取り出し、真っ直ぐ無月に向ける。


「祢音、お前はちょっと下がって待ってろ」


「……うん」


結構落ち着いてきたのか、祢音はゆっくりでありながらも立ち上がり部屋の隅に移動しヘタヘタと座り込む。


「じゃあ…いくぜっ!」


先に動いたのは無月。


無月は向けられている剣をかいくぐり、少女の腹目掛けて突きを放つ。


「当たらない」


少女は左肩を退いて突きを避けると向かってきた無月の体を目掛けて剣を横に振り抜く。


「甘いな」


無月は体勢を低くして剣をかわすと伸ばしていた腕を左に振り少女の胴体を切り裂こうとする。


しかし少女は剣を床に突き刺しそれを支えとして宙に舞い、無月の背後に立つ。。


「甘いのはあなた」


背後をとられ、完全に隙だらけとなった無月の背中目掛け剣を振りかぶる。



ダァァン



部屋に銃声が反響されて響き渡る。


「!?」


しかし剣はそのまま振り下ろされることはなく、無月に背中を見せていた。


「祢音!」


少女が振りかぶった瞬間、祢音は少女の足へ銃を放ち、銃弾は見事に少女の足を捉えていた。


「くっ…」


少女はしゃがんで足を押さえている。


「お兄ちゃん、先に行って!」


「お前は?」


「もう大丈夫だから!ここは私が何とかするよ!」


祢音は精一杯叫ぶ。


その叫びは部屋全体に響き渡る。


「…わかった」


無月は奥にある扉へ走り始めた。


「逃がさない」


どうやら足を押さえていたのは治療していたからのようで傷は既に塞がっていた。


少女は走る無月を追いかけようと立ち上がるが



ダァァン



「……………」


少女の左頬に一筋に切傷ができる。


「そっから先は通行禁止だよ。あなたには聞きたい事もあるし」


「いいでしょう。相手になります」





〜祢音SIDE〜


「いきます」


今度は少女が先に動く。


素直に一直線、真っ直ぐ祢音へ向かう。


「くっ」


祢音は少女へ1発、床へ1発の計2発銃弾を放つ。


「………」


少女は無言で正面から来た銃弾を斬る。


(もう1発ので足が止まるはず)


しかし、少女の行動は祢音の予想を外れ、一瞬でかなりスピードを上げる。


銃弾が追いつけないほど疾く。


「なっ……!?」


一瞬で祢音の目の前まで移動した少女は祢音へ斜めに斬りかかる。


(避け――)


バックステップで少女の攻撃を避けようとしたが反応が遅れ重傷は免れたものの傷を負う。


「痛っ…」


組織の上部の者が着用できるコートは普通のコートより幾分か丈夫なのだが、


それも感じさせないほどあっさり着られ祢音の肌にも傷をつける。


「あ〜あ〜女の子の肌に傷をつけるってどうよ?まぁ私も同じことしようとしたんだけど」


祢音は自分の傷を指でなぞり、付着した血を訝しげに見つめる。


「随分と変わられたものですね『お姉様』」


「え??」





〜無月SIDE〜


「祢音…大丈夫だよな」


無月は謎の部屋に祢音を残し、廊下を駆けている。


「見つけたぞ!撃てぇ!」



ダダダダダダッ



「ちっ、邪魔だっ!」


無月は銃弾を斬りながら兵の目の前まで前進し、兵を全て斬り殺す。


「ぐあああああ!」


兵の悲鳴が後ろで聞きながら無月は走り続けている。


すると突然無月は1級王宮の王室ほど広い部屋に移動した。


「どこだ??」


周りを見渡せば無駄なモノは一切なくどこかで見たことのある部屋だった。


「ここは……『総帥の間』か?」


「そう、ここは本部の総帥の間をコピーしたもの」


「親父か…」


突然無月の背後から聞き慣れた声がし、無月はゆっくりと振り返る。


「久しぶりだな、我が息子よ」


「ああ、そうだな。親父…いや、如月日向ぁ!!!」


憎くて憎くて、殺したくて殺したくて、そして悲しく、悔しかったその感情の元凶がそこにいた。


「よくここまで辿り着いたものだ」


日向の姿は最後に本部の総帥の間で見た時そのままだった。


「多くの犠牲と時間のおかげだ」


「そういえばそんなヤツらが来てたな。役に立ったぞ」


「そうかよ。そんなことはどうでもいい。今すぐお前を殺してやりたい所だが


そうすれば不明のままになる謎が多すぎる、種明かしといこうか」


「いいだろう。『冥土の土産』…というやつにしてやろう」


「まず1つ目、あの少女は何者だ?」


「彼女は『奏プロジェクト』の集大成、『奏 841号』だ」


「『奏プロジェクト』だと?」


「そう、無月も知っているだろう?祢音が創られた存在だということを。


あれは本来『奏プロジェクト』の1号体として創られた存在だ。


まぁ家族として迎えるために名を『祢音』と名付けた。


『祢音』は少し特殊でな、DNAは少しばかりお前から受け取ったモノだし何より特殊なのは


彼女は『天使』と『堕天使』、2つ…いや普段と合わせれば3つの顔をもつ少女だ」


「天使と堕天使だと?」


「その様子では何も知らないのだろうな。


どうしてもう2つの顔をもつ事になったかというとそこは最重要機密なのでな土産所ではなくなる。


そのおかげで1号体目にして成功になった。しかしそれは『無月のDNA』、『天使』と『堕天使』の力によるもので、


一から創ったものではない。このプロジェクトは一から創らなければならない。


研究を続けてきたがある日強烈な批判を受けてな、中止せざるを得なくなった。


だがな、その研究は途中でやめるには惜しすぎる。そこでオレは水面下で研究を続けてきた。


長年の研究と人体実験の積み重ねの上に彼女がいるわけだ。演奏者も役に立つもんだな」


「行方不明となった演奏者は人体実験に使われ、あのわけのわかんねぇ化物たちは『奏』の失敗作という事だな」


「そういうことだな。途中研究室も通っただろ。そしていつしか彼女はオレの事を『お父様』と呼び、


祢音の事はたまに『お姉様』と呼ぶ時もあったな。


まぁ彼女は祢音の後に創られた者だからな、そういうことになるんだろ。少し嬉しいぞ」


と言うと日向ははっはっはと豪快に笑う。


「変態かお前は」


「お、お前は何とも呼ばれないから寂しいのか?なんなら『お兄様』とでも呼ばせ―――」


「うるせぇ!!オレにそんな趣味はねぇよ」


「そうかそうか。で2つ目は?」


組織を抜けても根本的な部分は変わってないようだ。


「2つ目、何故母さんを殺してまで『オルタナティブ』を抜けた?その理由だ」


「汚れのない綺麗な世界にするためだ。それは『オルタナティブ』にいては叶わない」


「バカか?綺麗な世界にするための『オルタナティブ』だろが」


「バカなのはお前だな。では聞くぞ?世界は汚いと思わないか?


小さないじめから大きな戦争まで。その中間には税金を食い潰す政治家の強欲さだってそうだろ?


しかも上の者が下の者に不利な事ばっかり決めおって………愚痴っぽいな。


まぁ私に欲がわずかでもある限り綺麗などありえない。


つまりだ。いじめが『オルタナティブ』の活動でなくなると思うか?無理だな」


「だったらお前には世界からいじめをなくす方法を知っているのか?」


無月はあるわけがないと決めつけているようで勝ち誇ったような顔をして言う。


「ああ、『世界を創り替える』」


そして日向はとんでもない事を言った。


「はぁ?んなことできるわけねぇだろ」


無月は信じられないと代弁している顔をしている。


「できる!!その方法を私は知っている!」


しかし、当の日向は自信満々だ。その表情や動作を見れば信じてきそうだから不思議だ。


「そうかい。もういいや。話してるのがメンドくせぇ」


「そうか。なら始めるとするか」


「ああ、奏でてやるよお前を冥界へ送る『鎮魂歌』を!!」





〜祢音SIDE〜


「な〜るほど、そーゆーことか。で、私が姉さんだと」


「そうです。そこまで弱いお姉様なんて認めたくありませんが」


「だったら、認めてもらえるよう本気でいくね」


そう言って祢音は再び銃を構えなおす。


「そうしてください。私も真の力で応じましょう」


すると少女『奏』は首に掛けていたペンダントを外すと床に落としそれを踏み壊した。


そして奏も剣を構え向かい合う。


「え?」


「お気づきでしょうが前回の戦いでは私はこれによって膨大な魔力の供給を受けていました。


しかし、今はそのような手助けは無用、真の力で応じようというのです」


「そう、そりゃ嬉しいね」


そして祢音をペンダントを手に取り、呪文を唱える。






―風にのって舞う美しき獣よ 風と共に謳う艶やかな獣よ


                風の調律者の名の下に告ぐ 我の前に姿を現せ―






「いでよ!風の聖霊『ハーピィ』!!」


そして祢音の背後にハーピィが現れる。






―まどろむ月夜に舞え 9つの力を持つ幻獣よ 


             奏の名の下に告ぐ 我の前に姿を現せ―






「来なさい『妖狐』」


そして奏も妖狐を呼び出した。


―え?あの娘じゃない。勝てるの?―


前回敗れた事を思い出しているのかハーピィの顔は不安で曇っている。


「大丈夫大丈夫。何とかなるよ。主を信じなさいって」


―そういうならいいけどさ―


「妖狐、またあなたの力を借りますね」


―どうぞ、心おきなく―


妖狐の声は静かでどこかに清らかさを感じる。


「「憑依!」」


2人の聖霊はそれぞれ黄緑、白の光玉となってそれぞれの主の体に宿る。


「本気でいくよ!」


「いきます」



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