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ダンジョンを出禁にされたJK二人組は、母校の旧校舎型ダンジョンを守護するバイトを始めました。  作者: 椎名 富比路
第六章 激突、鬼怨組との決闘!

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第60話 モモのアイデンティティ

 野呂(のろ) アスカの炎の剣を、晴子(はるこ)は氷の剣で受け止めた。


 彼の放つ【炎の剣】は、火柱がまっすぐである。ムダな出力が、まったくない。マジメに修行をして、マジメに攻略を続けていた証だ。


 対して、自分が出している【氷の剣】は、表面の構造が雑である。どんな局面にも対応できるように、太さを自在に変えているのもあった。しかし、本質は性格的な問題だろう。


 晴子は、野呂先輩のような「本当に強い相手」と戦ったことがなかった。

 いつの間にか、舐めプが板についている。あまりよい状況ではない。


「モモの父親は、勇者連合に所属していた」

 


 しかし、問題児だった不良冒険者が、未踏破ダンジョン探索中に先走ってしまう。

 ダンジョンボスに殺されそうになった彼を、モモの父親が救った。そのせいで、冒険者に復帰できないほどのケガを負うことに。


「その不良冒険者こそ、今の勇者連合の校長よ」

 

 不良冒険者は、自身を反省する。誰にも迷惑をかけないように努力した結果、成長して勇者と認められた。今は若くして、勇者を育てる学校の校長にまで上り詰めている。

  

「だけど、幼少期のモモは怒ったわ。彼女は大衆の眼の前で、その人の腕を折った」


 勇者連合の校長が、ボランティアで各地を回っていたときだった。


「では、あなたたちがダンジョンを出禁になっているのは……」


「違う。校長のせいじゃないわ。別に校長は、モモを恨んでないの。ウチの祖母が確認しているわ」


 ああいう目に遭わされるのは、仕方ないと。


「でも、彼の家族や取り巻きは、モモを許していなかった」

 

 色々と難癖をつけられて、勇者連合の息がかかったダンジョンには入れない。


「とはいえ、今は単純に、勇者連合はモモを恐れているだけみたい」


「たしかに。彼女は強すぎる」


 モモだって、本気で勇者連合校長を潰すつもりじゃなかっただろう。どうしていいかわからない複雑な感情が、彼女を動かしたのだ。

 

 モモの強さは、とにかく社会の理不尽をぶっ潰すところにある。やり場のない怒りが、彼女をここまで強くしたのだ。


「モモだって、今でも校長を憎んでいるわけじゃない。『不良の更生だけを美談として語り継いで、被害者がいたことをないがしろにする』世間が、許せないのよ」


「……そうか。つまり七星(ななほし)さんが襲撃前に話した、『イバラをモブとして処理したい』っていう提案も」


「彼女の怒りからよ。合宿二日目のボヤ。あのとき燃やされたのって、なんだった?」


麝香(じゃこう)学園の生徒会副会長が着るはずだった、ウェディングドレス……」


 会長の嵐山(あらしやま)と、副会長の玉蘭(ぎょくらん)は、合宿最終日に結婚式を上げる予定だった。


 イバラは、それをブチ壊したのである。


 今でもショックで、麝香学園の面々はこちらに顔を出していない。

 

「あの子は、イバラを『荒らしの中の英雄』にしたくなかったの」

 

「よく見ていますね。七星さんが、あなたを慕うわけだ」

 

「褒められたって、手加減はしないわよ!」


 晴子は氷の剣を、二刀流に変えた。片方は物理的な攻撃手段、片方は杖にして、魔法を撃つ。


「同じ氷魔法で、まったく違う攻撃手段を同時に行う。これが魔王!」


 驚いてはいるが、野呂先輩はこちらのトリッキーな攻撃を、初見で対処した。炎の剣一本だけで。


 これが、勇者か。まがい物ではない。幾多のダンジョンを攻略してきた、本物の勇者だ。


 とはいえ、こちらだって毎日、洲桃(バケモノ)と戦闘を繰り返してきた。どんなにしんどくても忙しくても、最低一時間はケンカする。ケンカの質と数なら、歴戦の勇者にだって負けない。

 

 氷魔法の出力を抑えつつ、ピンポイントの障壁を作り、防御を続けた。


 こんな相手に常時全力ブッパしていては、すぐガス欠になる。


 だが野呂先輩は、こちらのガードするポイントをずらして、こちらに攻撃を当ててきた。勘がいい。


 炎の剣が、わずかに晴子の肌を焼く。


 だが、晴子だって無策ではない。


 身体に薄い氷の膜を、あらかじめ張っていた。


 炎と干渉したことにより、水蒸気が発生した。


 高温の湯気で、野呂先輩の視界を奪う。

 

「【ウインド・カッター】!」


 洲桃のお株を奪う、風属性魔法を乗せた回し蹴りを、野呂先輩のアゴに命中させた。


 脳を揺らし、野呂先輩が昏倒する。


[野呂 アスカダウン。これにより、残りは三人となりました]


 まだ、終わらない。


 個人戦は、最後の一人になるまで続く。

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