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ダンジョンを出禁にされたJK二人組は、母校の旧校舎型ダンジョンを守護するバイトを始めました。  作者: 椎名 富比路
第六章 激突、鬼怨組との決闘!

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第58話 個人戦

~~ 突入 一時間前 ~~ 



「まった!」


 鬼ヶ島へ出発する前に、あたしはみんなを呼び止めた。

 

「待てってなんだよ、七星(ななほし)? お前のことだ。怖気づいたとかじゃねえのは確かだが?」


 ドワ女のトロちゃんが、振り返る。

 

「あのさー。この際だけどさ。鬼怨(おにおん)組なんて無視して、あたしらで暴れない?」

 

 あたしの提案に、みんなが首をかしげた。


「どういうこと、モモ?」


「つまりさ、鬼怨組にはフィールドだけ貸してもらうんよ。ルールは【殲滅】ルールそのままでいいからさ、敵味方関係なくぶっ潰し合うの。あいつらとの決闘じゃなくて、あたしらが勝手に暴れまわるの」


 あまりに突拍子もない内容だったからか、全員が口を空けて唖然となっている。


「それは、【個人戦】ってこと?」

 

「いうたらー、そうかなーっ?」


 はるたんからの問いに、あたしはうなずいた。

 

 ダンジョン部は普通、団体で行動するものだ。


 しかし今回は、個人戦を繰り広げる。


 鬼ヶ島は、あくまでもフィールド。単なる舞台としてしか考えない。

 またそこに巣食う鬼共も、敵としてではなくて、ただのモブとして処理していく。


「えらい大胆な考えだね。共倒れになったら、相手の思うつぼでは?」


 愚地(おろち)三姉妹の三女、青葉(あおば)が難色を示す。


「でも、面白いっす。そういうギリギリの戦い、最高っす」


 対照的に、ドワ女の二年、パニさんは肯定的だ。


「だってさ! このままじゃ、荒らしがずっと目立つことになっちゃうじゃん! ムカつかん?」


 このまま戦えば、イバラのヤツらは英雄となってしまう。

 勝てば行為を正当化され、もてはやさる。

 負けたとしても、「時代を動かしたカリスマ」という扱いを受けるかもしれない。


「荒らしたもん勝ち」のような空気が、各地の掲示板でも漂っている。


 それが、あたしにはガマンならなかった。


「たしかに鬼怨組のやり方は、プロレスの盛り上げ方なのだ」


 デリオン姫が、意見する。


「いわゆる『煽り用VTR』みたいなのだ。とにかくビッグマウスで因縁をぶつけて、対立を煽って、場を盛り立てるのだ」


「うん。あたしの、下のねーちゃんが格闘家だから、わかる」


 そう考えて、あたしは怒りを覚えた。

 ああいうのは下の姉のように、ちゃんとプロレスができる関係性だからこそ成立する。


 まったく打ち合わせのない同士がやっても、怨恨が膨らむだけだ。


 得をするのは、ケンカを売ったほう。それはまさしく、犯罪者の理屈ではないか。


 冗談じゃねえ。あいつら、絶対に許さん。


 だからあたしは、鬼怨組を目立たせない。

 アイツラはフィールドをうろついているモブとして、処理させていただく。

 

「このままイバラと戦ったらさ、『相手を煽ったら、こんな盛り上がる試合になるのか』っつって、便乗犯がわんさか現れるかもしれんのよ。あいつら、ただの荒らしなのによぉ」


 なんだかんだいって、炎上はマネをされる。


 そうなればダンジョン活動なんて、たちまち無法地帯と化す。

 

 実に面白くない時代が、始まってしまう。


「たしかにそうね。あんな奴らは、普通はスルーが安定だし」


「だろ? 相手するのも、アホくさいんよ」

 

「僕は、七星さんのいうとおりだと思う。たしかに、鬼と勇者の因縁は深い。それこそ、桃太郎の時代から続いている。それでも、もう昔の話だ。今でも引きずってどうなんだ、と思う。みんなはどうだろう?」


 野呂先輩が、勇者連合高校から意見を募る。


「オレは賛成だな。ていうか、ほんとに戦いたい相手は、洲桃(すもも)なんだよね」


 ピオニが、あたしを指さしてきた。


 それだけで、あたしはビリビリと身体がしびれてくるのを感じる。


「そうだろ、ピオニ? ダンジョン部で合宿なんだから、最後くらい派手に暴れたいじゃん。敵味方関係なくてよお!」


「それがやりたくて、来てっから」


「わかる。ピオニ。ホンマお前とは、生き別れの姉妹じゃないのかって思う時がある」


 あたしは、ピオニと握手を交わした。


 これなんだよ、あたしが求めていたのは。


 たしかに「絶対に倒さなきゃいけない、因縁の相手」がいれば、ドラマは盛り上がるだろう。

 だが、「勝てるかどうかわからない、強敵」とやり合うほうが、面白い。

 緊張感が、まるで違う。


 それを邪魔してきたから、あたしは鬼怨組には嫌悪しか感じない。


「モモ、どうして急に、あんな提案を思いついたの?」


「配信で、デリオン姫が言ってた言葉から」


『荒らしに反応するのも、荒らし』というセリフが、あたしの中でどうもひっかかっていたのだ。



「あたしの【ドラゴンキラー】だってさ、アンチな鬼をぶった斬るためにあるわけじゃないし」


 そもそも、ドラゴンキラーを買った目的は。



 ~~~ ***  ~~~



「ピオニィ!」


「洲桃ぉ!」


 ピオニの銃撃を、あたしは剣で撃ち落とす。


 もう、イバラなんて視界にすら入っていない。


 これなんだよ、あたしが求めていたのは。


 たしかに「絶対に倒さなきゃいけない、因縁の相手」がいれば、ドラマは盛り上がるだろう。

 だが、「勝てるかどうかわからない、強敵」とやり合うほうが、面白い。

 緊張感が、まるで違う。


 それを邪魔してきたから、あたしは鬼怨組には嫌悪しか感じない。


[フロアボス【イバラ】を討伐しました。ダンジョン【鬼ヶ島】は制圧されました]


「知ったこっちゃないわよ」


 はるたんが、ピオニの召喚獣から降りた。イバラが落としたダンジョンコアを、拾う。


[【金盞花(きんせんか) 晴子(はるこ)】が、【鬼ヶ島】のダンジョンコアを手に入れました。これにより、ダンジョンの支配者は、金盞花 晴子となりました]


「これで、もうちょっとだけここで遊べるわね」


 このルールが、個人戦の怖いところだ。


 個人戦は……最後の一人になるまで終わらない!

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