第51話 パニさんとの再戦!
パニさんが手にしているのは、【うつぶし色の心臓】というらしい。
うつぶしとは、アブラムシに寄生されたウルシ科の木にできるコブのことだ。喪服用の染料に使われるという。
あれが、心臓?
「サザエじゃん」
「見た目はそうっすが、れっきとした心臓の化石なんすよ、これ」
心臓には、銀製のチェーンが通されている。
「コイツを首にかけると、無敵のパワーを手に入れることができるそうなんすよ」
「それをつけて、戦うってか?」
「いやいや、洲桃さん。オイラがそんなインチキ、するわけないっすよ。こうやるんす」
パニさんは心臓を、後ろにいたトロちゃんに投げ渡す。
トロちゃんは、【ジャケット・ギア】に乗って逃走した。
「追って、はるたん!」
「そっちは任せたわ!」
はるたんが、ピオニとともにトロちゃんを追跡する。
「あんたの相手はこっちっすよ。洲桃さん!」
この人とは一度、サシでやりたかった。
とはいえ、今はそれどころじゃない。
「遠慮しなくてもいいっすよ。どのみち、通さないっす。バチバチでやすっすよ」
「相手にとって、不足はねえ!」
あたしは、パニさんと真っ向勝負する。
「ウゥインドゥ・カァタ!」
風属性を込めたあたしのキックを、パニさんが平然と抱え込んだ。自分がダメージを受ける覚悟で、ドラゴンスクリューをかましてくる。
「おお!」
地面に倒される寸前で、あたしは両手を甲板についた。
ドラゴンスクリューが得意って聞いていたが、ここまで精密だとは。
「だったらっ! トルネード・キック!」
足を掴まれたまま、あたしは腰を回転させた。風属性の【トルネード】を足全体に乗せて、連続キックを浴びせる。
「ブレイクダンスも、できるんすね!」
さすがのパニさんも、手を放す。
相手はグラップル、こっちはスタンディング。戦闘方法は、正反対だ。
「あんた、格闘家に転向したら?」
「それは、こっちのセリフっすよ。ああ、強い。一学年下とは思えないっす」
「姉が格闘家なんで」
「あーっ。わかるっすね。そういう動きっすね。オイラの家も、似たようなもんっす。あんたほど動ける女子は、ドワ女にもいないっすねー。けど!」
低空タックルで、パニさんが飛んでくる。
「これはどうっすか!」
「どんだけ低いんだよ!」
地面スレスレで、飛び込んできたぞ。
踏み潰そうにも、早すぎてこちらの勢いを殺されてしまうだろう。
こちらも、飛んで避けるか? いや、相手も対空手段があるはずだ。
「トルネードキック!」
再度ブレイクダンスで、パニさんの横っ面に回し蹴りを食らわせた。
「首を打ち抜けない!」
勢いをあっさり、殺されてしまうとは。
並の冒険者なら、昏倒するはずなのに。
やっぱり、パニさんとのバトルは面白い!
「だが、終わらせる! 【ヒート・スマッシュ】!」
火炎属性を乗せた連続蹴りで、パニさんを宙へ浮かせる。
攻撃を受けてもなお、パニさんはあたしの足を取ろうとした。
「そうはいくか!」
さらに、蹴りの速度を上げる。
火炎属性魔法による爆発も組み合わせて、キックは更に加速した。
パニさんも、ガードせざるをえない。しかし、反撃をあきらめたわけではなかった。わずかなスキを狙って、あたしに腕を伸ばしてくる。足がダメなら、手か首を取ろうとしているらしい。
振りな状況でもひるまないパニさんの姿勢に、あたしは敬意を表する。
そんなパニさんには、プロレス技でトドメを刺さねば。
あたしは逆に、パニさんの股の間に頭を入れた。手を伸ばし、相手の後頭部を掴む。
「これは、【片翼の天使】!」
「うりゃあああ!」
相手を肩車して、後頭部を引っ張って背中から落とす。
この技を、【片翼の天使】という。
プロレスなら、これでスリーカウントを入れるところだ。
しかし、パニさんは動かない。
「はあ。はあ。どうにか、勝ったか……」
フラフラになりながら、あたしは立ち上がる。
「ああっ?」
突然、スマホが鳴り出す。
『すぐ来て、モモ! ドロボー側が勝ちそう!』
マジかよ!?
「なにがあった?」
『ティナが、ウチらを裏切った! 蓮川先輩をさらって、野呂先輩だけで、ドロボー側と戦えとか言ってる』
ちょっと待ってよぉ。




