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ARES ― 無名戦士になれなかった英雄達 ―  作者:


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第二小隊

今日は投稿時間ちょっと早めです。


霧島が小隊隊舎の扉を開けようとすると、ヴァルター二曹が制止した。


「私が小隊員を集めてまいります。小隊長は少々お待ちください。」


そう言ってヴァルター二曹は隊舎の中に入っていった。

十分後、ヴァルター二曹は隊舎の中から一人の下士官とともに戻ってきた。


「霧島少尉。こちらは第二小隊付兵曹長、梁志豪(リャン・ジーハオ)兵曹長です。」


「梁志豪兵曹長です。霧島少尉、短い間でしょうがよろしくお願いします。」


「梁兵曹長、こちらこそよろしく頼む。しかし、短い間とはどういうことだ。」


「いえ、こちらの事情です。小隊長は気にしないでください。それよりも、広場でうちの小隊員が待っています。行きましょう」


言い終えると、梁兵曹長は迷いなく歩き始めた。しかし、霧島はさっきの短い間という言葉がどうしても引っかかっていた。


広場には霧島の部下であり、命を預かる第二小隊員、七四名が整列していた。


霧島は梁兵曹長とともに列の一番前に設置されてある台に上った。視線の端でヴァルター二曹が列に戻り、自身の位置に戻るのが見える。どうやら彼も第二小隊所属だったようだ。


「総員、傾注。小隊長より着任挨拶。」


梁兵曹長の鋭い掛け声で第二小隊全員が姿勢を正し、霧島に視線を向けた。その視線は歓迎というより、むしろ価値を計られているような冷ややかで無表情な目だった。


「本日より諸官ら第二小隊の指揮を執る宇宙軍少尉霧島透だ。諸官らは長年フェアリー王国との最前線で戦っている精鋭部隊だと聞いている。そんな諸官らとともに戦えることをうれしく思う。若輩者で頼りなく感じると思うがよろしく頼む。」


「敬礼」


梁兵曹長の掛け声とともに、隊員たちの右腕が一斉に上がる。


だがその所作は、霧島に向けられた敬意というより、規則を守っているだけの無機質さがあった。


「これで霧島小隊長の着任行事は終了とする。総員持ち場に戻れ。」


梁兵曹長の指示で小隊員が各自の持ち場に戻っていく。


霧島が以前の部隊であったような小隊員たちの軽口もない。それは霧島という新任の小隊長の前だからなのか、それとも別の何かか、この時の霧島に知る由はなかった。


あたりには乾いた軍靴の音だけが響いていた。


霧島は梁兵曹長の案内で広場から小隊隊舎内の小隊長室に移動していた。


「梁兵曹長、分隊長たちに会うことはできるか。」


「可能です。小隊長室にお呼びいたします。」


「いやいい、私から出向くことにする。分隊長たちの居場所はわかるか。」


「あまりお勧めしません。」


「なぜか。分隊長たちはこれから生き死にを共にする仲間だ。いや、分隊長だけではない小隊全員がそうだ。そんな彼らを私が会いたいというだけで上から目線に呼びつけることは道理がとうらん。」


梁兵曹長は霧島の返答を聞いて一瞬顔を曇らせたが、すぐに無表情に戻った。


「いえ、そこまでお考えならもうお止めしません。しかし、年長者として一つ忠告しておきましょう。この世には道理ではどうにもならんこともあるのです。そのことを肝に銘じておいてください。」


「忠告感謝する。覚えておこう。」


梁兵曹長がそのように忠告した心理は霧島には掴めなかったが、その言葉には妙な重さがあった。一瞬の沈黙の後、梁兵曹長が再び口を開いた。


「小隊長、一つお聞きしてもよろしいでしょうか。」


「構わん、なんだ。」


「小隊長は、臣民出身ですか。」


その言葉はさっきまでの淡々とした言葉とは違い、とても冷たい声だった。


「……いや、市民出身だ。」


霧島は答えながら、梁兵曹長の声の変化にわずかな警戒心を抱いた。


そしてその警戒心の奥に、説明のつかない恐怖がかすかに芽生えるのを感じる。


「そうですか、ではご両親の教育が良かったのでしょうね。突然変な事を聞いて申し訳ありません。気分を害したなら謝罪します。」


返答した梁兵曹長の声色は淡々とした響きに戻っていた。


「いや、構わん。いつか言わなければならないことだ。それよりも分隊長の居場所はわかるか。」


霧島恐怖を精一杯押し込め、会話の話題を強引に変えた。梁兵曹長は時計に視線を落とし、淡々と返答する。


「小隊長、もうすぐ課業終了時刻です。分隊長へのあいさつは明日行うのが良いと思います。」


「もうそんな時間なのか。わかった、分隊長たちへは明日にすることにする。」


「わかりました。分隊長たちにもそのように伝達しておきます。」


「ありがとう梁兵曹長。」


その会話を最後に、梁兵曹長は小隊長室を後にした。


霧島も椅子から立ち上がり、自身に割り当てられた居室へ向かった。


通路はすでに人の気配が薄く、機械音だけが規則的に響いている。

部屋に入り、荷物を下ろす。


軍服を無造作に脱ぎ捨て、ベッドに横になり今日の出来事を思い返す。


ヴァルター二曹の胸の略綬の少なさ。

小隊員たちの無感情

そして、梁兵曹長が一瞬だけ見せた、あの冷えた声音。


霧島は服の襟元を少し緩め、静かに息を吐いた。


「俺は、この部隊でやっていけるのだろうか.....」


そう思わずにはいられなかった。


1日は投稿お休みします。

それでは皆様よいお年を。

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