作戦開始
ドン、という鈍く重い音と衝撃と共に、揚陸艇は地表へと叩きつけられた。
内部に吊られた装備が一斉に揺れ、金属が擦れる音が艦内に響く。
ハッチが開き、数名の斥候が迷いなく先行して揚陸艇から飛び出した。
『31、こちら01。状況送れ』
霧島は即座に無線で斥候に出た小隊員と連絡を取る。
『01、こちら31。周囲に脅威なし。送れ』
周囲の安全を確認した霧島は第二小隊に出撃を命じた。
「第二小隊、出るぞ」
霧島の命令を受け第二小隊が揚陸艇から展開し、各員が事前に割り振られた配置へと散開していく。
展開を確認した霧島は無線を小隊回線から司令部回線に切り替え報告を行う。
『HQ、こちらB1。B展開完了、送れ。』
『B1、了解。HQより全小隊へ、30分後に目標を一斉爆破、その後終結地点へ移動せよ。
各行動は小隊長の裁量に委ねるものとする。』
小隊長の裁量、つまり成功も失敗も、そして犠牲の責任もすべては現場に押し付けられる事を意味していた。
『A1、了解』
『B1、了解』
『B3、了解』
短く言葉を返す。
それ以上言葉を交わす必要ない。
「作戦を開始する。総員光学迷彩を起動し、目標付近まで進出。20分以内に内部を制圧する。」
中隊長からの指示を踏まえ即座に判断した霧島は小隊に命令を出す。
「小隊長、偵察を出す事を具申します。」
命令を聞いた梁兵曹長は偵察を提案してきた。
しかし、霧島はそれを否定する。
「梁兵曹長、今回は早さが重要だ。偵察を出す時間はない。」
その判断がどれほど危険かは霧島も理解している。だが、30分後というタイムリミットがある以上偵察をしている暇は無かった。
「承知しました。」
「よろしい、各員行動を開始せよ。」
霧島の号令を皮切りに全員が光学迷彩を起動する。
小隊員達の姿が消えていき、その場には揚陸艇が着地した跡だけが残った。
お互いの姿はヘルメットに表示されているが本当にその場にいるのかはわからない。
敵拠点の倉庫へ至る通路に、目立った反応は見られない。
あまりにも、静かすぎる。
敵拠点は小惑星内部に構築された人工施設だ。
土はなく、床に残るのは足跡ではなく、金属の擦過音だけ。
霧島達は特に抵抗を受ける事なく目標の倉庫に辿り着くことができた。
事前情報によれば倉庫には2つの入り口があることが確認されている。
どう制圧する
霧島は二つの選択肢で迷っていた。
正攻法なら、同時に2つの入り口を制圧する。
しかし、それでは敵に気づかれ増援が来る可能性や、他の小隊に影響を及ぼす可能性がある。
だからと言って1つの入り口だけでは時間がかかる。それに入り口を閉ざされ包囲殲滅される危険性もある。
どちらを選んでも犠牲がでる可能性は否定できない。
そして、霧島は決断する。
「第一分隊は東門から、第二分隊は南門から突入、第三分隊は倉庫周辺で待機、増援に警戒せよ。」
霧島は正攻法を選択した。
「小隊長、それでは敵に気づかれる恐れがあります。」
梁兵曹長が即座に危険性を指摘する。
「確かにそうだ。だが、1つの門を制圧しただけでは脱出路の確保が危うくなる。全滅しては意味がない。」
「敵の増援が来ても全滅します。」
「どちらも可能性だ、なら生き残る確率が高い方を選ぶ。それだけだ。」
「了解しました。小隊長がよろしいならもう何も言いません。」
霧島と梁兵曹長の会話を分隊長達は静かに見守っていた。
「行動開始」
霧島の号令と同時に、小隊はそれぞれの持ち場へ散開する。
霧島は第一分隊と共に東門へ向かった。
東門に到達すると、光学迷彩を起動した兵士が前に出る。
次の瞬間、歩哨の背後に回り込み、
口を塞ぎ、ナイフを首に刺した。
音もなく、敵兵は崩れ落ちる。
遺体を陰に引き込み、扉が静かに開く。
その瞬間、先頭の兵士の体を光線が貫いた。




