議会そして陰謀(2)
統帥総監部からの通達は議場に少なからぬ動揺を与えた。
非常な手段とは何なのか
議員達の頭の中には共通するある言葉が浮かんでいた。
非常戒厳
そして軍による統治権の奪取
あり得ない。
そう口に出して否定できる議員は、一人もいなかった。
実際、帝国軍は国民から非常に高い支持を得ている。
対して議会の信頼は地に落ちている。
この状況で軍が「国家保護のため」と称し、実力を持って軍事政権を樹立したとしても国民がそれを歓迎する未来は容易に想像できた。
新共産党連合が議会において政治ショーが出来るのも帝国軍が絶対に議会に対し干渉してこないという根拠の無い自信があったからだ。
その前提が崩れた今、先ほどまでの勢いは失われ、議場に沈黙が落ちた。
発言台に立つ者はいても、言葉は誰の口からも出なかった。
その場にいる議員達はどう動けば自分達の益になるかわからず行動を決めかねている。
そしてイノウエ大将はおもむろに立ち上がり議場を退席しようとした。
「イノウエ大将、なぜ退席するのですか。」
イノウエ大将の行動を受け野党議員が追及をする。しかしその声に精彩は無い。
「これ以上の何も申し上げる事はございません。後は議員の皆様方で無駄なお喋りをお楽しみください。」
イノウエ大将の言葉は議員を激昂させるには十分だった。
「議会を軽視しているのか」
野党議員は顔を真っ赤にし大声で叫ぶ。
その問いかけにイノウエ大将は何も答えない。
今日の審議会はそれで解散となった。
議会から退席したイノウエ大将は統帥総監部へと向かい、秘密会談に臨んだ。
統帥総監部地下秘密会議室では数人の将官が集っていた。
統帥総監 鷹宮帝国元帥
統合参謀本部議長 神代陸軍大将
特殊作戦軍司令官 アカツキ宇宙軍大将
北部方面軍司令官 イノウエ陸軍大将
帝国軍の最高幹部達だ。
「守備は」
鷹宮元帥が口火を切った。
「通達のタイミング、議員の答弁、議会の反応全て予想通りであります。今頃議員共は我々が武力反乱を起こすのではという不安に頭を支配されていることでしょう。」
「よろしい、これで暫くは議会からの追及を交わすことができる。」
「しかし、議員共の狼狽様は滑稽でした。
普通に考えれば武力反乱など陛下が許すはずがないとわかるでしょう。」
「仕方があるまい、議員共は自らの権力を維持するのに必死なのだ。そのせいで突飛な考えに至ってしまう。」
「我々とは文化が違いますね。」
「そうだ。だがこの状況も長くは持たん。
特に支持率の減少が止まらない新共産党連合は人気取りの為また軍を標的にするだろう。」
「しかし、フェアリー王国に対する軍事行動を止める事は出来ませんね。」
神代大将が小さく付け加えた。
「そうだ、議会の小物共に配慮する必要はない。」
鷹宮元帥が力強く言い放つ。
「しかし、これ以上犠牲者を増やすわけにはいかないのも事実です。」
イノウエ大将が反論する。
「犠牲者が出るのはやむを得んだろう。問題は誰を犠牲にするかだ。」
「ARESを使いましょう。」
今まで黙っていたアカツキ大将が小さく口を開いた。
「市民部隊か、それしかあるまい。」
鷹宮元帥が小さく口を開き、アカツキ大将に答えた。
「議員共は選挙権の無い市民の犠牲を問題視する事はありませんからね。」
「航空支援は出しますか」
神代大将が鷹宮元帥に質問した。
「そこまでの大規模動員は発覚のリスクが高まる。」
「では、」
「航空支援は行わない。」
一瞬の沈黙の後、アカツキ大将が静かに頷いた。
「ではその様に命令いたします。」
それだけでこの会議は事実上の終わりを迎えた。
作戦の成否は誰にもわからない。だが、次の会議で戦死をどう処理するかが議題になる事だけはこの場にいる全員が理解していた。
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