議会そして陰謀(1)
霧島が分隊長達に挨拶をしている頃、帝都では一つの動きがあった。
帝国歴525年 8月17日
第525期臨時帝国議会
この日の議会は、大波乱が予想されていた。
国防審議会の前日、次回審議において、野党の一派である新共産党連合の議員が、帝国軍で相次ぐ「事故死」について正式な説明を求め、帝国軍代表者の出頭を要求していたからだ。
その要求に他の議会派閥や軍の一同は驚愕し、そして三者三様の反応を見せた。
軍は即座に抗議の意を表明し、
他の野党派閥は対応を決めきれぬまま沈黙を選び、
与党は表だった行動は避けつつも軍に同調した。
そんな波乱の空気を孕んだまま、ついに国防審議会は開幕した。
議場には普段より多くの議員が集まっている。
国防審議会の委員の他に各派閥の代表者や有力議員。
傍聴席には報道関係者の姿も目立ち、場内には微かなざわめきが広がっていた。
「これより、第五二五期臨時帝国議会、国防審議会を開会する」
国防審議会委員長の宣言によりざわめきは嘘の様に消えた。
審議会が始まって早々野党議員の演説が始まった。
「皆さま、お集まりいただきありがとうございます。今回はこの国防審議会という場を借り、帝国軍、特に北部方面軍で多発しております事故に関する審議をしたいと思っております。」
野党議員は大袈裟に身振り手振りを交えながら話している。
彼の周りの場だけが帝国議会ではなく、彼の政治ショーの舞台となっていた。
「フェアリー王国と停戦協定を結んでからというもの帝国軍は兵士の死亡を伴う事故が多発しています。そしてその事故のほぼ全てが原因不明。おかしいと思いませんか。
聞くところによると本日この場にはいらっしゃっていない貴族院議員中辻伯爵のご子息も先日「事故死」なされたとか。
これは、停戦により帝国軍全体の緊張感が著しく低下した結果ではありませんか。
そこで、軍にご質問します。
軍はこの兵士の死亡を伴う事故は本当に防ぎようのなかった事故だとお考えですか。」
野党議員の質問を受け帝国軍代表者である北部方面軍司令官イノウエ陸軍大将が席から立ち上がり発言台に進みでた。
「北部方面軍司令官イノウエであります。
えー、ご質問の帝国軍における事故に関してですが現在原因を調査中であります。
原因がわからない以上事故としての処理が適切かどうかの判断は致しかねます。」
それだけを言いイノウエ大将は一礼して自身の席に戻る。
それと同時に野党議員が笑みが隠せていない顔と共に発言台に躍り出る。
「みなさん、お聞きになりましたか。
帝国軍は未だに事故の全容を把握できていないのです。
原因不明。
責任の所在も不明。
しかし結論だけは、事故。
これが、最強と言われた帝国軍の現実です。
イノウエ大将もう一度お聞きします。
一連の事故を本当に事故だと軍は本気で考えているのでしょうか。
それが答えられないのなら事故についての詳しい状況を開示してください。」
「お答えいたします。軍の一連の事故に関する認識は先に述べた通りであります。また、事故が起こった状況に関する情報は軍機につき回答を差し控えさせていただきます。」
イノウエ大将の発言は軍人らしく簡潔をきわわめた。
しかし、その発言は議会で行う発言としては0点だ。
イノウエ大将の発言に対し、議場ではヤジが飛ばされている。
軍の責任を問う声
軍を擁護し、野党を批判する声
「イノウエ大将、それは答えになっていません。
みなさん、こんな軍に莫大な予算をかける意味があるのでしょうか。
我々新共産党連合は今審議会において軍事費の大幅削減を提案いたします。」
議場の興奮は最高潮に達した。
もはやこの場に冷静に議論をしている議員はいるのだろうか。
軍を除いて。
しかし、その興奮は帝国軍からもたらされた一報により破壊された。
「今審議会において軍事費の削減が決議される様な事態に陥った場合、統帥総監部は帝国の保護のため非常な手段をとらざるを得ない。」
統帥総監部からの通達は軍らしく無駄のない簡潔な文であった。
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