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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

神の執着

作者: 氷桜 零


私は、いつもの仕事の帰りだった。

今日は久しぶりに半日休暇を取ることができたので、家でゴロゴロしながらゲームをしようと計画していた。

午前中にアップデートを終え、今日から新バージョンが始まる。

午前中の仕事は、それだけを励みに頑張ってきた。

いや、ここ数日頑張れたのも、全ては今日のアップデートのため。

早く家に帰ろうと、駆け足で帰り道を進んでいた。


そんな時だった。

足元に幾何学模様が現れ、眩しく光り出したのは。

一瞬の出来事で、逃げることも助けを求めることもできなかった。

 

視界が揺れ、気持ち悪くなって座り込んだ。

車酔いのような症状を落ち着かせていると、周囲から歓声が聞こえてくる。

歓声の前に助けろよ、と思わなくもないが、何も言わずに黙っていた。

そしてその歓声が、いつしか戸惑いに変わっていた。


「二人?」


「二人だと?」


「文献では一人だったはず。」


「ならば、どちらかが本物で、どちらかが偽物か。」


何だか外野が好き勝手言っている。

偽物とか、本物とか、どういうことなのだろうか?

誰か説明してほしい。


症状が落ち着き、顔を上げると、全く見覚えのない場所だった。

石造りの広い部屋、よくわからない格好をしている変な人たち。

私は、一体何に巻き込まれたのか。

私を誘拐してもメリットは全くないと言うのに。


視界の端に、制服を着た女子高生らしき人がいる。

見慣れた制服に、少しホッとした。


座り込んでいる私と女子高生の前に、豪華な服を着た青年が、大仰な態度で手を広げた。


舞台設定か何かかな?


「よくぞ召喚に応じてくれた。私はサントス国の第二王子。聖女を召喚した者だ。聖女はどちらかな?」


「あ、はい!私です!」


女子高生が爛々とした目で、勢いよく手を上げた。

何だか、異世界転移とか、聖女キタコレとか、呟きが聞こえる。

 

異世界転移というと、アレか?

異世界に行って、聖女とか勇者とかやるやつ。

小説とか漫画で流行りの、異世界ものか。

それが、今?

ないわー。


「私は違うと思います。」


「そうか。では聖女よ、こちらへ。聖女でなければいらん。牢にでも入れておけ。」


はあ!?

勝手に誘拐しておいて、それはないでしょう。

この国は駄目ね。


女子高生が私を見て、ニヤリと笑う。

何が嬉しいのか、全く同意できない。


「ぐっ……いった…。」


大の男に押さえつけられた体は、悲鳴をあげていた。

腕が変な方向に曲げられて、このままだと折れそう。


「何をしている!?」


新たな声が、その場に響き渡った。

今度こそ、味方になってくれる人がいい。

だが、痛みにうめいている私は、その人物の姿が見えない。


「兄上、遅いお着きですね。聖女召喚は、私が成功させました!見てください、聖女ですよ!」


「聖女召喚は検討中だっただろう。勝手なことを。それに、そちらの女性はどう言うことだ?」


「ああ、聖女にくっついてきた一般人ですよ。聖女に危害を加えさせないため、捕えています。」


「馬鹿な、そんな理屈が通用するか!勝手に呼んでおいて、あんまりな扱いだ!お前たち、手を離せ!」


あの馬鹿王子が兄と言うくらいなら、相手も王子なのだろう。

だが、兵士が言うことを聞いていない。

影響力が弱いのかもしれない。

当てにならないなら、私がやるしか…。


そう考えたところで、背筋が悪寒で震える。


拙い、拙い、わからないけど拙い!


頭が、心臓が早鐘を打って、警告を知らせてくる。


「我が最愛、ようやく会えた。」


ねっとりと絡みつく声と、猛獣に舐められているような感覚。

いつも悪夢の中で、私を呼んでいた声だ。

いつも大蛇の姿で、私を絡め取った声。

でもここは夢じゃない。

夢じゃないから、逃げられない。


私を抑えていた兵が霧散した。

視界にを赤く染めて、血の匂いが充満している。


「ああ、汚れてしまったな。すまない、綺麗にしよう。」


男が腕を一振りすると、血の匂いも、赤色も消える。


いつ移動したのか、気がつけば男に抱えられていた。


身体の震えが止まらない。

抵抗どころか、手の一つも動かせず、硬直してしまう。


捕まってしまった。


私の中には、ただそれしか残っていなかった。


「人間よ、お前たちには感謝している。我が最愛を、干渉しやすいこちらの世界に呼んでくれたのだから。だから、礼に苦しまずに逝かせてやろう。」


男が、何かを言っている。

その言葉を理解する前に、視界は白く染められ、私の意識も途切れたのだった。



「ようやく手に入った。もう逃さない、我が最愛。」 



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