第八話 解決
野近は黙っていた。湊が次に口にする言葉を、静かに待っていた。
「殺すつもりは、無かったんです・・・・・・」
湊は、静かに思いを話した。
「貴之が最後まで私に嘘をつき通そうとすることが、どうしても私は許せなかった・・・・・・。でも、私も野近さんに嘘をつきました。これじゃあ、貴之と同じですね」
野近は、黙って湊の話を聞いていた。
湊は、罪を認めて、不思議と気持ちが軽くなった。湊は、野近の方を向いた。
「あの・・・・・・、どこから気付いていたんですか。私が犯人だということに・・・・・・」
湊の問いかけに、今まで黙っていた野近は、静かに口を開いた。
「私が事情聴取の後に、あなたに時刻を尋ねた時です。あなたは、テーブルに置いてある時計を見ずに、わざわざ携帯電話で時刻を調べていました。あなたは、その置き時計が動いていないことを知っていたんです。1ヶ月ぶりに来た部屋の時計の電池が切れているなんて、普通はわかりません」
「そっか・・・・・・。バレてたんだ・・・・・・」
湊は、天を仰いだ。
「駄目ですね、わたし・・・・・・。男に振り回されて、悲しんで、嫉妬して・・・・・・」
涙が溢れてきた。様々な感情が、込み上げてきた。
黙っていた野近が、そっと声をかけた。
「自分の人生は、自分で決めることが大切です。誰かの言いなりになってはいけません」
湊は泣いていた。野近の言葉が、すっと心に響いた。
「私、心から反省しています。たった今こんなことを言っても、信用してくれないかも知れないけど・・・・・・」
湊は、こぼれた涙をハンカチで拭った。そして、野近の方をまっすぐ見つめた。
「これから、しっかりと罪を償おうと思います」
野近は、優しく応えた。
「はい。あなたなら、きっとできます」
湊は、野近に部屋の外へ促された。湊は、振り向くことなく、玄関の扉を開けた。外に出ると、光り輝く夜景が眼下に広がっていた。
この事件は創作であり、野近和夫は架空の刑事です。
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