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第2話 学校見学

 逸人の部屋は全て畳で、部屋中にゲーム機やソフトが散乱し、PCの数は4。

 家賃は安そうだが、ゲームやそれに類する物に掛けている金は多いと見える。

 星乃がここへ来る前に取ったであろうピザ片手に、用意された資料に目を通した逸人は口角を上げた。


「へぇ。面白いな。今時はこんな学校があるのか。国語とか英語とか数学に置き換わって、格ゲー・カードゲーム・音ゲー・麻雀・FPSを()()()って呼ばせて履修させてんのか」

「は、はい。一応、他のジャンルも触りますが、基本はその5教科がメインです」


 初対面の印象より、話してみると柔らかい印象を受ける。

 星乃は逸人への警戒レベルを1ランク下げた。


「はっはっは! ガキの頃に見た夢の学校だな。この5教科の成績の総合力で実力を判断して、ダイアモンドクラス、ゴールドクラス、シルバークラス、ブロンズクラス、アイアンクラスの順に振り分けられるっつーわけか。このクラス名はランクマを意識してんのかね」


 逸人は資料から視線を起こし、星乃を見る。


「そんでお前はこの最下位のアイアンクラスの担任、と」

「はい。現状、2年アイアンクラスの状況は歴代のアイアンクラスと比較しても悲惨でして……月末に行われるブロンズクラスとの対抗戦に敗北すると、クラス評価が0になるんです……!」

「評価が0になると何がまずいんだ?」

「クラス評価が0になると丸ごと留年です。この学校では留年生は基本、立場が無いので、みんな転校するでしょう。実質の退学処分というわけです……」

「それで、その対抗戦にどうしても勝ちたいからチートで有名な俺に声を掛けたわけか。うん、面白い」


 逸人は資料のある部分を指さす。


「校長の名前、堀井(ほりい)竜華(りゅうか)ってのは5年連続でスパルタン(格ゲー)の世界大会を制覇した、あの堀井竜華で間違いないな?」

「はい。そうです」

「ふーん。……高校2年生、今が4月だからあと約2年、仕込む時間があるのか。俺を追放したeスポーツ界に復讐するのに使えるかもな」

「え……?」


 ピザを食べ終えた逸人は寝室に入り、襖を閉める。


「あの、逸人さん?」


 ものの十数秒で逸人は部屋から出てくる。ネクタイは緩く、だらしないが、一応スーツ姿だ。


「俺を校長に会わせろ」

「え!? む、無理ですよ! あなたの悪名高さは知っているでしょう!?」

「いいから話を通せ。大丈夫。アイツは俺の名前を聞けば必ず会いたがる」


 やけに自信満々な逸人に押され、星乃は渋々校長に電話を掛けた。


「……あ、あの校長先生、私、2年のアイアンクラスを担当している桜井星乃と申します……はい。はい。すみません、お忙しい時に……その、高橋逸人という方が校長先生に会いたいって言ってるんですけどぉ、無理ですよねぇ? ――え? 大丈夫? 今すぐ連れて来い!? あ、はい。わかりました。はい。すぐに連れて行きます……」


 星乃は信じられないという顔で逸人を見る。


「す、すぐに来いとのことです」

「よし。行くぞちびっ子。お前、車は持ってきてるんだろうな」

「はい。って、ちびっ子ってなんですか!」

「……今更だけど、お前ほんとに教師か? つか、成人か?」


 星乃は身長140cmで、童顔で、子供っぽいピンクの髪をしているため、一見すれば高校生……いや、中学生ほどに見える。


「れっきとした大人ですよ! ほら! 免許しょ!」


 逸人は星乃の免許証を見て、さらに驚く。


――“桜井星乃(27)”


 外見詐欺もいいとこである。



 ---  



 時刻は18時半。

 夕陽が差し込む廊下を逸人がやや先行気味に歩く。どうやら星乃の小さな歩幅に合わせる気はないらしい。


「へぇ」


 カチカチカチ。と色々な教室からボタンを弾く音が聞こえる。

 ゲーマーズ校はその校風からゲーム関連の部活が多く、格ゲー部、プログラミング部、攻略サイト運営部や同人ゲーム部等々、その種類は多岐に渡る。

 他校に比べ、圧倒的に文化部が多いが、運動部が無いわけではない。逸人はを空き教室に入り、窓から校庭を眺める。


「ゲーム関連の部活だけでなく、運動部もちゃんとあんのか」


 見えるだけでも陸上部、サッカー部、テニス部が活動している。


「いけませんか?」

「まさか。運動出来る奴に頭が良い奴が多いのと同じで、運動出来る奴はゲームの才覚に恵まれていることが多い。ゲームも体力勝負、根気勝負な面が多いからな。運動不足から病気になるのも怖いし、運動部に入るのは悪くない選択肢と言える」


 星乃は純粋にゲームを語る逸人に対し、困惑していた。

 あまりにも……聞いていたイメージと異なる。


「あの、校長を待たせているので寄り道は程々に……」

「アイツは多少待たせた所でとやかく言う器量の小さい女じゃないさ」

「随分親し気ですけど、校長とお知り合いなのですか?」

「さあって、どうだったかな」

「はぐらかさないでください!」

「ほれ、行くぞちびっ子」

「だからちびっ子と……あぁもうっ!」


 気まぐれな逸人に頭を抱えつつ、星乃は逸人の背中を追う。

 逸人が寄り道をし続け、時刻19時半。ようやく2人は6階の校長室の前にたどり着く。


「……よ、予定より30分も遅れてしまいました……! もう逸人さんのせいですよっ!」

「ガタガタ言ってないで入るぞ」

「あ! ちょっと! 私が先に……」

「お邪魔しまーす」


 ノックもせず、逸人は校長室に入る。

 校長室――その窓際にある大きな机。

 紫のロングヘアーの女性が手を組んで座っている。

 女性は不敵に笑い、逸人を見る。


「久しぶりですね。逸人さん」

「よぉ竜華(りゅうか)。10年振りだな」

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