光る海の中
はげしい雨の音
向かいの車のヘッドライトが眩しい
フロントガラスの雨粒の波に反射して
陽がさした海の中にいるみたいだ
激しい雨の中の光る海
騙されるならこんな風に騙されてみたい
雨に洗われた血の海なのかもしれないなんて
あの夕刻の海に涙をした
どこからくるかわからない淋しさは
地球が抱える淋しさに似てる
この星に棲まうひとりとひとり
あなたとわたし
激しい雨が降る車の中で
いつのまにか向かいの車は出発して
ただ雨の中だった
雨に合わせてあのひとの名が心中に降る
わたしのどこかしれぬ奥深いところに降る
わたしはただ雨の中を走らなければと
エンジンをかけるけれど
走っても走っても行く先が見えない
ヘッドライト、照らし出してほしい
あのひとの海まで、走る涙の波にさらわれ
ただ崩れてゆく砂の城を手繰り寄せて
わたしは光る海の中へゆきたい