百足③
ん〜、どうしたもんかなぁ。
まだ朝市の余韻が残る広場のベンチに腰掛けて今後の動きについて考える。
エコーマンのやつ、あれわざとだろ。
確認だ。
ーちゃんと話してんだろうな?マッコイ?
話せてないよ、こんちくしょうめ。
でも、やましい事は何も無いぞ!
私は当事者中の当事者なのだから!!
仕事の道すがら、たまたまちょっとカミ狩りの連中に会うことができて、ひょんなことからブチのめすことができればなぁ、なんて思っても良いじゃないか!!
・・・なんか、最近一方的な正義について偉そうなことを考えた気がするが・・・
良いんだ!流石に!カミ狩りに対しては強行姿勢で!
そもそも、カミ狩りとは。
ある内戦中の国にあるスラム街で、まことしやかに噂された、カミの生き血をすすることで力を得ようとする狂信的な考えのもとで行われ始めた。
最初はごく小さな範囲での活動だったのが、不安定な世界情勢が狂信に拍車をかけ、今や世界中の至る所に信者が潜伏しているという状況になってしまった。
もちろん、カミの血を吸ったって何も起きない。
そんなことが起きるなら、夏が来るたびに私の周りでは、異常進化を遂げた蚊が飛び交うことだろう。
だが、残念ながら現在のような状況になると、「カミの生き血」というものに価値が生まれてしまう。
まずいことに、闇夜に輝くという性質が、異常癖のコレクターにも関心を向けられ、信者以外の小金狙いの悪党にまで狙われる羽目になった。
私が世界郵便に所属してからの数年で随分叩きのめしたと思うのだが・・・やつらはゴキブリのようにしつこい。
純血のカミ、となると数は少ないだろうが(というか私以外そんな存在聞いたこともないが)カミの血を継ぐ者という存在は、どの国にも一定数存在している。
戦う力がある者なら良いが、問題は戦えない者だ。カミ狩りの犠牲者の多くは、戦う術を持たない子供や、女性である。
・・・やっぱ叩き潰していいな、うん。
ま、そういう個人的な考えもあって、あわよくばカミ狩りの尻尾を掴めるかも?と、今回の仕事を私に回してもらったという訳だ。
社長はその辺のことを知っている。
ただ・・・
ボンバには、この事は言っていない。
なんでって?
いや、まぁ、うん、だって。
「・・・滅茶苦茶怒るだろうなぁ・・・」
今私がしていることは、言ってしまえば自分を餌にして釣りをしているようなものだ。
彼がそんなことを許す訳が無い。
自分でも不思議だ。
これまであまり怒られるだの嫌われるだのをそこまで気にしたことがない。
現に、システィにはこれまでも何度も怒られているし、多分、今回のことでもまた怒られる。
そりゃあ、心配してくれてることを申し訳無く思うこともあるが、だからといってスタンスを変えようとは思わなかった。
初めてのバディだからなのか?先輩として格好つけたいのか?惚れた腫れたの話では無いのは間違いないが、ボンバに怒られるのはなんか、怖い。
うーむ、なんなんだ、あの野郎。
だから、柄にも無く、隠し事みたいな形での仕事になってしまった。
言い訳まで考え始めてしまっている。
どうしたもんかなぁ・・・。
今回はこのまま穏便に帰ろうかな・・・。
そう思った時、何者かの視線を感じた。