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第15話 柊の本音1

 俺は余すことなく柊に伝えた。計画はすべてお見通し、そしてその計画は実らない、だから他の方法を探した方がいい、と。


 初めの内こそ否定していた柊だったが、途中からおとなしくなり、今では俯いて表情を隠してしまっている。


 空き教室なのに時を刻み続ける壁時計。もう一周、秒針がもう一周したら柊の無言の肯定と受け取り、帰らせてもらおう。


「……はぁ。バレちゃってたんだ」


 そう決めた矢先、柊が口を開いた。


 俺は壁時計から柊に視線を移す。表情からは諦念の色が窺える。


「そりゃあな。あんだけグイグイこられたら嫌でもわかる」


「仕方ないじゃん。こっちも必死だったんだから」


「まあ、説得力しかないわな……ていうか、最初は違う違う否定しまくってくせに、急に素直になったな」


「あぁ…………なんだろ、そこまで知られちゃってんのか~って感じで、今は若干やけくそ気味というか…………」


 そう曖昧に言った柊は、軽く溜息をついた後、自嘲するように笑った。


「なんか、疲れちゃったんだよね……片思いにさ」


「疲れた?」


「そう……疲れたの」


 軽い口調でありながらも、言葉の重みは確かにあった気がする。柊の口から零れた「疲れた」は、紛れもない本心なのだろう。


 机上に視線を落とした彼女は、独り言のように両国を好きになった経緯を語りだした。


「ほんとに大したことないんだよね、好きになったキッカケってやつ。両国君とは一年の時も同じクラスで、あの人カッコいいな~ってなって、言葉を交わしていく内に優しい人だな~ってなって、気付けば目で追うようになってて……」


 そこで言葉を区切り、こっちに目を向けてきた柊。さすがに無反応というわけにもいかないので、とりあえず頷いておく。


「けど、好きになるにつれて両国君に避けられるようになってったんだよね。今もそう、無視はされないんだけど近づかせてもくれない、みたいな。そういうのが伝わってくる。んでさ、そんな態度とられちゃうとなんとしてでも振り向かせてやる! って気持ちになるじゃん?」


「いや、なるじゃんて言われても困るんだけど」


「なるの! 少なくとも私はなった! ……なったから、今があるんじゃん」


 自分を責めるかのように零した柊に、俺は「そうか」と返した。


「大切な友達の〝気持ち〟を利用するとか……ほんと、つくづく最低だと自分でも思う」


「最低かはさておくとして、まあ片瀬もお前のことをかけがえのない友達と思ってくれてるんだろうな」


「どうだろ……もうとっくに嫌われてる可能性もあるかもしんない」


「そりゃねーな。つかそうじゃなきゃ、好きでもない相手とくっつくことを受け入れたりしない」


「……………………」


 きっぱり言い切った俺を、柊はキョトンとした顔で見つめてくる。


 ……あ、これまずいな。柄にもないセリフ吐いた恥ずかしさが今になってきたぞこれ。


 遅れて込み上げてきた羞恥心。このままノーリアクションでいられたら無言で帰っちゃうまであるよ?


 そんな俺の心中での呼びかけが通じたのか、柊は呆れたように笑う。


「あんたの中ではそういうことになってるんだっけ」

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