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サラお義姉様の恋愛相談室2

 

「おしゃれをしましょう!」


 え?


「いつもより可愛いローゼちゃんをセルジューク様に見て頂かないとね! だからと言って、ドレスで登園するのはやり過ぎだと思うけど……いつもより念入りにお風呂で磨いて、髪も顔も身体もパックして!」


 なんで?


「ローゼちゃんは素が良いから、それ程自分を飾る事に執心してこなかったじゃない? 今までの貴女は『王女として人前に出るから』ドレスアップする時だけ特別仕様で着飾るって感じだったのではなくて?

 でもね、好きな人の為に装う時の女の子はね、特別なのよ? 特別に可愛くなれるの。それは女の子特有の武器になるのよ? この武器はね、人を傷付ける為では無く、女の子の心に勇気を与える物なの。だから、彼の為にちゃんと自分を磨いたなら。貴女は動揺したりパニックを起こしたりしないわ。絶対にね」


 そういうもの、なのでしょうか?

 わたくしでも、そうなるのでしょうか?


「貴女のデビュタントパーティの招待状を手に入れる為に、セルジューク様は本当に苦労なさっていたわよ? 国王陛下は決定権を持ちながら逃げ回るし、ヘル様……王太子殿下もこの件ではシカト……無視を決め込んでいたし。外務省経由で父から私に謁見申請が来た時はびっくりしたわ」


「そのお話、詳しく聞きたいです」


 お兄様は絶対教えてくれない話です!


「王宮で行われるパーティだから、管轄は宮内省だったの。だからセルジューク様は宮内省を通じて陛下に招待してくれるよう申請したらしいわ」

「でもお父様は逃げ回った? つまり、是も非も言わず?」

「そう。あの時はテュルク国からも正式に婚約の申し込みが来ていて、陛下同様、ヘル様に訊いても同じだったらしいわ。学園で貴女に派手に求婚したって聞いたばかりだったからねぇ」


 くすくす笑うお義姉様。良かったのかしら? 外交問題に発展していない?


「国王陛下に謁見申請までして直訴しても埒が明かないから、外国人枠で招待状を入手しようとしたセルジューク様は外務省に申請した。でも陛下は各省庁にテュルク国からの申請は自分に最終決定権があると通達していたらしくてね、外務省でも長官が陛下に是非を問おうとした時に、我が父が面白がってしまって……」

「ベッケンバウワー公爵が?」


 外務大臣でもある公爵は、我が王家(ローリンゲン)が、特にお兄様が、お義姉様の仰る事にほぼ異を唱えないとよくご存知なのよねぇ。


「えぇ。テュルク国から、ぜひ王女殿下のデビュタントにってそれはそれは素晴らしい出来の真珠のティアラを始めとするお飾り一式を献上されながらも、のらりくらりと返事をしないなんて事情を聞いて、私にセルジューク様と会わないかと打診してきたの。私が直接会って、彼の人となりを見てくれって。私が納得のいく相手なら招待状を出してやるって」

「お義姉様、アスラーンと会っていたの?!」

「そうよ。でないとあの晩、貴女に“紹介”なんてしないわよ?」


 そうでした……。お義姉様が“紹介”して下さらなければ、会えなかったわ。


「その、彼の事、お義姉様は、どう、思いましたか?」

「うーーん。今日の貴女のお話を聞いたから、言うのだけど……私が会った時って、もしかしたら、夜の大聖堂で貴方達が逢引きした後だったのねぇ……。ふんふん、はいはい。跪いてローゼちゃんの靴にくちづけした後、のセルジューク様、だったのねぇ……はいはい」


 さきほどから『ふんふん、はいはい』しか言ってませんよ、お義姉様!


「あくまでもこれは、私の、印象よ?

 人嫌い? いいえ、人間不信ぎみ? っていうのかしら。怖がりで慎重。王族らしい、傲慢な性格をしている人、かな。いいんじゃない? 国を潰す事はしなさそうだし。だけど、貴女に対しては……」

「わたくしに対しては?」


 お義姉様は、今まで見た事もないいたずらっ子な表情でにやーーーーって笑って。


「言わない♪」

「えーーー?」

「自分で確認なさい♪」

「いじわるぅ……でも、彼があの晩招待状を持っていたって事は、お義姉様は納得したって事ですよね?」


 お義姉様はにっこりと微笑む。


「ひとつ、提案があるのだけどね。『候補』を取れば、物思いの負担がひとつ減るのでは?」

「コウホヲトル?」

「そう。堂々と会える立場になれば、警備の隙をついて会う必要も無いでしょう? それとも、こっそりと隠れて会う事によるスリルを楽しむ恋愛をしているの? 違うでしょ? 貴女には、誰かから隠れる後ろ暗い恋なんてして欲しくないわ。誰にも後ろ指差されない、堂々とお日様の下で手を繋いで歩いて祝福される恋をして欲しい。彼が帰国しても、確かな繋がりになるわよ?」

「なんの『コウホヲトル』のですか?」

「“婚約者候補”の“候補”を取るのよ! つまり、ちゃんとした婚約者になればいいの!!」


 あ。なるほど!


「陛下もヘル様も、現状では邪魔も妨害もしてくるでしょうけど、本音としては貴女に幸せになって貰いたい。これだけよ? だから、貴女がどうしてもって我を押し通せば、その願いは叶うわよ?」


 邪魔も妨害もしてくる……のですか。お父様もお兄様も、いったい何を考えていらっしゃるのか。


「デビュタントの時がいい例でしょう? 貴女への求婚者なんて必要無いってヘル様は以前言ってたじゃない? それが一転、一応とはいえ、婚約者候補としてセルジューク様を認めたわ。貴女がそう宣言したから。ね?」


 なるほど?


「そうと決まれば、エステ隊にお願いしなきゃね~♪」


 どこかウキウキとするお義姉様は、ドアを開けて侍女たちに何やら指示を与えていて。

 わたくしは半ば呆然としながら侍女たちの手によってピカピカに磨き上げられて。ちゃんとご飯を食べなさいと言われたから食べて。今日は早く寝るのよ! と言われたから、早々にベッドの住人になったのでした。


 えぇ、我がローリンゲン王家の人間にとって、お義姉様のお言葉は神の啓示なのですもの……。



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― 新着の感想 ―
[一言] ほんとポンコツ(笑)
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