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学生自治会によるお祭り

 

「皆様、年末年始はどのようにお過ごしになりますの?」


 最近の放課後は、カフェテリアで課題を熟しながらのお喋りが定番になっているわ。その中で話題の一つとして投げかければ。


「うちの吝嗇家の両親も、流石に年末年始は王都に来ます。王都の宿に一ヵ月ほど居ますかね。私は学園が休みの時は両親と合流して祭り見物したり、社交をしたり……となるかと」


 と、レオニーが言えば、他のクラスメイトも似たり寄ったりな意見。中には新年の夜会でデビュタントするという子も。頑張ってね!


「わたくしね、その冬祭りって見た事が無いの」

  そう言ったらシン……と沈黙が訪れてしまったわ。仕方が無いわよね、王女が簡単に外出なんて出来ないもの。


「だからね、やってみたいの。お祭り」

「やってみたい?」

「そう。わたくしたちの手で。この学園で、出来ないかしら」

 学園の中でなら、わたくしも普通の学生として参加出来る。


「わたくしのプランとしては、春になると3年生の方々が学園をご卒業なさるでしょ? 確認したのだけど、『卒業式』という式典があるのですって。講堂に集められて、ご両親に見守られる中、3年生ひとりひとりに学業修了証書を手渡すのだとか。同時に記念の黒いガウンと帽子を授与するのですって。どんな帽子なのか楽しみね。その時に我々在校生から卒業生の皆様へのお祝いのお祭りができないかしらって思って。式典から解放され講堂を出た卒業生の皆様の前に屋台が並んでいたら、面白くないかしら?」

「式典からガーデンパーティに突入って雰囲気ですかね?」

「面白そう!」「いいね!」

「貴方なら、何をしたい? 屋台を出す? 領地の特産品を臨席する卒業生の親御さんに見てもらうチャンスでもあるわね」

「あ! それいいですね! 卒業式って、何をするのか判らなかったけど、外部の人間と触れ合うチャンスでもありますね!」

「そっか……展示ブースを用意して、日頃研究しているテーマを発表するってのもありですかね? 卒業してしまう先輩に成果を見て欲しいんです」

「素敵! 先輩と研究していたの? ついでに興味ある子を勧誘できるのではなくて? メンバーを増やせるわ」

「うちの領地の特産品で作った焼き菓子の販売とか……ダメですかね?」

「あら、いいじゃない! 素敵よ!わたくしも買うわ」

「面白い。だが、我々騎士科はどうすべきか……」


 カフェテリアにいた騎士科の2年生が話に加わって来たわ。


「騎士科の皆さん? 卒業生とお別れ組手なんてどうかしら? それとも……卒業する皆様ひとりずつ、今後の進路がどうなったのか報告会みたいな事をして、在校生にはっぱをかけて貰うっていうのもアリかも?」

「あぁ! 王立騎士団に入団が内定している先輩の話を聞きたいな!」

「卒業決起集会だな!」

「それは3年生側も面白いかもな。自分の進路を大声で宣誓するんだ。そして在校生についてこいっと檄を飛ばす。アリだな」

「3年生の皆様と触れ合えるラストチャンスですものね。貴方なら、どうする? 最後に何を話す?」


 凄いわ。いろいろな意見があちこちから出る。皆、やりたい事があるのね。素敵。専科も淑女科も騎士科も、みんな一緒のお祭りが出来るわ!



「アンネローゼ様」

「なぁに?」

「これは、実現可能なプランなのですか?」


 メルツェ様の恐る恐るといった質問に。

 今迄賑やかだった場は、暫し沈黙し、皆の視線はわたくしに注がれたわ。

 わたくしは笑顔で答える。


「学園の名誉総裁はどなたかご存知?」

「名誉総裁……申し訳ありません、どなただったか……」

「王太子殿下よ。つまりわたくしのお兄様ね。お兄様が是と言えば全て叶うわ。そしてわたくしは、お兄様が必ず是と答える切り札を持っていてよ。こう言ってはなんだけど、わたくしがこの学園で“したい”と言って叶わない事なんて、無いという事よ。ふふっ。この際、使える権力は使わせて頂くわ」


 なんだか楽しくなってきちゃったわ。

 椅子から立ち上がり、この場にいる皆をひとりひとりゆっくりと見渡す。


「わたくしが言うのですもの。叶うわ。そしてわたくしから皆様にお願いしたのは、やる気を見せて欲しい、という事よ。先程伺った意見、どれも素晴らしかったわ。領地の特産品のお披露目? わたくしも見たいわ! 独自研究の発表? こっそりやるなんてずるいじゃない! 見せびらかすべきだわ! 皆さま、日頃やっている事や、好きな事、なんでもいいわ! この際大掛かりな場を設けましょう! この学園で学んだ事を発表するのも素敵だわ! 先生方に否とは言わせません。ご領地で出荷を渋るのならわたくしの名を出しても結構よ。わたくし達学生による、学生の手で成し遂げる、学生たちのお祭り。絶対、成功させるわ!」




 この宣誓以来、忙しさは拍車をかけるように倍増したわね。

 でも言い出したのはわたくしですもの、やらない訳にはいかないわ。

 今迄使われていなかった空き教室(それがとても多いのよね。未使用な教室の多い事!)をひとつ、わたくしの私財を使って模様替えしてわたくし専用サロンに改造したわ。使うのはもっぱら放課後だから、いつの間にかそこは『黄昏のサロン』と呼ばれるようになったわ。




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