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アンネローゼ・フォン・ローリンゲン1

 

 わたくしはアンネローゼ。

 アンネローゼ・フォン・ローリンゲン。16歳。お母様譲りの赤味の強い金髪と、お父様譲りのアイスブルーの瞳。顔全体の造りはお母様に激似。可愛いっ! 美少女っ! ってよく言われるわ。

 主にお兄様とお義姉様に。


 当然、お父様がこの国の国王陛下でお母様が王妃殿下。わたくしは第一王女。

 王女はわたくし一人なせいで、両親からもお兄様からも盛大な愛を受けて育ったわ。四つ下に弟も居るの。ヨハンっていうのよ。可愛いの。

 ……と言っても最近は生意気になってきたわね。昔はわたくしの言う事はなんでも素直に信じて騙されてくれるから、からかい甲斐があって楽しかったのに。残念。


 他に家族は兄嫁のサラお義姉様とその息子たち……わたくしからみると甥っ子ね、甥っ子が2人ほどいるわ。


 わたくしはこの兄嫁……サラお義姉様が昔から大好きだった。勿論、今でも大好き。物心ついた時からお兄様と一緒にわたくしを可愛がってくださったお義姉様。お義姉様の語って下さるお話は、どれもが荒唐無稽で楽しくて、わくわくが止まらなくてもっとお話して! って何度もおねだりしたものよ。


 お義姉様は子どものわたくしを適当に扱おうなんて考える方ではなく、いつも全力でわたくしに向き合ってくれたわ。


 血の繋がらない兄嫁だと聞いた時はビックリしたくらいだもの。

 時にはお兄様を蚊帳の外にするくらい、わたくしを大切にしてくださった。

 とっても綺麗で可憐で、大好きなお義姉様。


 刺繍が苦手だと相談したら、一緒にやりましょうと隣に座ってひとつひとつ丁寧に教えて下さった。お義姉様はわたくしの出来る早さに合わせてくれて、ゆっくりとでもいい、完成する事に意義があると言ってくれたの。出来上がるとこちらが照れてしまうくらい大袈裟に褒めてくれて。


『よく出来ました』と言って頬に貰うキスは、何よりもわたくしを誇らしい妹だと語ってくれたわ。そしてわたくしに激甘のはずのお兄様が、この時ばかりはわたくしを羨ましそうに見るのがとても面白くって。お兄様は自分の妻にも激甘なの。

 わたくしに嫉妬してしまうくらいには、ね。


 今ではわたくしも普通に刺繍が出来てよ?

 あくまでも、普通に。好きでも得意でもないわ、あんなもの。


 10歳上のお兄様は、我が国の第一王子で王太子殿下。

 これが、びっくりするぐらいの超人で。


 なんでも、瞬間記憶能力、だったかしら? 一度見聞きした事を絶対忘れない人なのよね。5歳の頃には神童とか完璧有能王子とかいろーんな綽名が付いてたらしいの。


 何事もきっちり確実に熟す一方、他者にもその正確性を求め、一切の失敗を許さない厳しい人だったとか。っていうか、自分が失敗をしないから、出来ない者の気持ちが解らなかった、というのが正解かしらね。

 そのうえ12歳の頃に、この国にエネルギー革命を起こす魔石の発見・採掘に立ち会ったのだとか。そこに偶然居合わせたのか、あるのが解っていて掘り出したのかは知らないけど、途轍もない強運の持ち主であるのは間違いないって解ってくれる?


 そんな完璧で強運の持ち主のお兄様がお義姉様という婚約者と出会ってから変わったのですって。

 お母様もお義姉様もニヤニヤするばかりで詳しく教えては下さらないけれど、その頃何か大きなポカを、お兄様がしたらしくて。


 それ以来、人間らしい王子になったのだ、と聞いた時は「え? 今までは人間じゃなかったの?」と疑問に思ったものだわ。


 ちなみに、“人間らしい王子”って評したのは、お兄様の専属侍従よ。お兄様の乳兄弟って聞いたから、その分、発言も辛辣なのかも。


 その兄が十代の頃から心血注いで計画した一大プロジェクトがこの学園を含む学園都市の設立。


 今までの貴族は、各家毎に家庭教師を雇って子どもの教育を施していた。

 でも、そうすると家庭教師の質や、家門の経済状況によって教育の質に差ができてしまう。


 ここだけの話、自分の名前しか書けない、文字もろくに読めない貧乏男爵家の娘とかも居たらしいの。長男はマトモに教育を与えても、次男三男になるとおざなりになってしまうとか。


 それを憂いていた父、国王陛下に提言したのが、兄である王太子殿下。

 貴族子弟を集めて同時に同じ教育を与えよう、と。

 高度な研究をしたい者には、その場所を提供しよう、と。

 今迄各地に点在していた研究者も一か所に集めようと。

 同時に平民専用の教育機関も設立し、全ての民に教育を施そうと!

 どうせなら、国の頭脳集団が集まる学園都市を設立しようと!


 その手始めとして、まず、教会に平民専用の教育機関を併設した。教会ならば町ごとにあるし、平民も通い易い。通ってくれる子どもに食事をも与えるのだとか。


 次に、王立貴族学園を設立した。

 貴族の子弟が揃う学園に、その上の高位学問を追求する大学。


 遠方に住まう貴族子弟の為の寮、教会、それらを円滑に機能させる為の教員を含む人員確保、住居の建設、そこに住まう人々が生活する為の商業設備、などなど。


 考えたらきりが無い程、壮大な計画だとわたくしにも解るわね。


 今、わたくしが通っている王立貴族学園の建物の建設だけでも眩暈がしそうなのに。だって最新式の設備がこれでもかっ! って詰め込まれてるのよ? 上下水道もそう。空調設備もそう。遠方に領地があり、王都にタウンハウスがない貴族の子弟が住まう寮も同じように最新式だって聞いたわ。


 生憎、わたくしは王宮の王女宮から通っているけど。一度は寮内も見てみたいわね。正式に見学ってなると仰々しくなって鬱陶しいから、寮生の誰かと友だちになってこっそり侵入を試みましょう、そうしましょう。





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