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レオニーナ・フォン・シャルトッテ3(クラスメイト視点)

 

 そんな、淑女科クラスの女生徒との確執が徐々に表面化されつつあったある日の昼。

 私は数人のクラスメイトと共にカフェテリアで軽食をとりながら、経済学の講義について議論を交わしていた。勿論、その中にローゼも居た。

 そのローゼが、いきなり男子学生から糾弾された。


「お前は本当にどういう了見なんだ!?」


 ネクタイの色から2年生だろうと推測される赤毛の男子学生が、あろう事か、ローゼの目の前で彼女を指差し、怒鳴りつけたのだ!

 いきなり怒鳴られたこちらは、びっくりし過ぎて何の反応も返せない。

 呆然としている間にも、怒鳴りつけた赤毛の2年生と、彼を止めようとするピンクブロンドの髪の2年生が口論を始める。



「ケビン! やめろって! ぼく、こんな事してなんて言ってないよっ!」

「だってお前、つい昨日もすっぽかされただろう! 一言びしっと言ってやらなきゃ俺の気が済まないっ!」

「ぼくが好きでしてる事なんだから、ケビンが気にする事じゃないだろう?!」



「あ、あのピンクブロンドの髪の2年生…」


 私は彼に見覚えがあった。数日前にローゼ宛てに手紙を託した2年生だ。


「あぁ、教室で見たぞ。ローゼさまに手紙持って来てたな」

「私も見ました。」「俺も」「私も……」


 どうやらクラスメイトたちも見覚えていたらしい。


「最近じゃ、1日に何度も見かけたぞ」

「ちょっと、しつこいよな」

「廊下からこっちを伺っている姿も見かけたぞ」

「でもローゼさまに直接話しかけたりしないのよね」

「そうそう」

「上級生にこう言うのはアレだけど、ちょっと、変質者っぽいよね…」


 なんとなく、恐々とピンク頭を見る我々一年生。





「ぼくが勝手に彼女に手紙を渡していたんだ、だから……」

「だからって、ノア! お前は何時間待った? 昨日も寮に帰ってきたのは遅くなってから……夕食の時間にも間に合わなかったじゃないか! 夜間外出扱いでペナルティ食らったじゃないか! そこまでして、待つ必要なんか無い!」





「うん、これは完全に変質者」


 我々はこそこそと話しながら、共通認識を改めて確認していた。

 すると突然、私を振り返ったローゼが


「ねぇ、レオニー。先程話したケンプ教授の定説だと、やっぱり一般資本ではカバーできない面もあるのではなくて? まず資本主義の基本に立ち返るべきだと思うわ」


 と、あの赤毛の2年生に割り込まれる前まで話していた、ケンプ教授の学説について論じてきた。顔色もいつも通りだし、男子学生に怒鳴られて怯えた風もない。流石に肝が据わっているというべきか。


「え? ローゼ、いいのですか? アレは無視?」


「いいんじゃない? ふたりで痴情の縺れみたいな会話しているし……わたくしに二人の仲を裂く権利なんて無いし」


 痴情の縺れとは? と一瞬疑問に思ったが、赤毛が再度怒鳴り散らした。


「ちょっと待て! お前はこの間からふざけているのか?! 人の話を聞け!!」


 話を聞けも何も、自分たちで揉めているのだから、ローゼにどうしろというのだろう? まずは、意見を纏めてから出直して欲しいものだ。

 そう思った次の瞬間には、ローゼの盾にキャサリンさんが立った。相変わらずの鉄壁侍女っぷりだ。


「キャサリンさんが来たから、ちょっと安心ね」

「私、あの2年生からの手紙を何度かキャサリンさんに渡したわよ」

「あぁ、あの侍女が手紙回収してるの、僕も何度か見かけたなぁ」

「キャサリンさん、シュッとしてて、カッコいいんだよなぁ。俺憧れちゃう……」

「お! 年上のお姉さまが好みってか?」

「騎士科の奴らもキャサリンさんを前にすると借りてきた猫みたいに大人しくなるんだぜ? あの人、絶対侍女する前は騎士団に所属してたはずだ」

「俺は近衛の人だと推察してる。何より、あの姿勢が物語っている」

「それは……つまり……」

「つまり、ローゼさまは……」


 あとは目と目で会話した。

 我がクラスメイトはボンクラではなかったらしい。

 知っていて、だからこそ騒ぎ立てなかったのだ。なんていい奴らだ!



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