婚約破棄されましたが思わぬ結果が待っていました
短編です。主人公は直接的にはしません。
私、エミリア・カリスタがロマード帝国に来て1ヶ月になる。
『ある事情』により私は母国であるインタグラ王国を出てロマード帝国にやって来た。
近隣諸国の中では一番の大国であり文化も発展している帝国で見聞きする物は新鮮で興味深い物ばかりで私の選択は正しかった、と実感する事が出来た。
まぁ、帝国に来れたのは友人の誘いがあったからなんだけどね。
「だいぶ元気になったわね、エミリア」
「えぇ、おかげさまで。クレイル様には本当にお礼のしようがありません」
「嫌な事を忘れるには美味しい物を食べて体を動かす、それが1番よ♪」
そう言ってくれるのはインタグラ王国の第1王女で私を帝国に誘ってくれたクレイル様だ。
「何せうちの愚弟がやらかしのせいで義妹になる予定だったエミリアを傷つけてしまったのだから仕方がないわ」
そう、私が帝国にやって来た事情と言うのはクレイル様の弟で王太子であるスチュワート様との婚約が破棄されてしまったのだ。
しかも、学園の卒業記念パーティーの場でだ。
「まさか、妹のメアリーに奪われるとは思っていませんでした……」
他の令嬢は警戒していたんだけど身内に最大の敵がいたとは思っていなかった。
しかも、味方を多くつけて『嫌がらせを受けた』とか謂れの無い罪を押し付けられ一方的に断罪された。
両親は妹に激甘で『どっちみち我が家に得になるのならば私より可愛い妹の方が良い』と言う考えで私はあっさりと切り捨てられてしまった。
私が自宅の部屋に籠り泣いて過ごしていた時にクレイル様が訪ねて来て私を帝国にある別宅に連れてきたのだ。
『うちの愚弟が申し訳ない。然るべき報いを受けさせるので事が収まるまで此処にいなさい』と言われ現在に至っている。
当然だけどその間我が家の事、国の事は全く耳に入って来なかった。
まぁ、捨てられた身だし向こうは向こうでなんとかやってるんじゃないか、と思うんだけど。
「あぁ、その件だけど漸く全て解決したわ」
解決?
「解決って……、スチュワート様とメアリーの結婚が正式に決まったんですか?」
「そんな訳無いじゃない。私が認めないし全力で阻止するわ」
「それじゃあ解決って……」
「スチュワートは帝国の第1皇女のアマリア様に婿入りする事になったわ」
「へっ!?」
「スチュワートの奴、まだ正式に婚約してないのにメアリーを新しい婚約者として外交交流パーティーに連れていったらしいのよ。そのパーティーにアマリア様も参加していてスチュワートに一目惚れしたらしいわよ」
「それはまた……」
「すぐに帝国から手紙が来てね、国としては帝国との繋がりの方が大事でしょ。お父様が一方的に了承したのよ。スチュワートに伝わったのは全てが決まった後。アイツ抗議したんだけど『お前だって一方的に婚約破棄したんだ。文句を言う資格なぞ無いっ!』って一喝されて翌日には帝国に向かったわよ。今は宮廷内で教育受けてるんじゃないかしら?」
「それじゃあ実家の方は?」
「お通夜状態よ。公爵夫妻は見事に落ち込んでいるしメアリーはショックで引きこもっているし、貴族としては役に立たないわね」
そりゃそうでしょう、梯子を外された訳だし、でも私も外されたんだから同情なんかしないし良い気味だ。
「だから、暫くしたら王国に戻って来ても良いわよ。多分エミリアが跡を継ぐ事になるでしょうし」
そう言ってクレイル様はニッコリと笑った。
その笑みが逆に怖いんだけど……、多分裏で色々動いていたんじゃないか、と思うんだけど。
まぁ、私には関係無いか。
その後、私は王国に戻りカリスタ家を正式に継ぐ事になった。
もはやぬけ殻となった両親、引きこもりのメアリーには領内の田舎に行ってもらい私は女公爵として領内の発展に尽力した。
更にクレイル様の紹介で誠実な男性と出会い結婚、幸せに過ごしている。
スチュワート様は帝国でアマリア様と幸せな生活をしているかと思えばそんな事は無いらしい。
クレイル様によるとアマリア様はかなり嫉妬深い上に束縛系らしくほぼ監禁状態らしい。
結局、あの時婚約破棄されて結果的には良かったのでは、と思っている。
勿論、クレイル様のおかげなので、頭が上がらない。




