求人広告
青年は新聞を見て歓喜の声を上げた。自分の尊敬する画家が求人広告を出していたからだ。
内容は画材収集とある。高名な画家の手伝いができると思うだけで胸が熱くなった。
早速、青年は連絡を取り、画家のアトリエに赴いた。
「先生にお会いできて光栄です。」
青年は開口一番そう叫んだ。青年はとても緊張していた。目の前に、あの画家が立って居るのだから。
画家は優しい笑顔で、青年を応接室に通す。
「先生のおかげで、私も画家を志そうと決めたんです。」
青年は画家の絵について熱弁を振るう。
「家を描くのに漆喰を、果物を描くのに果汁を使うという、本来の素材を使って描く、先生の手法に衝撃を受けたんです。」
画家は嬉しそうに聞いていた。そして青年の家族について聞いた。
「家族は、私が画家を目指すことに反対していまして、もう何年も連絡を取っていません。」
青年は、家族に反対されるなら諦めろと諌められることを心配した。だから、すぐに次の言葉を重ねる。
「それでも私は先生のお役に立てるなら、何でもします。」
画家は丁寧に礼をすると、ならば君にしようと笑いながら青年にコーヒーを勧めた。
青年は嬉しくなって、コーヒーを一気に飲み干した。
「求人には、画材集めと書いてありました。何の絵を描かれるんですか?」
画家は今日一番の笑顔で答えた。
「人物画だよ。熱意のある青年の絵さ。」
青年は不意に眠気に襲われた。