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契神の神子  作者: ふひと
序章:名無しの少年
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5話:源満仲強襲

 ――源満仲……だと!


 源満仲。清和(せいわ)天皇の孫、経基(つねもと)王が長子にして多田源氏の祖。武人の中の武人。源頼光、頼政、頼朝・義経といった有名人たちの先祖。


 それが、月夜に浮かぶ青年の、少年が元いた世界におけるプロフィールである。


「初めて名前知ってる人物に遭遇したかと思ったら、いきなり敵かよ!」


「不本意ですね。私は貴方と敵対するつもりはありませんよ? 大人しく同行して下さるかもしくは」


 満仲は屈託のない笑みを浮かべ軽々しく言い放つ。


「ここで死んで下さればの話ですが」


「それは敵対だよ! 少なくとも挨拶じゃねーよ!!」


 満仲は「ふふふ、そうですか」と微笑し、少年たちを見下げている。


 ――なんだってこの世界には微笑系のキャラが多いんだ! 俺は美少女は望んだが微笑男は望んでねーぞ? まだ美少女一人しか出てきてないじゃん! てか師忠さん陽成院も神子には手を出さないって言ってたよね!? いきなり手出す気満々じゃねーか!!


意味不明な嘆きに沈む少年とは対照的に、仁王丸は静かに奥歯を嚙み締めた。


「陽成院の『影』か……!」


 満仲を睨みつけ、仁王丸がそう言う。満仲はその呼び名に「その二つ名、私はあまり好きではないんですけどねぇ」などと少々面倒そうに応えた。


「陽成院の『影』?」


「そうです。陽成院の命を受け、暗殺や工作を請け負う凄腕の契神術師。七神子の一人、『蒼天(そうてん)の神子』の従者であるという噂もありますが、素性不明の人物でした。ですが彼で間違いないかと」


 ――仰々しい二つ名……だが、やっぱり雰囲気通り強キャラっぽいぞ。どうする? 犬麻呂たちで迎え撃てるのか?


 満仲の尋常ならざる風格、そしていかにもな肩書に少年は気を弱くする。

 だが、犬麻呂、仁王丸の二人は怯まずに相対した。


「陽成院の手先、先ほどお前は神子様に手を出す旨の発言をしたな。貴様は自分の言っていることが分かっているのか? それは高階、そして皇国に対する宣戦布告だぞ!」


「なんなら今ここであの世に送ってやってもいいんだぜ? 「影」さんよぉ!!」


 だが、満仲は彼らの言葉などまともに取り合わない。


「血気盛んでよろしいこと、佐伯の遺児のお二方。10年前の氏上(うじのかみ)はなーんにも出来ずに犬死でしたが、今回は多少はあがいて見せてくださいね! そうでないとつまらない。ふふふ、あははは!!」


 満仲は嘲るような笑みを浮かべた。直後、空気が変わる。


 原因は明白、姉弟が放つ怒気だ。


「父上を、侮辱するなァ! !」


 犬麻呂が地を蹴り、風よりも速く夜空へ飛ぶ。

 そして握りなおした槍を満仲へ繰り出した。


 金属と金属がぶつかる甲高い音が月夜に響く。

 犬麻呂が繰り出した一撃は素人目に見ても初速、重量ともにかなりのものであった。

 だが、


「なるほど、これが「高階之矛」、佐伯犬麻呂の一撃ですか。悪くはない」


 満仲はこれをいとも容易く太刀で捌ききる。


「ほう? 口だけの野郎ではないみてぇだな。だがよ」


 ニヤリと微笑む犬麻呂。

 そして、満仲の後方の空間が淡く光を帯びる。


「?」


「俺たちは二人で一組、そう簡単に防げるとは思わねえことだな」


 術式の発動、満仲の背後の空間が空を割く轟音と共に爆ぜる。

 満仲は間一髪のタイミングで重心を逸らし、地上へ自ら吹き飛んだ。


「へえ。『高階之楯』、佐伯御行(さえきのみゆき)との連携攻撃ですか。これは手強い」


 目を細めて微笑む満仲。

 犬麻呂の攻撃の手は弱まらない。


 満仲の着地と同時に目にもとまらぬ速さで刺突を繰り出し、満仲は尋常ならざる反射神経でこれを避け、捌く。そこに仁王丸の援護射撃が加わり、息つく隙も与えない猛撃となる。


「すげぇ……人間の動きじゃねえぞ、あれは」


 常識を超えた犬麻呂たちの挙動に少年は息を呑む。

 犬麻呂の純粋な破壊力、正確性に加え仁王丸の撹乱、そして防御結界。

 

 息の合った連携攻撃に満仲は防戦一方だ。

 一見佐伯姉弟が押しているようにも見えるが、


「クソッ! ちょこまかとっ!!」


 満仲は人間離れした身体能力、反射神経ですべての攻撃を捌き切る。

 アリ一匹逃さないような濃密な波状攻撃が満仲には一つも当たらない。


「ならばこれでッ!!」


 犬麻呂は一度満仲から間合いを取る。

 満仲はすかさずその間を詰めようと跳躍するが、仁王丸の術式がそれを阻む。


 犬麻呂は一度槍を手放し、刀を抜いた。


――何か、来る!!


「契神:『天忍日(アメノオシヒ)』:神器「頭槌太刀(くぶつちのたち)」!」


 犬麻呂が詠唱する。


 すると、ただの刀は薄橙の光を帯び、ただならぬオーラを放った。

 術式が発動するその一振りの間だけ、どこにでもある普通の刀は本物の「神器」となる。


「うらァッ!!」


 犬麻呂が神器を振るう。

 空気が、いや空間が共鳴し、経験したことのないような不思議な感覚を少年にもたらす。


――なんだ、これは!!


 先ほどまでの彼の攻撃も常識外れではあったが、それはあくまで人が人という範囲の中でその常識を破ったに過ぎない。だが、今回のはそれとは根本的に何かが違う。


 その時初めて、少年は神の一撃を見た。


「ふふふ、いいですねぇ。そう、来なくっちゃ!」


 満仲は不敵に笑い、静かに刀を構える。


「契神:『小碓命(オウスノミコト)』:神器「草薙剣(くさなぎのつるぎ)」!」


 犬麻呂がしたのと同じように、満仲も詠唱する。

 彼の太刀は黄緑色の光を放ち、同じく神器となる。


――まさか、コイツも!?


 彼は犬麻呂の神撃を同様の技で真っ向から迎え撃った。

 斬撃と斬撃がぶつかり、空間が軋む。


 天を割く轟音が夜空に響いた。


「やったか……」


 眩い閃光、砂煙が晴れていく。

 しかし「影」はそこに落とされていた。


「ああ、貴方たちが強くて本当に良かった……」


 犬麻呂の極技をいとも簡単に相殺した満仲は、うっとりとした声でそう呟いた。

佐伯御行は仁王丸のことです。彼女は元服(裳着ではない!)してます。犬麻呂は元服前です。

でも姿格好は元服後みたいな感じです。

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