北の街にて
ちょっと話が進む様なそうでもないような
「おー、山の方は雪が積もっているにゃー」
一行は農耕地域を出て北の山脈沿いを進んでいた。
「あの辺の山は一年中積もってるんじゃなかったか?」
遠方に見える山脈の頂上付近が白く輝いている。
「雪ー?」
「あそこは素人が登れる様な山じゃ無いし、雪遊びは無理かな」
「そっかー」
「精霊使いなんだから雪ぐらいどうとでもなるんじゃないのか?」
肩に乗った蜥蜴の様な生物が尋ねる。
「氷の精霊はねー、みんな殺してしまうから、あまり遊んでくれないんだー」
「…なるほどのう」
「北方は鉱山と酪農、とかかな。私たちに関係あるとしたら肉とかチーズとか…」
「肉ーっ」
「肉にゃ」
「肉か…」
「…」
街を囲む城壁の様な大壁が見えてくる。
壁の前には1人の神官風の衣を着た男が立っている。
「宗教関係とは関わり合いになりたくなかったんだけどなー」
「教皇さまがこんなところで如何なさいました?」
わざとらしい態度で恭しく頭を下げる。
「貴様を待っていたに決まっておろう」
偉そうな態度だが、人の上に立つ者としての威厳とでも言うのだろうか、気分の悪い物では無い。
「私を? なぜです?」
「この後に及んでしらを切るか。魔法などと言う怪しげな技を広め、精霊使いなどと証する者を連れ回し、悪魔と結託、挙げ句の果てにドラゴンの幼生を手懐ける。正気とは思えんな」
確かに。言わねーけど。
「ちょっと待て、貴様こそどこの誰に吹き込まれたか聞かせてもらおうか」
「ああ、めんどくさい人がもう1人いたんだっけ」
精霊使いの少女の顔つきが変わって喋り方まで別人になっている。
「そもそも精霊はこの世界に初めから存在する者、人間が作り出した信仰系魔法の使い手が偉そうに」
「魔法では無い、神の奇跡だ」
教皇が手を振りかざすと、頭上に光の槍が何本も現れ、飛んでくる。
「あーあ、怒らせちゃった」
さほど困ってなさそうな声でぼやきつつ、いつの間にか装備した蒸気魔導器の歯車が魔法を詠唱する。
少女と蜥蜴の様な生き物を抱えてジグザグに飛行して逃げる。
ゴスロリの悪魔は上空に逃げている。
「なぜ逃げる、あの程度の小者…」
「無理なんだよね。あいつは国中の信者数億人の信仰を集めることが出来るんだ…」
「ちょこまかと。避けたところで躱せない力を受けるが良い」
教皇が両手を上げる。
「範囲攻撃だ、転移で逃げろ」
上空に飛んでいるゴスロリに指示を出す。
「この距離じゃわっち1人しか転移できない、にゃ」
「だから1人でも逃げろ」
「あとで文句言っても知らないにゃ」
ゴスロリ悪魔の周りに魔法陣が浮かぶ。
「前みたいに、この子と合体して逃げろ」
「お前はどうする」
「さて、どうするかね…」
抱えていた少女を後ろに投げる様にして放すと、教皇に向かって突入する。
「消えるが良い」
教皇を中心にドーム状の光が生まれ、広がっていった。
自分が戦闘シーンとか読むのめんどくさい人なので、何かと誤魔化しがち(オ