大魔法
そもそも並行して複数書くのが悪いんだが、間違えそうで怖い
魔物に囲まれた冒険者が見えた。
獲物の横取りと言われそうだが、正直余裕がない。水の。
一般的な蒸気騎士は水属性の魔法使いだが、彼女は火属性だった。
変に力むと火力が上がってしまってますます水が足りなくなるので注意する。
下手に調整排気なんかした日にはまた水切れになってしまう。
ソードの歯車を切り替えて刃に光を宿らせる。
「蒸気魔導器が有れば自分の属性とは違う攻撃も出来るのだから、タンクに給水するギヤが有れば良いのに」
大魔法、それは王都全域に配置された蒸気魔導器を連結することで使用可能になる超必殺技みたいな物である。
その力はドラゴンをも吹き飛ばし、空を灰色に染めた雲を引き裂き東の山脈を超えるほどの物だった。
「お前は魔法使いなんだろ、空を飛ぶとか転移とか出来んのか」
「私は炎の魔法しか使えないんだよ」
大きな鞄を抱えた女が、肩に乗せた大きな蜥蜴の様な生き物と話をしながら砂漠を歩いている。
「そもそも、力の加減というものをだな…」
「アレぐらいやらなきゃドラゴンなんて倒せないと思ったんだよ。現に倒せてないし…」
肩に乗せた蜥蜴を恨めしそうに見つめる。
「いや、私は一度死んでいるよ」
「何それ」
「私は死ぬと転生して復活するんだ」
「それは死んでないのと同じでは?」
「だが、そのおかげで呪縛から解き放たれたのも事実」
「ふーん…」
どうやらドラゴンは何者かに操られて王都を襲ったらしい。
今のこいつが信用できるかどうかは分からないが。
「力を取り戻してまた暴れようとか考えてないでしょうね」
「だったらどうするね?」
「…」
なんとなく切り捨てる気になれない、とも言いづらい。
一撃で複数の魔物が斬られていく。
斬ったと言うか、黒い粉の塊を棒で叩いたかの様に散っていく。
雑魚を一通り倒すと、人より大きな奴が出てくる。
「こいつがボスか」
なんだか楽しそうだ。
ボス魔物が叫ぶと黒い塊の様なものが無数に飛び出す。
後ろにいた冒険者が悲鳴を上げる。
盾の様な装置の裏のレバーを切り替えると、今度は盾のピストンと、それに繋がった歯車が動き出し、ボス魔物の攻撃を食い止める。防御魔法だ。
再びレバーを切り替えてソードで一閃。魔物は粉の様になって舞い散った。
「すまない。助かった」
冒険者が駆け寄る。
「いや、余計な手出しじゃなくてよかったよ」
「そんな事は」
そんな話をしつつも井戸の水を組み上げて魔導器や予備のタンクに給水する。
「魔物退治の手柄は君たちの物で良いよ」
「いや、そんな…」
「俺たちは…」
困惑する冒険者。
「その代わりと言っちゃなんだが、もう少しここに残って残党が居ないか確認してくれるかな?」
「あ、ああ。あんたが大方やっつけてくれたから、後は俺らでもなんとかなる、と思う」
「じゃあ、そう言う事で」
そう言うと装備などを収納した魔法のカバンを抱えて旅立った。
一応、大筋は考えたんだけど、旅物っぽくなってきたので、途中をどうしようか悩み中