街からの脱出
「・・・ん」
「・み・ん」
「海さ・ん」
「海さん」
「聞こえますか」
「うみさ~ん」
海は誰かに呼ばれているような気がして目を覚ました。
「う~ん、朝かぁ」
起きて辺りを見渡したが誰もいなかった。
「夢か・・・」
海は1階に降りて顔を洗い、食堂で朝食をいただいた。
食事の後、宿の人に市場の場所を聞いて、市場に向かった。
市場は人も物も多く、活気があり、海自身も楽しい気分になりながら
欲しいものを探してまわった。
「生きていくには食事は大事だな、自炊することも考えて調味料を探そう、
あとは野菜と防具、これだけ買えればいいかな。」
市場を散策し、塩、砂糖、胡椒を見つけたが、砂糖と胡椒は高かったので断念した。
海は野菜と塩を購入した後、防具屋を見つけて入っていった。
「こんにちは」
「ん、いらっしゃい、坊主、何の用事だい?」
声のした方に顔を向けると、そこには背の低い髭をはやしたおじさんがいた。
(ドワーフかな・・)
「あの、僕の体形にあった防具が欲しいのですが・・・
予算は銀貨2枚ぐらいで・・・・・・・・」
「それなら鉄の胸当てとレッグアーマーになるが良いか?
値段は胸当ては銀貨1枚と銅貨20枚、レッグアーマーは銅貨50枚で
合計銀貨1枚と銅貨70枚だ」
「はい、お願いします。」
「すぐに装備するかい、それならここであわせてやるよ」
海はお言葉に甘えてここで装備し、あわせてもらった。
防具屋をでてから、市場を散策しながら歩いていると
防具に身を包んだ兵士が2人、海を見つけるとこちらに向かってきた。
「おい、お前は昨日、宿屋のあたりで喧嘩していただろう。
ちょっと来てもらおうか」
「え、喧嘩というか・・突然絡まれたのですが・・・・」
「嘘を言うな!!
お前が殴ってきたと訴えがでている。
怪我人もいるし、証人もいるのだ、黙って付いて来い。」
有無を言わさず引っ張っていこうとするので
抵抗していると、兵士がどんどん集まってきて、海を捕らえた。
その兵士の向こう側に昨日のチンピラがニヤニヤしながら
海をみていた。
なんでこうなるんだろう・・・
海は項を垂れながらため息をついた。
「お前も運がないな、オニキス様達と喧嘩するなんて・・・」
兵士の一人が小声で教えてくれた。
「オニキス?」
「ああ、ここの領主様のご子息だ」
「金を巻き上げにきたチンピラだったんですけど・・」
「仕方ない。誰も逆らえないんだ」
「僕はどうなるのですか?」
「たぶん、死罪にはならないと思う。
ただ、借金奴隷になって鉱山送りだな、すまんなにいちゃん」
え・・・・・・・・・・・・理不尽だ・・・・・
理不尽だ・・・・・
こんなの・・・・・認められる訳がない!!!
海は怒りに震えた。
訳もわからずこの世界に連れて来られて、喧嘩を吹っ掛けられて
捕まって、奴隷になるなど。
怒りと同時に勝手に魔力が溢れて体を包んだ。
ブチッ!
海は繋がれていたロープを力づくで引き千切った。
海は自由になり、体中の魔力を纏い一気に開放した。
すると、あたり一面に突風が吹き、周りにいた兵士達が吹き飛ばされていく。
吹き飛ばされた兵士達の向こう側に昨日のチンピラ達が見えた。
何が起こったか分からず、ただ、茫然として突っ立っていた。
「見つけたぁ!!!」
「ひぃぃぃい!」
チンピラ達は奇声を挙げるがもう、遅い。
海はチンピラ達に一直線に走り出し
そのままの勢いでラリアートをかました。
「ぎゃぁぁぁー!!!」
チンピラ達はボウリングのピンのように弾けて
飛んで行った。
魔力が収まると同時に海は冷静になり、あわてて街の門に向かって逃走を始める。
幸い、暴れた場所が門に近かったので、門を駆け抜ける事に成功し
そのままの勢いで森に向かって走りだした。
不定期投稿ですがよろしくお願いします。
温かい目で見て頂ければ幸いです。