海の帰還
海が連れていかれた後、集落に戻っても何もする気が起きず、
只、海が返って来る事だけを願っていた。
そうして時間だけが過ぎて行き、
部屋に籠っていたはずのミウも何処かへ行ってしまった。
出来るなら、ダイゼンの街に行って
海を連れ戻したいと思うけど、勇気がでない。
「私にもっと力があれば・・・・・」
自分の力の無さ、勇気の無さに歯痒く思った。
私だけではなく、ここに居る皆が海の事を心配しながらも
海が、帰って来た時の為に、一生懸命働いているのに
リリは、何も出来ずに落ち込んでしまった。
今日も1日が始まり、集落は暗い雰囲気だが、皆、働いていた。
だが、今日もリリは働く気力もなく、壁に登り、魔物の森を見ていた。
リリの見つめる先に、フワフワと浮かぶ物が目に入った。
浮かぶ物は、集落に近づいてきた。
リリは、浮かぶ物がミウだと分かった。
もう一度、良く見ると、ミウが抱いていたのは海だった。
思わず、外壁から飛び降りそうになったが、慌てて門に向かった。
「みんな!海がかえってきたよーーーーー!」
リリが、大きな声で叫ぶと、仕事をしていた皆が門に集まって来た。
門にたどり着くと、ミウが、迎えに行ってきたよ、と笑顔で答えた。
皆、海の帰還を喜んだが、よく見ると海は、ガリガリに痩せ細っていた。
「海・・・・」
リリは泣きそうになった。
やはり、迎えに行けば良かったと、心の底から思った。
何故、海がこんな目に合わなければならないのかと
思えば思う程に、悔しくて涙が溢れて来た。
そんなリリを見て海が言った。
「リリ、ただいま。 大丈夫だから、泣かないで」
「うみぃぃぃぃ」
リリはミウに抱えられたままの海に抱き着いた。
ミウは、海からリリを離し、部屋のベットに運んだ。
ミウはリリ、リーフ、シルビア、シンギ、セントを呼び、
海の状況と何があったかを説明した。
海の看病には、シルビアとメイドが中心に行う事が決まった。
リリは参加したがったが、ミウが役割があるからと説得した。
数日が経ち、海も全快した。
「皆、心配かけて、ごめんなさい」
「海よ、元気になってなによりじゃ」
「海、よかったね」
「うん、ありがとう」
集落は普段通りに戻った。
そして、その日の夜。
「海さん」
「海さん」
「うみさーーん」
「起きました!」
「うっ起きてしまいましたか・・・・」
「何故、残念そうなのですか?」
「いえいえ、そのようなことは、ありませんよ」
「すいません、まだ港には行っていないのですが」
「分かっています」
「今日は、お見舞いでお祝いです」
「え?」
「はい、お見舞いに来ようとしたら、全快したので、お祝いです」
「ああ、有り難うございます」
「はい、では頑張って下さい」
「はい・・・・」
アミは去っていった。
「本当にお見舞いだったんだ・・・・」
海は再び、夢の中で眠りについた。
朝、海は目を覚まし、朝食を摂ってから集落を見て回った。
最近は、山羊のミルクやコッケイの卵が集落の牧場で手に入るから
食事のメニューが増えた。
野菜も自家栽培で半分以上は賄える。
それでも、まだ土地はある。
ここは魔物の森で殆ど人の来ない場所だから、もう少し広げても大丈夫だと思う。
場所を広げたら葡萄園を造り、酒を造って、街に売りに行けるようにしたい。
収入源を増やさないとやはり困ることが出てくると思うから。
そんな事を考えながら歩いていると、リーフに出会った。
リーフに必要な物は無いか尋ねたら、個人で欲しい物があるらしい。
分かったと返事をし、リーフとは一旦別れ、シルビア達の所へ行って聞いてみた。
エルフ達の意見をシルビアにも伝えて
返事を待つと、市場に行って色々見たいそうだ。
ならば、皆で行こうと思い、行ける人を募集したら、ほぼ、全員だった。
残った人にも欲しい物を聞いてから、街に出かけた。
子供達は、シンギの馬車に乗せて、足の速い人は、走る事で時間の短縮を図り、
買い物に費やす時間を増やした。
前回と違い、移動の時間を短縮した為に、ベイゼの街に早く着いた。
門で、皆のお金を払い、1人金貨1枚を渡し、グループで見て回るようにお願いした。
海は、1人で奴隷商を訪ねた。
「こんにちわ、ムサンさんいますか?」
「おう、ちょっと待ってくれ」
声が帰って来たがムサンさんでは、なさそうだった。
「待たせたな。旦那は今は留守だ。
伝言、伝えておくぜ」
「そうですか、では、海が来たと伝えてください。
それから、エルフの奴隷はいますか?」
「エルフは居ない」
「分かりました。失礼します」
海は、ムサンさんには、会えなかった。
海は、市場に戻り、屋台の出来上がった食べ物を
アイテムボックスに収納していった。
市場を回っていると、皆がそれぞれに買い物をしている姿を見て、
集落をもっと発展したいと思った。
帰るときになり、全員いるのか確認していると
1人多かった。
ティムが、同じ猫人族の女の子と手を繋いでいた。
ティムの面倒を見ているキュリがあたふたして、
周りに猫人族がいないか探していた。
海は、猫人族の女の子をよく見ると、服はボロボロで
髪も肌も汚れきっていた。
海は、女の子に聞いてみた。
「こんにちわ」
女の子はジッと海を見ている。
「こんにちわ」
女の子は頷いた。
「お父さんとお母さんは?」
「いない」
「おうち何処?」
「・・・・・・・」
女の子は海を見ているだけだった。
仕方なく、海は、女の子を連れて市場を回り、
屋台の人達にも聞いて回った。
すると、女の子はいつからかここに居ついている孤児だった。
皆の所へ戻り、そのことを説明した。
その間も女の子は、ティムの手を握っていた。
「う~ん、どうしよう・・・」
「連れてかえれば」
「それしかないかなぁ」
「キュリ、もう1人、増えてもいい?」
「構いませんよ」
「ありがとう。
それなら、帰ったらキュリの住んでいる所を広げよう」
「いいのですか」
「うん、これからは2人の面倒みてね。
それと、これで彼女の服とか買って来て」
「はい!では急いで行ってきます」
「待って!私も行く」
キュリとリリは女の子の物を買いに行った。
その後、2人が戻って来たので集落に帰った。
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