脱走と追跡
~王都~
「神父様、聖女様が見当たりません」
「探すのです。このままでは私が教会長様よりお叱りを受けることになる」
「はい、ですが・・・・見習い聖女どもに聞いても
皆、知らないとのことで・・・・・・」
「ドルクよ、あなたは神父見習いのままで良いのですか?
まあ、聖女が見つからなければあなたの今後は無いでしょうが・・」
「か、必ず探し出し、神父様の前に連れて来ます」
「解っているのならば良いのです。あなたは、私が目をかけて育てて来た1人です。
簡単に捨てる気はありません。
こちらも他の手を打つことにします。ドルクは他の者たちを使い
もっとしっかり探させるのです。」
「はい、わかりました」
神父との会話を終え、ドルクは去っていった。
神父は教会内にある騎士団長室に向かった。
「コンコン」
「空いていますよ」
抑揚のない声で返事が返ってきた。
「騎士団長、お久しぶりのです。少し、お邪魔してもいいですか」
「ああ、神父様、お久しぶりです。
あなたがここに来るなど珍しいことですね」
「はい、あなたに頼み事がありまして」
「いいですよ、最近、邪教への天誅を与える仕事もありませんし・・・」
「ありがとう、実は聖女が逃亡を計って行方不明になりました」
「そうですか。それでその者は殺していいのですか?」
「普段ならそれで良いのですが、何分、グスタフ様が大層気に入っておりまして」
「お気に入りですか」
「はい・・・こんな事ならさっさと売ってしまえばよかった」
「神父様も大変ですね。
いいでしょう、私共も手を貸しましょう。」
「助かります」
神父は騎士団長に挨拶をして部屋から出ていった。
1人残った騎士団長はベルを鳴らし、
やって来た団員に聖女の捕獲を命令した。
教会、神殿騎士団に追われることになった聖女は世話係のセントと共に
王都を離れ、森の中を進んでいた。
「聖女様、このような道でしか進めません」
「わかっています、街道は追手が来るかもしれませんから
仕方ありません」
「それでどちらを目指すのですか?」
「ダイゼンの教会を訪ねようと思います。
あそこの神父様なら手を貸して頂けるかもしれませんから」
「わかりました、私の命に代えてもお連れ致します」
「セント、あなたには申し訳ないと思っています。
私が大人しく貴族に売られていれば・・・・・」
「聖女様、もう、限界だったのです。私は多くの聖女様を見てきました。
21歳になれば否応なしに売られ、弄ばれた挙句に最後は
死ぬか奴隷になるしかないなんて、教会の行いとは思えません」
「セント・・・」
「私の事は良いのです。聖女様、先を急ぎましょう」
不定期投稿ですがよろしくお願いします。
温かい目で見て頂ければ幸いです。