6話 ギルドへ
三人で朝食を終え、瞬間移動でラズール近くの森へと向かう。
「アルム、あなたいい物貰ったわね」
「ああ、この腕輪か? これにはどんな効果があるんだ?」
さっそく腕に装着してみたが、今の所変化はみられない。
「それは魔王であるスロネの魔力が、幾重にも編み込まれてる防御結界ね。なみ大抵の攻撃じゃビクともしないわよ。弱いあなたにはピッタリね!」
「へぇ、そいつはいい物を貰ったな。ありがとよスロネ」
「ん、クレープのお礼」
でた。クレープ最強説。
「じゃ、行くわよ! アルムこっち来なさい」
「はいよ」
瞬間移動するため、セルティアの方へ行こうとして。
「ん? どうしたスロネ?」
スロネに服の端を掴まれて、立ち止まる。
「私が連れてってあげる」
まぁ、俺はどっちでもいいんだが。
「じゃ頼むぜ」
「…………なにやってるの?」
スロネが不思議そうに俺を見下ろしてる。
「へ? だって、瞬間移動は途中で振り落とされたら危ないから、ガッチリ掴んでないと駄目なんだろ?」
俺はいつもセルティアにしてるように、スロネに抱きついていた。
「瞬間移動の途中で振り落とされる事なんかない。多分セルティアの嘘」
マジか……下らねー嘘つくなや、足臭女がっ!!
「……セルティア、後で話がある」
「あら? 残念だけど、私にはないわ! さ、行きましょ!」
この女……
セルティアは先に行ってしまった。
「じゃ俺達も行こうぜ」
抱きつかなくていいとわかったので、手を離し立ち上がろうとして。
「ん、このままで構わない」
優しい光に包まれ、森に移動した。
あれ? 全然気持ち悪くなんねぇな……
「なぁ、セルティア? スロネの瞬間移動だと全然気持ち悪くならねぇんだけど、どういう事だ?」
「セルティアの魔法は、乱暴過ぎる」
「俺の魔力が弱いからじゃないのか?」
「それは関係ない。セルティアは嘘つき」
このアマ……
俺はセルティアを睨む。
「な、何よその目は? 瞬間移動は成功してるんだし、いいじゃない」
「はぁ……これからはスロネにお願いしたいぜ」
「ん、任せて」
「ちょっと、あなたの雇い主は私なんだからね?」
「はいはい」
俺達はラズールのギルドへと向かった。
別にギルドに行かなくても、勝手に魔物を討伐すればいいんだが、それだとお金が貰えなくなるからな。
貰えるものは貰っといたほうがいい。
「へぇ~、結構大きいのね」
「ああ、ラズールのギルドは、他の国に比べてもかなり大きいらしいぜ」
俺が先頭で入り、後ろを二人がついてくる。
まさかこの二人が魔王なんて、誰も思わねーだろうな……
「新規で冒険者登録したいんだが?」
せっかくなので、こいつらの冒険者カードも作っておく事にした。
俺が持ってるから必要ないっちゃないんだが、どうしても欲しいらしい。
「はい、新規ですね…………って、アルムじゃない? 最近見ないから心配してたのよ? ちゃんと食べてる?」
「久しぶりだな、レナ」
こいつは、受付嬢のレナ。
俺が初めてギルドに来たときに、色々親身になって教えてくれたいい奴だ。
「まったく、心配するからせめて三日に一回くらいは顔をみせなさいね」
結構な頻度だな。
「善処する……で、新規登録なんだが?」
「約束よ? 後ろの二人でいいのよね? じゃ、ここに名前を記入してね。それが終わったら、魔力測定があるから」
二人が名前を記入する。
そういえば、こいつら字書けんのか?
ま、何百年も生きてるんだし大丈夫か。
「ちょっとアルム、誰よあの綺麗な娘達?」
小声でレナが話しかけてきた。
「偶々知り合ったんだ、今日は一緒に魔物の討伐に向かおうと思ってる」
「もう、アルムも隅に置けないわね。このこの」
「そういうんじゃねーって」
「でも、ようやく仲間が見つかったのね。お姉さん安心したわ」
仲間か…………ただ雇われてるだけなんだがな。
「書けたわ」
「ん」
「はい。え~と、スロネさんにセルティアさんね。じゃ、次はこの水晶に魔力を込めてみて」
二人の前に、水晶が一つずつ置かれる。
この新規登録の時に、魔力が高かったりすると、上のランクからスタートできたりするのだ。
この世界において、魔力とは実力に直結する大事な要素だ。
俺は測定の時に、あまりに魔力が弱くて、周りに笑われたっけな……
もちろん、魔王のこいつらが本気で魔力を込めたら、大変な事になるのはわかってるので、注意してある。
「キャアッッ!!」
レナの叫び声が聞こえたので視線を向けると、魔力水晶が二つとも粉々になっていた。
「…………」
こいつら…………あれほど言ったのに…………
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