表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/27

23話 罪

 


「アルム、早く」


 スロネが戻ってきた翌日、朝のデザートにクレープを作ってやろうと思ったが、材料が切れていた。

 どうしても二人が食べたいと言うので、『第4魔界』に行く前に王都ラズールに買いに行く事に。


「そんな急かすなよスロネ。それにクレープは昨日作ってやったろ?」


「ん、一週間も腕輪に魔力を籠めてたから、アルムのクレープ成分が不足中」


「そんなに食べたいなら、先に屋台で買ってくか?」


「いい。アルムのが食べたいから」


「わかったよ。じゃさっさと材料買って戻ろうぜ」


 スロネの肩を掴み、瞬間移動で王都付近に到着。


「もう、瞬間移動の時は私が連れてくって言ってるのに!」


 セルティアが不満そうな顔で、不貞腐れてる。


「やだよ、お前と瞬間移動すると気持ち悪くなるって言ってるだろ? 少しはスロネを見習えや」


「生意気ね! 雇い主に対してなんたる口の聞き方かしら。今夜はお仕置きね」


 この会話も何度目だろうか。

 こいつのお仕置きってのは、だいたい足を舐めさせようとしてくる事だが、生意気な口を聞こうが聞くまいが、どうせ毎日舐めさせようとしてくるんだよな。


「ん、アルム早く」


 スロネに手を引かれ、ラズールに入る。


 今回は買い物のついでに、ギルドにも寄ろうと思ってる。


 最後にギルドに来てから結構経ってるから、レナに顔を見せないと心配するだろうしな。

 ついでに、この前測れなかったセルティアとスロネの魔力を調べないと、いつまでも仮登録カードのままだからな。

 もちろんセルティア達には、この前みたいに水晶を割らないように加減させる。










「おぉ、もうすっかり元通りだな」


 買い物を終えてギルドに向かう途中、この前のサイクロプスが暴れていた付近を通ったんだが、破損した家や地面などはすでに復旧が完了していた。


「そうね。けどここを通ると、あの勇者を思いだしてムカムカするわね」


「ん、セルティアの言うとおり」


 俺の一件もあると思うが、魔王と勇者だ。

 どっちみち、仲良くなんてのはあり得ないだろう。


「もう終わった事だ、さっさとギルドで魔力を測って帰ろうぜ」






 ギルドの扉を開け、レナを探し声をかける。


「レナ、こいつらの魔力測定を済ませたいんだが」


「……アルム!?」


 いつもと同じく、笑顔で対応してくれると思ってたが、何だか様子がおかしい。

 俺の顔を見て、驚いてるようだった。

 それに、周囲も少しざわついてるような気が。


「どうした? 俺の顔に何か付いてるか?」


「アルム、あなた何しでかしたのよ!? 『聖剣教会』があなたを探し回ってるわよ?」


 マジか…………間違いなく聖剣と勇者の事だろうな……


 だが、先に仕掛けてきたのはあいつらだ。

 こちらは身を守る為に戦っただけだ。

 スロネがやり過ぎた感はあるが、俺達は悪くない。


「ここにも毎日のように来てるのよ!? 魔力測定なんていいから、今日は帰りなさい」


 俺の身を案じてくれるレナの言葉に素直に従って、今日は帰るしか無さそうだな。

 またほとぼりが冷めた頃に来よう。


「ありがとな、レナ」


 レナにお礼を言って出口に引き返そうとした時だった。


 ドアが乱暴に勢いよく開けられ、複数の人間がギルドへと入ってきた。

 武装した兵が数十人、その後ろには偉そうなオッサンが。


「アルムというのはお前で間違いないな?」


「ああ、そうだが。そんなに兵を連れてどうしたんだ?」


 高圧的なオッサンの物言いにムカついたので、こちらも似た感じで返す。


「貴様には、勇者殺害未遂の罪状が出ている。このまま黙って連行されろ」


 はぁ? 勇者殺害未遂だって? どこまでもふざけてやがる。

 腕が折れはしたが、死ぬような怪我ではないはずだ。


「それは断る。先に聖剣を向けてきたのはあっちが先だ。こちらは身を守る為に戦っただけだ」


「今はそんな事聞いていない。いいから黙って、剣を床に捨ててこちらにくるんだ。話なら聖剣教会で聞いてやる」


 なんだこいつ、なんて横柄な態度なんだ。

 ここでこいつの言うとおりついていっても、ついていった先で話を聞いて貰えるとは思えない。


「断ったらどうなるんだ?」


 オッサンは呆れたような溜め息をついた後で、兵士たちに告げた。


「少し痛い目を見せてやれ。殺さなければどんな状態でもかまわん」


 兵士全員が、一斉に剣を俺に向けた。


 俺ももう少し話せそうな奴なら従ってもよかったんだが、こいつのように最初から俺を罪人扱いしてるやつの言うことは聞けない。


 だが、どうするのが正解なんだ? ここで兵達を斬れば、こいつらはその罪を更に問うだろう。

 かといって、黙ってついていけば死罪になりかねない。

 いっそ、聖剣教会本部に乗り込んで、一番偉い奴に事情を説明するか?

 いや駄目だ、そいつが俺の話を信じるって保証もない。


 あ~っ、もう!! マジで面倒くせぇっ!




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新首を長くして待っていました。 お忙しいとは思いますが、これからも頑張ってください。
[一言] 久しぶりの更新嬉しいわ 魔王と仲良くするなら人間との生活捨てるしかないわな
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ