表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/27

20話 励まし

 


「それにしてもムカつく奴だったわね! 何が勇者よ」


「ん! セルティアが止めなかったら、殺してた」


 瞬間移動で城に戻ってきて、いきなり勇者の悪口を言い始める二人。


 本当は『第4魔界』に行く予定だったんだが、スロネに貰った防御結界の腕輪が壊れてしまったので、今日は諦めて城へと戻ってきた。

 あれがなければ、人体に有害な魔界の霧は防げない。

 勇者に防御結界を破壊された時は気付かなかったが、腕輪には大きな亀裂が入っていた。


「それにアルム、元婚約者ってどういう事よ? 私は聞いてないんだけど?」


 セルティアが少しだけ不機嫌そうに、俺を見てくる。


「どういう事って言われてもな……言葉通りの意味だが」


 そういえば、こいつには話してなかったな。


「まぁ簡単に説明すると、俺はあの勇者に婚約者を奪われて、フラれたってわけだ。お前に斬りかかったのは、勇者よりも早く魔王を倒してやろうっていう、俺のくだらない対抗心みたいなもんだったんだよ」


 別に話す必要はないが、それじゃセルティアが納得しなそうだったので、軽く話しておく事にした。


「ま、結局は俺にそんな力あるわけもなく、お前にあっさりと負けたけどな」


 話しながら自笑する。

 負けたとか以前に、勝負になってなかったか。

 俺はセルティアに斬りかかって、剣が折れただけだ。

 セルティア自身は何もしていない。


「あなたはまだ、その元婚約者が好きなの?」


「いや、もう何とも思ってないさ」


 今まで俺は、自分の気持ちがわからなくなってた。

 口ではサリエルを悪く言っていても、実際に会ったらどうなるか、自分でも想像できなかった。

 でも今日、サリエルを実際に見て、思ったより何も感じなかった。

 強がりとかではなく、本当にどうでもいいと思った。

 勇者を好きになったのなら、仲良くやればいいと。


「そう、ならいいわ。でも辛かったら言うのよ? 私はあなたの雇い主なんだから。ちょっとくらいは優しくなるかもよ?」


 セルティアなりに励ましてくれてるのか、いつもの様なふざけた感じはしなかった。


「ありがとよ。でも本当に大丈夫だ。もう吹っ切れた」




「……アルム、しゃがんで」


 スロネが服の裾を引っ張ってきたので、言うとおりにしゃがむと。


「…………急にどうしたんだ、スロネ?」


 スロネは小さな体で、俺の顔をぎゅっと抱き締めてきた。


「ん、裏切られる気持ちは、痛いほどにわかる…………だから」


 俺に昔の自分を重ねたのか、腕にはいつもより力がこもってる気がした。

 親に捨てられたスロネと、婚約者に捨てられた俺とじゃ、重みが違うとは思うが。

 まぁ、捨てられるのはツラいよな。


「……!」


「ありがとな、スロネ」


 俺もスロネの小さな体に手を回し、ぎゅっと抱き締めた。











「で? これからどうするんだ?」


 少し湿っぽい雰囲気になってしまったが、もう終わった事だ。

 気持ちを切り替えて、今後の話をする。


「ん~、そうねぇ。腕輪が壊れちゃったから『第4魔界』は暫くいけないし。…………スロネ、腕輪はどのくらいで直りそう?」


「ん、魔界の霧を防ぐだけなら、すぐにでも治る」


 そんな簡単に直るのか、良かった。

 せっかくスロネに貰ったのに、速攻で壊しちまったから、申し訳ない気持ちでいっぱいだったんだよな。


「でも、次は絶対壊れないのを作るから、少し時間が必要」


「どれくらいかかりそう?」


「ん、一週間くらい」


「わかったわ。それじゃ、一週間後にまた魔界に出発ね」


「ん。アルム、腕輪貸して」


「はいよ、悪かったな、壊しちまって」


 スロネに、亀裂の入ってしまった腕輪を手渡す。


「気にしてない。悪いのは全部勇者」


 勇者か……今頃聖剣が折れた事にたいして、『聖剣教会』が大騒ぎしてるだろうな。

 俺の知った事じゃねーがな。

 そもそも、一般人にたいして聖剣を向ける事は禁止されてる筈だが…………

 それも含めて、あいつには重い罰が下るといいな。


「じゃ、完成したら持ってくる」


 腕輪を受け取ってすぐ、スロネは瞬間移動で帰っていった。


「俺達はどうする?」


「スロネが戻るまでは、のんびり過ごしましょう。特にする事もないし」


 のんびりか…………とりあえず、洗濯物でも片付けるか。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。
[一言] 更新ありがとございます
[良い点] 作者様が生存してた点。 魔王2人が良い味出してる。 足が臭いところ…を惜しげもなく突きだすところ [気になる点] 突然更新が途切れたので…タヒんだのかと思いました。 [一言] 更新い…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ