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DHUROLL  作者: 寿司川 荻丸
【起】
17/144

16話ー行く末にあるものはー

 4組がそれぞれの場所で東京チームエル・ソルの奪回に挑み、内2組は成功。


 残りの2組と鬼神の動向は如何に。


ー愛媛県 シーン"藤長"ー


 天狗デュロルに間違った正義を叩き込まれ、皆意気消沈していた。


「みんな落ち込むな!そんで、お前は誤解してる!」


 落ち込んでいた皆は俺を見る。


「誤解などしていない!!あのお方が全てだ!」


 天狗デュロルは怒鳴り声を上げ、団扇を大きく振った。団扇によって作り出された風圧は俺らをいとも容易く吹き飛ばした。


 チームルナを助けてるセロリちゃんの元へすのちゃんが飛ばされる。すのちゃんを受け止めたセロリちゃんは、2人とも倒れ込んだ。


 その2人に向かって天狗デュロルは走り出す。それを予測し、俺も走り出した。


「借りるぞ!」


 地面に転がる刀を拾い上げ、天狗デュロルの前へ出る。


 追いついた天狗デュロルは、団扇の(へり)を縦に振り下ろす。


 刀と団扇がぶつかり合う音が辺りに響いた。


「二刀流だと!?」


 2本の刀を交差し、団扇を挟むように受け止めた。その瞬間、衝撃が全身に伝わる。エキポナになって初めて苦しいと感じた。腕にのしかかる重圧がそれを物語っていた。


 天狗デュロルは容易く団扇を操っているが、かなりの重さで、チームフエゴの大槌より若干重いぐらいだろうか。


「カマキリくんありがとう!」


 俺の後ろから聞こえたセロリちゃんの声が、俺により一層火をつける。


「今までの奴らより骨がある。少しは楽しめそうだ」


 俺は団扇を押し返す。


「今までの奴ら!?」


「デュロルの人種が、エキポナに殺されてきた今までの仕返しをしている。お前も対象だ」


「その情報、いつから聞かされてる!」


「自分がデュロルになった瞬間からだ」


 行き場のない怒りは刀を握りしめる他なかった。


 子供にテキトーな情報叩き込んで、それ以外の情報を与えずに染み込ませていくのか。


「教えてやるよ天狗!俺らエキポナはデュロルを片っ端から殺してるわけじゃねえ!デュロルになって悪意を持って人を殺すような奴を犯罪者として罰してるだけだ!!」


「何て嘘を!!矛盾している!」


「これが真実なんだよ!!不本意にデュロルになって、人間の捕食がやむ得ないデュロルは全員保護してんだ!!それには証拠がある!騙されるな!!」


「騙される……。あのお方を悪く言うな、許さない、あのお方をぉ」


 天狗デュロルは片手を額に当てる。しばらく黙った後、手を下ろした。


「確かにあのお方の言葉に確証はない。だが、自分自身それを信じ今日まで生きてきた。支配が終わるまで、意見は変えない」


 天狗デュロルは団扇を俺に向ける。


「お主が我らを保護するのであれば、我は納得いかぬ故に、尋常に勝負といこう。1対1でだ。お主を倒し我は仕返しを続ける」


「1対1だって!?カマキリくん危ないよ!」


 瀬川ちゃんが心配そうに叫ぶ。


「そげんたい!うちらも戦う!」


 すのちゃんも叫び、それに頷くセロリちゃん。


「男の勝負だ。喧嘩を買うからには必ず勝つ。だから、最後まで見届けてほしい」


 何か言いたそうなのは伝わった。でもごめん。俺の男としてのプライドなんだ。


 少しの時間、静寂が訪れ、小川の流れる音が目立った。


 天狗デュロルは俺に一礼する。それに合わせ俺も一礼した。


 一礼を終えたと同時にお互い構える。先に動き出す天狗デュロル。団扇の(へり)の部分を刃物のように振る。右から左に振り、振り切ると逆に振る。空を切る音が分厚く、あの重さの団扇を軽く振ることから、並みのデュロルには無い筋力を持つことが分かる。


 団扇を振る時に力む声が天狗そのものと感じさせた。


 隙を見て足元に斬りかかろうとするが、上半身に装甲があまり無いかわりに、下半身の装甲は分厚いのだろう、両手に持った刀は見事に弾かれてしまう。


 天狗デュロルは回転し、その勢いで団扇を振る。そこから作られる風圧が四方に飛ばされる。


 木々が揺れ、木漏れ日がチラつく。チョロチョロとした小川の音。小川に足首だけ浸かり、歩いて向かってくる天狗デュロルに、恐怖さえ覚えた。


 天狗は倒れた俺に容赦なく団扇を振り下ろす。


 (へり)を叩きつけたり、持ち替えて風圧を出したりなどをして交互に攻撃される。


 天狗は疲れる様子を見せずに、風圧で飛ばされた俺の場所まで飛びかかってくる。


 縁を向け、思い切り振る団扇を刀で受け止めるが、重さで体が押され、ガラ空きになった腹部を蹴り飛ばされる。団扇と足技のコンビネーションに圧倒される。


「カマキリくん!!」


「陸くん死なんでよ!」


 聞こえてくる瀬川ちゃんの声、涙ぐむすのちゃんの声。


 ここで俺が負けたら、あの子達が危ない。女の子を守るのが男の仕事だろうが。動きを見ろ、踏み込む瞬間どう動くのかくらい考えられんだろ。千歳みてえに、瞬間的に考えられるようにならなくちゃいけねえんだ。



 もう目の前で失いたくねえんだよ!!



 両手でしっかりと刀を握りしめる。


 向かってくる天狗に立ち向かうように刀を構える。


 向かってくる天狗が視界から外れる。


 ぐっ!


 腹部に衝撃が走る。天狗の足が腹部に入り込み、蹴りあげられる。宙に浮き、落ちてくるところを縁で叩き飛ばされた。


 林の小さな木を、背中でぶつかりながら何本か折り、勢いは止まった。


 起き上がろうとするが、腹部にあり得ないほどの痛みを感じて、うまく力が入らない。腹部を抑えていた手を見ると、出血していた。


「焦るな俺。相手のペースにのみ込まれたら終わりだ」


 痛みに耐えながらも立ち上がる。天狗は先まで交戦していたひらけた場所で、吹き飛んだ俺が戻るのを待つかのように仁王立ちしていた。


 天狗は団扇を横に振った後に回し蹴りをする癖がある。だったら、団扇を横に振れないようにしてみるか。


 俺がひらけた場所まで戻ると天狗は向かってきた。向かってきたのを確認し、先程より重心を低くし、ほぼしゃがんだような体勢をとる。


 天狗は予想通り縁を使い、縦に振ってきた。


 思った通りだ!


 だが、天狗は縦に振り降ろした団扇を軸に飛び上がり、空中で団扇を下に向け振るう。


 風圧で地面にひれ伏した俺の上に、天狗は両足で着地する。


 天狗は俺の上に乗りながら団扇を振り上げ、縁先を下に向ける。


「カマキリくん!!」「陸くん危ない!!」


「ふん!!」天狗は縁先を地面に突き刺すように、勢い良く下ろす。


「ぐああああぁあぁぁあぁ!!!」


 団扇の縁先は俺の背中を貫いた。


「カマキリくん!」瀬川ちゃんは飛び出し、俺を助けようと動いてくれた。


「ありがとう!!でも、来ないでくれ!!」


 瀬川ちゃんに続き、セロリちゃんとすのちゃんも動きを止める。


 天狗も驚いたように動きを止める。


「みんなありがとう……。これは、男の、闘いなんだ。て、手は出さないでほしい……」


「で、でも……」瀬川ちゃんは動揺したように言う。


「まったく、男ってバカね」と、すのちゃんは理解したように後ろに下がる。


 それを見た2人も後ろに下がった。


 みんなに心配させてしまった。このままじゃ千歳みたいに”俺に任せろ!”って言えねえよ。


 みんなが見てる。みんなに迷惑はかけられねえ。ここで、俺が……!


 天狗は突き刺してある団扇をグリッと捻る。激痛が背中を通じて全身に巡る。


「ここで、俺が!諦めてられるか!!」


 右手に握る刀を握りしめ、激痛に耐えながら上半身をひねり、なんとか顔を天狗に向けた。


 装甲は鎧のようなもの。鎧は体を守るために硬く作られている。それを身につけ、動き回るためには、関節部分を柔らかく、もしくは隙間をつくる必要がある。デュロルの装甲も同じだ!


 俺は天狗を見た一瞬で膝の位置を確認し、その考えが合っていることを確信した。


 俺は右手に持つ刀の持ち方を変え、小指側に刀身がくるように持ち、天狗の右膝を目掛けて切先を突き刺した。


 切先は装甲と装甲の間の皮膚に貫通した。


 天狗は体勢を崩し、団扇から手を離して俺の上から降りた。その隙をつき、背中に刺さっている団扇ごと立ち上がり、気合いで団扇を引き抜く。


 天狗も右足を引きずりながらも距離を取り、突き刺さった刀を引き抜こうと柄を握る。


「隙だらけだ!!」


 俺は天狗の胸元を蹴り上げた。天狗は尻餅をつき、起き上がろうとするも、右足に力が入らないため、両手を地面につき、俺に背中を向ける体勢をとった。


 俺は力を振り絞り、両足でがっしりと地面を掴みながら、左手の刀を鞘に仕舞い、アクセルに指を置く。


「敵の背中を見た者が、闘いの勝者だ!」


 俺はアクセルを握りしめる。


 日差しの溢れる静かなこの場所に、甲高い音が響く。


 刀は勢いに身を任せ、装甲の薄い筋肉質の背中を、深く斬り裂く。


 沈みかけの太陽の陽が木々を通して影となり、木々を抜けた陽が飛び散る血に反射する。


 天狗は力が抜け、うつ伏せに倒れる。顔を横にし、顔の半分が小川に沈む。


 天狗から流れる血は小川を染め、息を漏らす。


「……。……負けだ。我は……、何を信じれば……」


「俺たちを、千歳を信じろ!」


 それを聞き、天狗は気を失った。



 気を失う前、装甲の奥で笑ったようにみえた。


 安心したかったんだろうな。


 駆け寄ってくる3人を見て、大の字に横たわる。


「勝っっったあああああ!!!」


 絞り出したその言葉が響く。



 エキポナ戦闘不能者9名、天狗デュロル戦闘不能。



「そうだ!あの籠に人質入ってるんだった、早く出してやろう。……うっと、すまん動けねえや」


「見てくるね!」


 すのちゃんと瀬川ちゃんが籠を確認する。


 セロリちゃんは倒れてたチームルナの青年を担ぎ「よく眠っちゃる!」と笑いながら言う。


 籠を確認した2人が焦るように籠を持ってきた。


「誰も入ってないよ!」


 誰も入ってないだと!?GPSの反応は確かに にここなんだが。


「辺りを探してくれないか!」


 しばらく皆が辺りを探り、人質の東京チームエル・ソルの姿がないことを確認する。


「籠ん中にGPSチップだけ落ちとったばい!」


 すのちゃんが伝える。


 人質がいないとなると、騙されたってことか!?他の場所の人質も嘘の情報か!?


ジジッ

「人質がいません!」


ジジッ

「他の支部からの情報を待とう。カマキリらはそのデュロルを保護し、支部に帰還してくれ」


ジジッ

「了解です」


 抜かれたGPSチップを回収し、倒れたデュロルに念のため麻酔をして眠らせた。JEA専用の装甲ヘリが迎えに来た。


 装甲ヘリの中で、激しい戦闘のせいか自然と眠りについていた。


 九州支部に着き、目を覚ましたチームルナの青年と共に整備室兼治療室に運ばれる。天狗はヘリコプターの中で人間体に戻ったらしく、保護するために彼女らで治療室に運んだ。


 今回の戦闘で俺の身体のパーツは結構な破損や故障があったから、スポンサーのお金を使う時が来たかな。


 これから天狗並みの強さのデュロルが、多く出て来てもいいように。





ー青森県 シーン"室瀬"ー


 あのデュロルが歩く度、近くの木や土が枯れ、灰が宙に舞った。


 あいつに触れてしまうと、体に接触している機械でさえも枯れてしまう。


 俺らは一定の距離を保ちながら後退し、作戦を練る他なかった。その間も水戸部オタクが矢を放つも、一向に当たらずにいた。


「モグラ、作戦は何?」


 小声で聞くおかーさん。


「俺の勘だけど、あいつは辺りから生気を吸い取って自分の力にしてるんだと思う。あのデュロル、腹に装甲が付いてるにも関わらず口がねえ。吸い取ってるから人間を捕食しなくてもいいようにできてるんだと思うぜ」


「成る程ね。それじゃあ、あいつを枯れた方に戻してキープさせればどうなるのか試すべきね」


「ああ。だが、あいつ自ら枯れた方に来るかが問題なんだ」


「モグラくぅん!いつまで狙い続ければいいの!?」


「もうちょっと頑張ってくれ!」


「うわぁぁ!」水戸部オタクは激しく動揺しながら矢を放つ。


「よし、一か八か。俺があいつを吹き飛ばす」


「大槌が枯れちゃうよ!?」


「当たってから枯れるんだったら、1発に賭けてもいいだろ?」


「それしか方法がないなら、やってみてもいいかもね」


「お、俺も、さ、賛成」


「よし、ゴンゾーも賛成してくれたからこれでいく」


 ゆっくりと歩いて来るデュロルに大槌を構える。


「オタク!向こう側に走れ!ゴンゾーも頼む!」


「わかった!!」


 ゴンゾーと水戸部オタクはデュロルが歩いて来る後方へ走り出した。


 自分を通り過ぎた2人に気を取られるデュロル。


 その隙をついて走り込み、大槌のトリガーを押し込む。


 押した後、大槌に内蔵されてるエンジンが起動し、振る勢いを格段に上げるジェットが噴出した。


 噴出したと同時に大槌は持ってかれるように弧を描く。デュロルは噴出の音に気づき意識を俺に向けていた。


 デュロルは咄嗟に手を突き出すも、大槌の方が先に右胸部へ入り込む。


 俺の手には当たった感覚だけが鈍く残った。なんとも不快で、気持ちの良いものではなかった。


 デュロルは大槌によって、後方に勢いよく吹き飛んだ。枯れた地面を抉り散らし、枯れた岩に当たって勢いは止まる。枯れた岩からは崩れるように灰が舞った。枯れた岩にめり込んだデュロルに灰が崩れて被さる。


 デュロルに触れた大槌は半分ほど灰と化した。


 灰になった大槌から手を離し、その手を見つめる。


 ふと我にかえる。


 枯れた岩からデュロルが這い出て来る。ヨロヨロと立ち上がり、足元が覚束無(おぼつかな)いようだ。


 デュロルの右胸部に、大槌の端っこが当たったらしく、扇形に陥没してヒビが延びる。そのヒビからは血が滲み出ていた。


「うぅうう」と喚きながらヒビを抑えるデュロル。


 すると、デュロルは一瞬動きを止め、辺りを見渡した。ヨロヨロと歩き出すデュロル。


「オタク!完全に弱ってるから麻酔矢を放ってくれ!」


「わ!わかった!」


 水戸部オタクは眼鏡をくいっと上げる動作をとり、麻酔矢を構えて弓のトリガーを引く。


「当たってくれええええ!!」


「オタク!そこまでしなくたって......!!」


 俺の叫びも届かず、水戸部オタクは矢から指を離す。勢いよく回転する弓のローラーに押され、矢は威力を上げて放たれた。


 放たれた矢はヨロヨロ歩くデュロルの右脹脛(ふくらはぎ)を貫通し、デュロルは膝を着く。


 しばらく動かないデュロルの様子を見る。


 デュロルは苦しい声を荒げながら立ち上がった。矢が貫通したお陰で麻酔の効果は全く無い。


 デュロルは静かに俺を見た。


「枯れを作り出す者も、いつか枯れる」


 デュロルは俺に右手を伸ばした。


 真っ直ぐ伸ばした指先は徐々に灰となり、徐々に崩れる。


「青年、1つの命が枯れ逝く姿を見ておけ」


 段々と身体が崩れて灰になるにつれ、その灰は風に乗り、枯れた森を飾る。


 ヨロヨロと動く度に擦れては、崩れる。


 俺ら4人はそれを見ることしかできず、ただ最期を見届けた。


「い、ざ……枯れるとなると……哀しいものだな」


 それを最後にあいつは崩れ落ちた。


 あいつの枯れた灰は、この場所の枯れと共に天に昇った。


 歩く度に浮き出す灰。これが生の末。


「クッソ考えさせられるじゃねーかよ」


「今まで目の前で動いていた者が、今や灰の山だ。彼も死に直面した時、哀しみを語っていた。やはり、デュロルも『人』なのだな」


 積もった灰を見たゴンゾーが言う。


 ゴンゾーの言葉に皆現実を見る。


「俺は本物の悪を相手にしねえと、気持ち悪いよ。感情がある『人』を殴るなんてよ」


「そうね、この職は本当に守りたいものが無いと動けないわよね」


「守りたいものか」


 人質は保護できたものの、心に雲がかかったような感情になった。


 何を守るか、深く考えるいい機会になるな。





 4つの場所でそれぞれの戦いが終わった。


 だが、この戦いが終わったと同時に鬼神(アラハバキ)は動き始める。





ー翌日7時ー


「集まったな」


「あれ4人?上河原(うわがはら)は?」


「あいつは抜きだ。JEAに聞かれちまうからな」


「は?どうゆうこった?」


「あのバカのせいで上河原がJEAに捕まっただろ?」


「ああ、古田か。それがどうした?」


「まだわからんか。JEAに捕まって、あいつらが何もしないわけない。盗聴器は確実に仕込まれているだろうし、今俺らが居る場所(ここ)はバレたくないしな。身体にGPSチップを仕込んでいる奴らだ、古田にGPSも仕込まれていると考えていいだろう」


「そうね、でも古田を名古屋に向かわせるための会議はみんな集まっていたわよ?」


「あれはJEAに古田を消してもらうためだ。あいつが大勢の前で次の作戦のことを漏らさなければ、こんなことにはなっていなかったしな。もう古田を信用できなくなった」


「だから、JEAが聞いてるのを解った上であの会議を開いていたのか」


「そうだ。新幹線を乗る駅と時間、車両をわざわざ言うことでJEAに対処させた。チケットを買ってあるんだから、口で説明しなくとも見ればわかることだ」


「お、鬼だ」


「仲間を売ったやつは仲間じゃない。それと、脅威だったウルフを動かせなくするいいチャンスだったんだ」


「あー!それかあ!説明されたやつ!」


「なに?うち聞いてないよ」


「黒谷と頂にしか説明していない。ウルフの苗字がわかったんだよ」


「苗字が?どうやって?」


「山辺が戦っている時だ、ウルフに矢が刺さった時、あの千歳が叫んだんだ。"川崎"と」


「ほう!」


「苗字がわかっちまえば金で買ってあるエキポナに調べてもらって、家族や素性はすぐにわかる」


「それで?その方法は?」


「川崎には唯一の家族の妹がいる。その妹を人質にすれば、川崎は動けなくなる。そこで、先に妹を連れ出した。JEAに鬼神の幹部が動くと情報を流せば、対処すべく、必ず川崎も来る。その時、妹の現状を見せ、動けなくする」


「なるほど」


「それともう一つ」


「なに?」


「東京チームエル・ソルの誘拐だ」


「あ!確かにやってたね!」


「東京チームエル・ソルは格段に弱いことは知れてるが、艶絵世右寺(つやえぜうじ)財閥からの支援はJEAにとって莫大なはずだ。無視できないだろう。そこで、東京チームエル・ソルのメンバーを日本各地にちりばめ、JEAの目を逸らす。おそらくその時、千歳たちも動くはずだ。エル・ソルの奪回のために各地に散らばった今、詩織(しおり)、お前の出番だ」


「なるほどね、邪魔する奴はいないってことね」


「ああ、千歳の周りの奴らも、新人といえど古田を殺した奴らだ。散りばめといて損はない。準備はできているか詩織」


「うん、できてる。もう始めるわね、戻って来る前に始めちゃった方がよさそうだし」





ー同日8時ー


 場所は名古屋。人が多く行き交う場所で、2丁のマシンガンを乱射し大量殺人を行う女デュロルが姿を現す。


ジジッ

「シカ!!お前が何故そこにいる!!お前じゃ無理だ!!雪崎(ゆきざき)!!!」


 "うるさい、僕がやるしかないんだ。この為にJEAに入ったんだから!!"


 先に駆け付けた名古屋支部のエキポナが交戦する中に、1人の青年が向かっていた。




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