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toy gun  作者: エベレーター
ゲームはクリアを待っている
8/24

追い立てられる治癒師

「案内図によればココが警備兵詰所だね」


 詰所の扉をガラリと入ってこんにちわ。

 もちろん誰もいないのはわかっているし返事なんか期待していない。

 そして当然のごとく中身は空。空き家同然で備え付けられているカウンターと机と椅子くらいしか見えない。が、当然奥に続く扉もあった。ありました。

 

 カウンターを土足で乗り越え扉をがちゃり。

 幾つかの扉と二階へ続く階段を発見。

 まずは二階からクリアリングして行こうとオペラにジェスチャーで指示。頷いたのを確認して、階段を上がる。

 

 2階はどうやら交代要員の休憩所だったらしい。

 二段ベッドが4つ。最大八人が同時に休憩できるようにできていたようだ。

 何もない、誰もいないのを確認して下の階へ。

 

 本命の一階を探索だ!

 1つ目の扉をドーン!

 そこに並んでいたのは大量のロッカー。

 一応中を検める、が、中に入っていたのは制服と思われる服が三着。

 すべてのロッカーの中身が同じであった。糞ったれ。


 次の部屋に期待しましょう。

 次の部屋はなんじゃらほい。

 倉庫か。

 一見ただの物置に見えるが奥に金庫があるのが見えーる。


「オペラ」

「なぁに?」

「爆破しろ」

「言うと思ったよ!」


 そう言いながらすでにその手には爆弾がにぎられている。

 鍵穴に詰め込み、爆破。

 鍵だけを綺麗に吹き飛ばされた金庫が自然と開いた。

 中にはなにが入っているかな~?

 ……空っぽじゃないことを祈る。

 

 中に入っていたのは直径8cm、長さ15cm程の大きさの円筒形の金属筒が一本入っているだけだった。

 

「なにこれ?」

「さあ? とりあえず持ってみたら?ライトセイバーかも知れないし」


 もしかしたら凄いかっこいいヴォンヴォン音がなる武器かもしれないという言葉を信じ、持って握ってみたがなにも起こらない。信じた私のピュアピュアでラブリーだった頃の心を返してほしい。そんな物は初めから存在しなかったけど。


「ん? なんか穴開いてる。ちょっと覗いてみるね」

「おぉー……? 宝の地図とかかな?」


 覗いた瞬間、ポーンと音が鳴った。


『おめでとうございます。ブループリント(設計図)を手に入れましたね。ブループリントはキャラロストしても失われることのない資産です。その名前の通り、ブループリントは物を作るのに必要です。一回使ったら消滅する。なんてことは無いので安心していっぱい作りましょう。』


 設計図か。

 

『物を作るのには素材が必要です。素材はいらない物資をグラインダーに入れることで手に入ります。グラインダーは口の大きなシュレッダーのような見た目をしています。そこに不要となった物資を入れると手に入ります。素材となってしまったアイテムは使えなくなります。』


 うーんグラインダーなる設備が必要なのか。


 で? 私が作れるようになった物はなんなのかな?

 システムウィンドウを操作し、設計図マークをクリック。

 リストにポツンとアイテム名が一つ書かれていた。


 ・零式X粒子生成炉:初期型粒子生成炉。装備者はX粒子生成と操作を行うことができるようになります。


 でたよわけわからん粒子。

 しかもそれが使えるようになるとな?

 どうにも危険物っぽいのだけはわかるんだけどな。

 作るべきか作らざるべきか悩むな。


「ねえ、ミト、私にも見せて見せて」

「あぁいいよはい」


 ブループリントを手渡し、観察することにする。

 どうやら一回使ったら消滅するようなものではないらしい。

 その証拠にオペラもブループリントを使って生成炉のレシピを手に入れたようだし。

 そしてどうやら私と同じ考えに至ったようだね。


「「グラインダーを探そう」」


 そうだよね。まずは作らないと話にもならないもんね。

 それはつまり素材を手に入れなきゃいけないわけで、そして素材を手に入れるための設備の発見が必要。

 うんうん。このたらい回し感。RPGしてる気になってきた。ずっと対戦系シューターやっている気分だったもんねここのところずっと。


「じゃ、次の目標はグラインダーだね」

「邪魔な物は全部爆破するよ。任せて!」

「じゃ、私は全部撃ち抜いてみせるよ」

「ところでさ、さっき入り口の方から物音したけど気のせいだと思う?」

「思わないねえ」


 思っていないのを示すかのようにオペラは片手に手榴弾、片手に銃を握りしめている。表情は笑顔。

 無言で5秒後に扉を開けるとジェスチャーで伝え、扉をいつでも開けられるようにかまえるた。

 5、4、3、2、1―― 

 

 オペラが扉を開けたタイミングで手榴弾を投げ入れた。廊下に手榴弾が飛んでいったのを確認した後扉を閉め、一息。


 BOMB!!


 安心と信頼の爆音を聞き流し、爆発衝撃が生み出した痺れを身に感じながら廊下にエントリー。

 生き残りの処理の時間だ!


 虫の息となった探索者を一人発見。ココまで来るのに一人なわけないので警戒心を引き締め頭に弾丸を一発お見舞い。お疲れさまでした。


「一人発見! 処理したよ!」

「ラジャー! 後ろからカバーしますね」


 カバーを信じて私は突進するぞうおおおおおおおお。

 廊下からカウンターがある部屋に勢いよく突っ込む。

 待ち伏せされていた場合を考えるとゆっくり入るのは悪手だと思ったからね。

 なら勢いよく入って勢いよく死ぬほうがいい。


 なぁにカバーなら後ろにいるさ。

 そいつが私の仇もとってくれる。

 

 蹴り破るどころか思い切り飛び込んできた私に驚き固まる2名のプレイヤー。

 駄目だよコレぐらいで驚いて固まっちゃ。数と場所の利を生かさなきゃ。

 

 地面を転がり、跳ね起きる。足元に手榴弾がコロリンコ。オペラの仕業である。

 ちょくちょく殺しに来てるなコイツ。

 

「ゴメーン!」

「ええで」


 にっこり笑顔を返しながら蹴る。

 狙いは一番近い間抜け面のあんちゃん、君だ。


「う、うわ」

「落ち着け! どうせ回復する! さっき渡した回復錠剤を口に含め!」


 ほー……回復錠剤ね。ってことはあいつはメディックか。

 見せてもらおうか。回復錠剤とやらの回復力を。

  

 BOMB!


 はぁ、やっぱ爆発は最高だ。

 破片は出血を促し、閃光は視界を潰し、爆風は呼吸を乱す。

 結果は明らかだね。

 一人重症、一人無傷。


 ん?

 無傷? 無傷なんで?


 ……なるほど。これがメディックの薬の効果か。

 回復とかずるくない!? 

 私ずっとココまで片手で頑張ってるんですけど!?

 

「見たところ君は負傷している」

「だから?」

「治療したくないか?」

「ん。続けて」

「君が私の相棒に向けてる銃口を外して、見逃してくれるって言うなら」


 BLAM!


「な!? なんで撃った!?」

「銃口は外したじゃん。今はほら、地面を向いてるよ」

「馬鹿な、なぜ!?」

「あんまり退屈なこと言うもんだから引き金引いちゃったよ。それじゃ駄目? 駄目かぁ……」

「なぜ、撃ったッ!」

「あのさあ、まずアンタのことを信用もしてないのに交渉のテーブルに着く訳がない。そしてさ、薬なんてお前を殺してから奪えばいい。そうは思わない?思えないか。じゃ、もう面倒くさいから死んでちょ」 


 あくびが出ちゃったよ。

 数が一緒なら膠着するって? 馬鹿言え、一人は重症、瀕死なんだよ。コレは2対2の交渉じゃない。

 交渉の内容も違うね。

 回復させてください。死にたくないんです。

 から始めるべきだったね。

 まぁ、交渉する気なんてサラサラ無いけど。

 

「残念だねえ。仲間キャラロスしちゃったね」


 オペラが通路から出てきた。

 非常に楽しそうに手榴弾でお手玉している。

 危ないからやめろ。

 落とすぞ。

 

 ほら! ほら落とした! 言わんこっちゃない! 


 視線と警戒心は落としても君を逃がすつもりは無いヨー。

 だから、今がチャンスと思わないようにね。


 ああもうほら、そんな急いで飛び出したってさ、足を撃ってしまえば君はもう逃げられないんだよぉ。

 

「ねえミト」

「なに?」

「足治ってね?」

「おぉ! 凄いね!」

「吹き飛んだ足がくっつくなんて!」


 これはますます惜しいな。

 仲間だったら腕を治療してもらったのになぁ。

 惜しい! 実に惜しい!


「何度撃っても無駄だ! 俺は何度でも立ち上がるぞ!」

「ふーん」

「がんばえ~」


 やる気ない声援を背中に受けながらランナーメディック走る!

 頑張れ! 死ぬな! 生きてくれ!


「心臓吹き飛ばしても生きると思う?」

「流石に心臓と頭吹き飛ばしたら死ぬでしょ」

「だといいね」  

 


 生き残りをかけたメディックの逃避行。

 その先にあるのは生か死か。

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