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toy gun  作者: エベレーター
ゲームはクリアを待っている
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欠損者と蜥蜴

「あああああああああああああああああああああ! 何処だ! 何処にいる! 馬鹿にしやがって! 出てこい! クソッ! こんな溝に引っかかるかよ!」


 お怒りだねえ。

 せっかく用意した溝にも引っかからなかったか。


 ざーんねんむねん。


 切り替えていこう。

 この地下街は非常に綺麗に区画整理されている。

 そしてどこから入ったかわからんけど原生生物が闊歩している。あと箱型機械兵(仮名)も。


 私が今入っている建物の中はよくあるホワイトカラーな人たちの職場って感じの場所だ。パソコンっぽい機械が並んでいる。

 いくつかビルの中に入ったけどどれも似たような見た目だ。

 一般人が普通に働いていた場所って感じだ。

 軍人と文民が分かれていたのかもしれない。


 と、すれば軍人の勤め先を探すのが物資発見の近道かな。


「ああああああああああああああああああああ!! 邪魔だあ!!」



 あの煩い奴の処理もしないといけないし。

 たぶんアレは怒り心頭しているフリだと思うんだよね。

 原生生物の対応が雑になってない。

 かなーり正確に撃ってる。

 

 このまま正面切って撃つのは難しいし、確実に弾を当てられる距離に近づくのも難しい。

 だってあの野郎ずっと道路の真ん中をあるいてる。

 怒り、吠えてる時に軽く周囲も見渡してる。


「っか~こりゃ厳しいな~返って冷静になっちゃったか」


 うーんどうしようかな。

 ゲロ犬君は普通に対処されてるしMOBに始末してもらおう作戦はボツだねボツ。

 

 箱型ロボット君達も数は少ないけど犬を狙うついでにプレイヤーも狙ってるみたいだね。

 人型だとかそういうのは関係無しか。

 

 こうやって後ろをつけるのも飽きてきたし、かといって放置…するのも怖い。

 

 ……銃を一丁手放すか。賭けになるけどいっぱい持っていてもしょうがないし。

 手放すと決めた銃にマーキング。試しに適当な方向において動作を確認する。

 うん。ちゃんと銃の場所を指し示すね。銃の場所を変えてもその事実は変わらない。

 アイテムボックスに突っ込むと……駄目か。

 マーキングが機能しなくなった。

 ここは賭けになるか。

 

 如何にしてアイテムボックスに突っ込ませないで銃を握らせるか。

 

 ……いや、無理じゃろ。

 相手の武器を破壊しまくって銃の数を減らし、私の銃をどうにかして握らせる?現実的じゃない。

 

 いやーボックスに放り込んでも機能するんだったらいいアイディアだと思ったんだけどナー! なんでそういう事ができないのかなー! 運営さーん! 今この瞬間だけマーキングできるようになりませんかねー! 駄目ですかそうですか。


 次の案を考えよう。

 

 だが! 思い! つかない!

 

 だいたい離れたところにいて常に相手の場所を把握するなんて卑怯なことが出来るとか運営が認めるわけないやんなー!

 

 開き直ろう。

 できるだけコイツから離れて探索しよう。

 

 行動指針が決まった。


 じゃあ後は行動するだけだね!

 

 建物から出るまえに、何か使えそうな物資が無いか確認したら出るか!

 トイレとか言いものがありそう。

 目当ては鏡。

 曲がり角の先の確認とかに使えるからね。

 

 鏡! あった! どうする? ぶん殴る!

 

 鏡をクラッシュ! 拳がいてえ! でも目的の物は手に入ったからおーるおっけー!

 よし。楽しくなってきた。

 

 これはいけるんじゃね? 無理か。無理だな。

 破壊活動でテンション上がっちゃったなもー。

 暴力はいい。気分がすっきりする。でも一時の流れに任せるのはよろしくないからね! 初めに決めた指針を守るよ。

 

 ビルを出ると目の前に広がるのは道路だ。

 歩道と車道が分かれていて、中央分離帯が設けられている大きな道だ。


 名前もしらん激おこぷんぷん丸ムーヴしてるアイツとは違う方向に行くのは決定事項なんだけど今いる現在地がだいぶ端っこなせいでどの方向に歩いても結局同じ方向に歩きそうなんだよな。

 

 正直広さがわからないくらいには広いこの空間、生きている交通手段とかあってほしいものだけど路肩には何も停められてない。

 どこかに集めておく場所があってもいいはず。

 まずはそこで足を探すか。

 




 周辺を散策してわかったことは駐車場のような足を置いておく場所がないってこと。道路があるならその上を走るものもあっていいはずだけどな~。

 地上を探して無いなら地下とかかな。地下駐車場的なヤツ。ありますかね?

 

「地下、地下、地下? ここはもう地下さらに地下? うーん……お、いいね。探せばあるもんだね」


 

 地下に続いていそうな階段を発見。

 階段は歩道に重なるように設置されていた。地下鉄の入り口のように。

 

 地下鉄?


「地下鉄かこれ」


 地下空間の下にさらに別の地下空間。

 MOBの巣とかなけりゃいいけどたぶん巣とかあるんだろうなあ。 

 でもここに潜れば少なくともアイツからは離れられる。

 アイツは相変わらず銃をぶっ放してるから地上にいる事はわかるし、まだ結構近くにいることもわかる。

 

 降りるか。 

 

 地下にはこわーいお兄さんが居ない。

 それだけで降りる理由になる。

 

「よし。怖くない。怖くない。怖くないぞ」


 地下、薄暗い空間、飛び出してくるモンスター。

 何も起きないはずがなく……。

 

 いや、考えててもしょうがない。足を進めよう。

 


 地下へと続く階段を一歩ずつ慎重に降りていく。

 壁や天井には薄暗く輝くラインが引かれている。

 その光景はこの地下都市に行く風景に酷似していた。

 

 

「ズルルーッ」


  

 鼻炎の人が良く出す不快な音が聞こえる。

 鼻をすするあの音だ。

 その音が階段を降り、数メートル進んだ所で聞こえてきた。 

  


 間違いなく何かがいる。

 だって黒い影が見えるもん。

 でも生物らしい見た目をしてない。

 背中から二本の棒を生やし、2mくらいの体高を持っている生物を私は知らない。

 ゲームだし常識は当てはめないほうがいいのはわかるがそれでも私は違和感を感じてしまう。

 

 横を通るってできるかなぁ。

 今うずくまってるのって多分食事中だと思うんだよね。

 頭っぽいところが一定のリズムで動いてるし。

 薄暗くていまいち実態が掴めないのがより一層に不気味だな。 

 

 ここはひとつ三人組の真似をしてみるとしよう。

 まず服を脱ぎます。

 間違えた。

 まず靴を脱ぎます。

 銃は万が一のためしまわず握り込みます。

 

 そして抜き足差し足忍び足。

 

 静かーに横を通り抜け、る……。

 

 体を壁に貼り付け、じりじりと汚らわしい生物に近づいていく。

 一番距離が近くなる真横を通り過ぎた時、ひたすら俯いて食事をしていた動きがピタリと止まった。

 

 耳障りな音が止まり、ゆっくりと影は頭を私の方向へ向けた。

 口から細長い下が出入りし小さくも鋭い光を放つ瞳が私を捉えた。

 この時点で私は靴を取り出して履いていつでも走り出せる準備を整えていた。

 

 戦うのは最終手段だ。

 このくっそ狭い空間での戦闘音がアイツに聞こえたらまずいからね。分岐のない一本道の通路で銃をぶっ放しながら追いかけっこなんて想像したくない。だってすでに逃走時に腕を一本失っているのだから。

 こういう時ゲーム特有の無限スタミナって便利だ。

 ずっと走り続けられるって素晴らしい。


「シュルルルーシュー……」

 

 地面を這うように走り追いかけてくるその姿はまさに爬虫類。というかトカゲだコレ。

 ただ背中から生えてる二本の棒から発射される液体がヤバイ。

 石でできてる床を抉る程度の威力とか全然笑えん。

 

「っと、階段ッ」


 手すりに尻を乗せて勢いよく滑り降りる。

 これでちょっとは距離を稼げたかと後ろを振り向いてみれば段差なんて知らねえと言わんばかりに転がり落ちてくるトカゲの姿。

 

「えぇ……」

 

 そりゃないよ。


 気持ちを切り替えていこう。

 すげえ勢いで転がり落ちてきているんだ。

 たぶんこのままだと――当然止まれなくて踊場の壁にぶち当たる。

 

 よし。私の予想は当たった。

 壁に当たったトカゲ君は痛みか衝撃で動けなくなってる。

 これは嬉しい誤算だね。

 今のうちにとっとプラットフォームに降りよう。

 ここが本当に地下鉄で電車が通る線路なら道は二つに分かれるはずだ。

 

 いや、環状線じゃない一本道、つまり単線の終点の場合は一方にしか空間は伸びないがそれは例外だと思いたい。

 

 階段を降り切り、ガラスの扉を蹴破る。開けてる暇なんか無い。

 目の前には左右それぞれ一本ずつレールが走ってるホーム。

 予想は当たった。

 あとはこの地下を走り、兎に角遠くへと行く。

 

 植物が生え、芝生に飲まれているレールの上に降り立つ。

 地下とは思えない植物の生い茂った光景に思わず息をのんだ。

 空気中に明るく輝く球が地面から浮いてきては弾けて消える。それがこの光景をより幻想的なものに変えていた。

 

 後ろから鱗と地面が擦れあうような音。

 衝撃の混乱から復活したトカゲが動き出したのだろう。 


 追いつかれる前にもうちょっと距離を稼ぐ。

 ここまで潜れば銃声も反響していろいろな出口から出ていくかもしれない。

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