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toy gun  作者: エベレーター
ゲームはクリアを待っている
4/24

逃げる欠損者

「ここがあの女のハウスね」


 女なんていないし、ハウスでもないけど。

 明らかに人工物っぽい入り口が見える。

 岩が綺麗に削られてまあー丁寧に研磨までされてる。

 すべすべじゃん。流石に顔まで移るほどじゃないど。


 この遺跡……遺跡? に何があるか、何が残っているかだよね。

 この銀河から抜け出した方法を見つけることが出来ればいいけど。


 ……まあ無いよね。

 何かあるといいな。くらいの気持ちで潜ろう。




 不気味なことにこの遺跡の中には小石の欠片どころか埃一つ落ちていない。

 吹いている風も冷たく、ガスのような臭いもない。

 道、というより廊下はまっすぐ一直線で壁には発光するラインが二本、目線と足首の高さに走っている。

 

「どうやら罠は無いみたいだから走るか」

「そうだね」

「ッ!?」

 

 私の背後、15m程後に三人の男が立っていた。

 全員靴を脱ぎ、装備をアイテムボックスに仕舞い込んでいる。随所に音を立てないように工夫しているのが見えて気づけなかった悔しさと完全一直線の道で三人の敵が立っているという状況が生む緊張感が私を襲う。


 もちろん私のとった行動は一つ。


「一人。一人殺る」


 腰に下げた銃を引き抜き一発決める。

 三人もいるんだ。多分当たるでしょ。外れた。ちくせう。


 でも大丈夫。アドは私にある。なぜなら。

 

「馬ァ~鹿! 銃をアイテムボックスにしまってるんだ。反撃なんかさせないよ!」


 二発目。 

 一発目の弾道から修正した特別製の二発目だよ。なんと銃口を左に5cmもずらしたのよ。これであたればもうけものだね!


 着弾!


 イイネ!

 

 この銃口とHP全損したプレイヤーにサムズアップを進呈してさしあげる。

 ふぅ~! ちょっぴり怯んでいる間に私は逃げるぜ~!


「アバヨ!」

「クソッ! まてっ!」

「誰が待つかってね」


 適当に銃撃。

 もう一丁銃を取り出し、左右で弾幕とはいえないけど威嚇射撃。

 当てるのでは無く、撃ち続けて威嚇し、前に進むのを躊躇させるのが目的の射撃だ。


「あっはははは! じゃあ先にいくねー!!」


 ジャンプしたり壁を軽くけったり、しゃがんでみたり、兎に角弾に当たらないように最大限の努力だ。

 敵はもう武器を取り出している。当然のように二丁拳銃だ。やっぱり羊じゃなくて狼だったか。初手で一人欠けさせといて正解だったね。私のとっさの判断に心の中でガッツポーズ。

 

「いったあ!」


 うぅ…抉り込むように弾丸が肩を貫いた。というか抉れてるどころか吹っ飛んでるじゃん。

 即死判定が出ると体は傷一つ付かずに死ねるけど欠損だとゴア表現は普通にでるのね。痛いなぁ、これ痛覚設定も強めだねこれ。厄介だ。片手で撃つのは厳しいんだよ。支えがないと安定しない。事実上片手無しで二丁拳銃しているようなものなんだよこれ。

 

「くっそぉ……なんて威力なんだよこの銃ッ!」


 ゲロ犬の頭を吹き飛ばしたときもちょっと思ったけどさぁ…!

 こんなちゃちな見た目で威力が可笑しいよ。

 

 まず反動が可笑しい。でもこんなこと言ってても弾丸の嵐は止まない。

 

「!」


 壁!

 いやT字路!

 いや、扉がある!? いっぱい!?

 どれでもいいどっか入れないの!?

 

「スイッチスイッチ……どこだどこだ……、このレバーか?」


 グイっと引っ張って扉をオープン。良かった。開いた。

 体を滑り込ませ、扉を閉める。 

 

『おかえりなさいませ。地上の探索お疲れさまでした。』

「おかえり……?」

『ヴォルト504548:マグノリア第18番ゲートを開きます。』


「これは……驚いた……」


 エレベーターは地下に続いている。建物の上には何もなかったからね。

 窓から見える風景もどんどん下降していることからここが地下なことがわかる。

 そして地下に


「巨大な都市があるなんてなぁ」

 

 広大なビル群を見下ろしつつ、エレベーターが下降していく。

 ビル群の間を四つ足の箱型機械が闊歩し、その先をゲロ犬が駆け回っている。走っている犬もただのゲロ犬じゃない。体の一部から銃のような長い筒が生えてる。


 箱機械が体を軋ませ、体を展開、中身から現れたのは機関銃。

 しかしそこに弾倉のようなものは見当たらない。

 ばらまかれたのは金属弾丸じゃなく、光線。

 一瞬ではない。光線にしては遅い弾速で進んだ光弾が犬を襲う。

 ばら撒かれた光線を強靭な脚力で跳ね回り、壁を駆け上がり避けた犬は体から生えた筒の先を箱機械に向けた。

 

 こちらの銃口から出たのも弾丸ではなかった。

 白煙と共に射出されたのは酸性の体液。

 武器を展開していたせいか避けるのが間に合わなかった機械は直撃。

 飛び散った飛沫が建物に小さな穴を空け、直接浴びてしまった機械兵は哀れ溶解!


『現在活動してる市民は0人。最後に外の住人が訪れた時間から500000000時間経過しております。最後の住人からのメッセージが残っております。どうぞ』


 唐突に始まった最後のメッセージはひどいノイズも無く、昨日録音したかのように雑音が一切無く始まった。



 「―――やあ、X粒子大爆発を共に受け、その後のY2Kから逃げ去った人類諸君。我々“居残り組”はそれはもう元気だったよ。どうもY2Kの波動が凄まじくてね、人類も進化したけどその辺の生物の進化も凄くてね。奴らに対応するために我々も技術を磨いたが降り注いだエネルギーはあまりに膨大でね。知ってるかい? あの粒子は適量だと生物の進化を促すが、多すぎると毒なんだ。我々は、生き残れなかった。まだ粒子は降り注いでいるかい? 耐え抜く方法を見つけたかい? それともそれよりも早く子供を増やせるようになったとか? どっちでもいいや。君たちは間に合ったよ。施設が残ってるからね。うまく使ってくれよ?じゃあ、さようならだ」


 

 ……。

 この惑星に知的生命体がいたというのは確実だね。

 そしてこいつらはかなり昔に滅んでいる。5億時間って何年前だろ?

 原因はX粒子とかいう物質。

 幸いにして施設を残したという。

 つまり現地生物と戦える装備が残っているかもしれない。

 そして、滅ぶ前に惑星を脱出した集団がいる。

 こいつらが脱出した方法を知ることが出来ればもしかしたら目的を達成できるかもしれない。これも残った施設にある可能性がある。


 ここで一つ。

 ここの装備はどこにあるか?

 私の後ろには二名のプレイヤーがいる。

 

 間違いなく競争になるねこれは。

 

 さーてどうするかなー。

 このひろーい地下都市の何処にあるだかわからん武器を探し求めて

東奔西走?じょうだんじゃない。

 片手を失っているというでっかいペナ背負ってるんだこっちは。

 効率的に行かせてもらうぞ。

 

 エレベーターを出てダッシュ!とにかくダッシュ!

 エレベーターホールから外まで大体目測10mくらい。

 見つかる前に見つかりにくい場所で待機して、後をつけるのにいい場所もついでに探す。

 

 エレベーターの入り口からそこそこ離れていて、続いて降りてくるエレベーター内から俯瞰してみる位置からも見れず、ってそんな都合のいい場所あるか!


 今やろうとしていたすべての作戦を捨てろ、物事はシンプルなほうがいい。私は出待ちをする。

 つまり、エレベーターから降りた瞬間仕掛ける。


 ここでさらに敵の数を減らす。

 最低でも一対一にしないと状況的にヤバイ。

 ただ人が二人いるって事じゃない。いや確かに二人いるけどそういうことじゃあ無い。

 二人いるってことはお互いの視覚をカバーしあって死角を少なくしたり、二人で同時目標に撃てばそれだけ当てられる確率も増えるというわけだ。 

 そして正面から打ち合ったとき、一人潰してももう一人は健在で撃ち続ける状況になる。

 

 これが一番勘弁してほしい状況になる。

 

 私の腕の本数は一本。頭の数は一個。

 敵の腕は四本。頭の数は二個。


 あれれ~? 数が合わないね~。

 なので数を合わせるぞ!

 

 最低でも頭一個は持っていきたいよネ!

 

 今、動いているエレベーターを確認する。 

 20ある内今動いているのは一つ。よかった。別々のエレベーターを使われていたら標的が散って不味かったヨー。

 

 確認が終わったらそのエレベーターから出るときには見えにくい位置に移動。

 見えにくい位置でいい。出て、周りを見渡したら見えるような位置でいい。

 そのワンモーション挟まないと見えないってのが重要なんだ。

 

 見渡し、探す。私はその間に何発弾を撃てるか。

  

 何発弾を当てられるか。

 

 集中しろ。

 

 周囲の環境音が遥か遠くに追いやられ。

 揺れていた銃口がピタリと止まる。

 

 集中しろ。


 エレベーターの扉が開く音が聞こえる。

 二人分の足音も。


 集中。


 水のように流れていた時間が泥のように鈍化していくのを感じる。


 来た。

 

  見た。


   気づかれた。

   

    構わん。撃つ。撃つ! 撃つ!


 放たれた弾丸が手前側、銃撃音に驚き固まっていたプレイヤーに着弾。ついでに奥のほうにも当たらないかと確認したけど手前の影になっていてこのままの位置じゃ当たらないッ! ならば手前をハチの巣にして逃げる。私の目的は達成したんだ。


 一人落とした。

 

 残るは一人。

 

 さぁ、メイクツールで壁を出しつつ逃げるか。

 じゃーねーさいならー!

 

 

 思ったよりも壁は早く作れるけども分厚いやつを作るのにはちょっとばかし時間がかかるねこれは。

 これは物理的遮蔽物じゃなくて、視覚的遮蔽物に使うしかないかな。

 

「逃がすかよォ!」

「くっ」


 作った遮蔽物がまるで発泡スチロールのように崩されていく。

 作る速度よりも壊される速度のほうが早い。

 こんなんじゃ遮蔽物になれないよ。

 

 でも残念。

 もう私は外だ。ホールから出れればあとは私のもの。


 ここで一つ捨て台詞をば。


「初め三人今一人の間抜けはだ~だれだ?」  

「三対一の人数をトントンまでもっていった美少女に負けそうなアホはだ~れだ?」


「正解は常に一つだね! そう! お前だああああああああああ! 馬ァァァァァ鹿!」

 

 さて、これで頭に血が上って思考が単調になってくれたら儲けものだね。

 

 メイクツール、設定、兎に角薄く。

 こいつは一度に出せる量を少なくすればそれだけ早く求める建材を出してくれる。

 

 エレベーターホールの入り口を兎に角薄っぺらい石板で覆う。

 素材は入り口でてすぐの足元からだ。

 転んでくれたら嬉しいなぁ。

 

 ちょっと深めに掘るか。

 

 ツールを使うと楽でいいね。

 

 30cmくらいの溝もすぐに掘れた。

 

 ここまでやればもう用はない。

 ここから離れて、次の不意を打てそうなポイントを探そう。 

  

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