六話
エレベーターとエスカレーターがなかった。俺たちは現代社会の技術にすっごい感謝しながら10階まで階段を上がり切った。まぁ、レベルとステが上がっているから苦ではなかったけどな。
入口を入ってすぐ左手に扉があり、そこに風呂があった。その隣にも扉があり、そこがトイレだった。そこを過ぎるとテーブルとソファがある。その奥にキングサイズのベットがあった。簡単に言えば奥に広い部屋で簡素なつくりだった。部屋の間取りを一通り確認した俺たちはトイレがあることに安堵したのだった。
「はぁー、疲れたぁ~~」
「お疲れ。リア、風呂からにしよう入ってこい。俺まで終わったら今後のことを話そう」
「ん」
(色んなことが一気に進んでほんと疲れたな。あーあ、いきおいで異世界に来たけどやっていけるかなー?違うよなー、やっていかなきゃだよなぁ。あーこえー。って、そういえば死んだら復活ってできないよな?サリーに聞いておけばよかった。まぁ、ゲームじゃないからきっとできないよな…。はぁ、そう考えるとますます怖くなってきたな…。そうだったら、リアを絶対に死なせないように守らなきゃだな。できていたはずなのに覚悟がまだできていないな…)
「風呂終わったよ」
「え?あ、うん」
「何回か声掛けたよ」
「わりぃ考え事してた、入ってくる」
考え事をしていたら割と時間が経っていたらしい。
───────
「ふー、さーてめんどいけど今後のことについてテキトーに話そう」
「はーい」
「まず質問させてくれ、お前このゲームやったことあるな?」
「え?な、ないよ?」
俺の質問にだいぶうろたえて返事をする。
「嘘をついてるのバレバレだぞ。お前、スキル発動の時にCTを計算してたろ?」
「あ……」
「サリーに俺と同じ訓練場を貰ってスキルの練習していたとしても、ゲーム初心者ならCTまでは計算しねーよ。他にもあったけどな」
「あーあ、ばれてたか。うちもスロフィットやってたよ」
隠すと思っていたがあっさり認めたみたいだ。
「やっぱりか!お前ゲーム嫌いじゃなかったか?」
「まーね。あんたと付き合った時に、ゲームしてみようかなって同じ趣味あったほうがいいのかなーなんて思ってね…。んで、強くなってからあんたを見つけて、驚かせようと思ってたんだけどねー、結局見つけきれなったんだけどね。しかもその間に別れちゃったじゃない」
「そうだったんだ…」
「ま、はまっちゃってそのあとも続けてたんだよねー」
「まじで?ジョブはマジか?ランクは?」
「うーん。答えてもいいけど…ん~、あ!2周年記念2億2,222万人player達成記念の時の第52回PvP大会の9位と言ったら分かる?」
「2周年…そん時の9位は確かマジシャン……確かそん時がマジの50位以内初で話題になってた…その名前は………なんだっけ?」
「……」
「んぐっっ」
すっごい形相で本気で殴られた。すっげぇーいてぇー!!
「ものすごくためたのに分からない?ふざけんな!!」
「うぅ、いてーよ。覚えてるよ!!!nanoだろ?まさか第2席がお前だったとはな」
「覚えてるじゃん!」
「そりゃぁ、覚えてるよ!PvPでマジが初の50位以内でも驚きなのに、初参加で9位だったからな!普通はありえねーよ!!」
MMORPGのPvPではマジ系がまず難しい。なぜならスキル発動時間が他のジョブより少し長いため回避されるのが高く攻撃が当たらないことが多いのである。だが、リアは違った。装備に付与できる攻撃・防御力、HP、他のステを含めて捨てた。その代わり、SP、攻撃・詠唱速度、CTを限りなく上げた。その結果、広範囲かつ強力なスキルが連発されるのだから回避は難しい。その結果9位になったのだ。
「別にあんたよりは凄くないでしょ!零席のくせに!」
「んなッ⁈なんで知ってるんだよ!」
驚かせようとしたのになぜ知っている!!サリーだな!!
「サリーに教えて貰った!」
「やっぱりサリーか!!情報漏洩だ!!」
「どうせ引退してたんだし、死んだんだからいいじゃない!」
「それでもなんか嫌だ!!」
「だからなに?サリーに言え!!」
「いてーよ!すぐ殴んな!!」
「殴ってない!叩いてるだけ!」
「変わらんだろうが!!!」
売り言葉に買い言葉になってきた。はたからだと口喧嘩にも見えるだろうが、この二人にとっては日常だったのだ。
「で、なんで質問したの?」
「ん?あーお前がスロフィットをやっていたなら今後の行動に対しての説明が省けると思ったからだ」
「あ、そういうことね。それでどうするの?」
「んーどうしようかな。お前所持金どれくらいだ?」
「前のなら金2枚、銀327枚、銅825枚だったよ、こっちでのは23億2,782万5千G。あーあ、日本なら金持ちなのになー。ねぇユナは?零席だったんだからリアより少ないなんてないよね?」
「カンストだ」
「はぁ???!!!」
「聞こえなかったのか?カ・ン・ス・ト!!当然だろう?」
「聞こえてたよ!ええっと…確かカンストは999枚………いくら?」
「9,999億9,999万9千G」
「え、なに大金持ちじゃん」
「キモいぞ、そのにやけ顔」
「いや、にやけるよ」
「ま、そーなるよな。地球にいたら一生で 2億程度だからな。まぁ、サラリーマンが9千億って無理だと思うぞ」
スロフィットの金銀銅はそれぞれ999枚まで貯めれる。ちなみに通貨は下記の通りとなっている。
1円=1G
1千円=千G=1銅
100万円=100万G=1千銅=1銀
10億円=10億G=100万銅=1千銀=1金
「所持金は分かった。おそらく一生遊んで暮らせるだろうな」
「ほんとに?」
「おそらくと言ったろ?冒険者をするんだったら無理だ。装備の維持とかに銀20とか普通にとんだろ?」
「そういえばそうだった」
装備には修復、修繕があった。装備のレア度によって費用は変わるが、軽いメンテナンス程度であれば銀貨1枚である。
「起きて仕事に行き帰って寝るといった、日本での生活は無理だろう。俺達はスロフィットをやっていたんだ。分かるだろ?」
「そうね。スロフィットをやっていたんだったね」
「そうだ。力を手にしたんだ、それを使わないのは有り得ない。俺達は誇示せずにはいられない。俺達はいつまでもプレイヤーなんだよ」
「確かに冒険者は絶対やるね。うん、頑張ろう」
「あぁそうだ。やろう。それに仕事するにしても、また一から覚えないといけないんだぜ。どうせならこの力を使おう」
「だね」
ひと通りリアとの確認ができたから、そろそろ方針にいってもいいだろう。
「よし、脱線たが今後の方針を言うぞ」
「はーい、寄り道しすぎ」
「うるさいぞ。一つ、冒険者になり稼ぐ。二つ、住む家か長期間泊まれる宿を探す。三つ、席を探す。今はこんなところかな」
「一はさっきので分かったけど、家か宿探すの?それに席いるの?」
「あぁ、席は絶対にいる。サリーは半々といったんだ。という事は既に居る奴もいるってことだろ?俺達が冒険者として有名になれば絶対集まるはずだ。まだのやつは必ずくる。俺は確信してる」
「…確かにあの人達なら来そうね」
「だろ?」
あいつらなら絶対来るだろう。 リアが来たのが証拠と言っていいだろう。
「で…住む家を探すって……?」
照れながら聞いてきた。
「あー…住む場所ないと安心できないだろ?」
「…」
「あー、分かった。はっきり言う。リア、結婚しよう」
リアと目を合わせており、沈黙になって少し経った。
(やばい、めっちゃ恥ずかしい。ロマンチックじゃない、こんな雰囲気でプロポーズってねーよな…)
そんな事を考えてると、なにも言わずに抱きしてきた。そして…
「うん、結婚しよう。」
「これから宜しくお願いします…」
「宜しく。でも文句言わせて、こんな雰囲気でプロポーズってないわー」
「それは言わんでくれ、言うしかなかったんだから…しょうがないだろう?」
「ま、許してあげる」
「そうしてくれ。そろそろ寝よう」
「うん」
お姫様抱っこをしてベットまで行く。その続きは言わなくてもわかるだろう?
読んでくれてありがとうございます。次話も読んでいただけると嬉しいです。今後もよろしくお願いします。
読者はMMORPGなどのゲームをされている方だと思っております。その為、用語を多用していきます。用語に関しては造語なども出てくるかもしれません。それも含め、まとめたものを掲載したいと思っているので暫くお待ちください。
時間補足(セルダンと地球との暦・時間、気候などは同じ設定です)
AM05:00 二人のセルダン転生
約6時間 レベ上げ
PM12:00 関所到着
約1時間 軽く観光、露店での食事など
PM13:15 冒険者組合到着
約6時間 冒険者登録、ベールさんの冒険者講座
PM19:30 部屋に到着
約2時間 今後の方針など
PM22:00 イチャイチャタイム