五話
「ついたぞぉー!!ここがセルダンだな!!!」
新しく第二の人生を過ごす世界になにか感じて浸ろうとすると
「由!!遅いわよ!!!」
「ふぉ?!」
情けない声をだしてしまった。
昔よく聞いてた懐かしい声。最近聞いた声。まさかと思いながら声のする方向へ向く。
「璃亜?!」
そう、そこには璃亜が居たのだ。
「は?!なんで居んの??」
「やっぱり驚いた」
「そりゃあびっくりするよ!!マジか?本物か??」
「本物に決まっているでしょ!!」
「殴んのよ!いてーだろ!!」
殴られて少し冷静になる。
「もしかして、神とかいうやつに会ったか?」
「会ったからここにいるのよ」
「ってことは、お前も死んだのか?」
「死んでないよ。あんたが死んだのはニュースになってたけどね。気がついたらサリーが居たの。あんたが異世界に行くって聞いたから付いてきたの」
「はぁ~マジか、そういうことか。来る前提だったから、三つ目は無理なんて言ったのか」
三つ目の頼みは、璃亜に会って誘いたい。というものだった。しかし、サリーは璃亜に声をかけており、三つ目の頼みは確証がなかったから濁すように『無理かも』と言ったのだ。
「なんか言った?」
「いや、何でもない。こっちの話だ」
「そ。それで、これからどうするの?」
そう言われてマップを見る。約5km先に町があるのが確認できた。
「そうだな、まずは町を目指そう。約5km先に町がある。んで、道中にモンスターがいたら狩っていこう。戦闘に関しての感覚を早めに掴んで慣れておきたい」
「確かに慣れておきたいね。ねぇ、5km先なの?遠くない?」
「なに言ってんだ?近いだろ?たった5kmだぞ?ゆっくり歩いても2時間あれば着くぞ?」
「確かにそうだけど…」
「ここは異世界だ。車なんてない。歩くしかない!さっさと行くぞ!」
「はいはい、流石に馬車はあるよね?」
「あるんじゃないか?」
数分歩いているとマップに敵の赤マークが表示された。
「おい、来るぞ」
「赤いのが出たから分かってる」
少しすると、木の陰から定番のゴブリンが3体出てきた。
「「「ア”ァ”ー」」」
俺が剣を構えると、璃亜が聞いてきた
「どうすんの?」
「下がっていろ、とりあえず俺が倒してみる」
「分かった」
3連続まで可能なスラッシュを使う。3体纏まっていたので、余さずに1体1ヒットさせ倒した。
「ふー」
初めての戦闘に緊張していたのだ。息が漏れる。
「何とか倒せたな」
「そうみたいね」
「お、こっちでもドロップはあるみたいだぞ」
「ふーん、そ」
「興味なさげだな」
「だってレアじゃないでしょ?」
「ま、そうだけどな。ちな、赤と青の木の実だった」
「へー。次はやらせてよ」
「はいよ」
なんやかんやで町に到着した。モンスターと戦闘しながら進んだので、だいぶ時間が掛かった。
道中、変なおっさん達に会ったりしたが、無事にたどり着いたのだ。
「町に着いたなー」
「まだ、入ってないでしょ」
「まぁ、そういうなよ。順番が来れば入れるんだからさー、もう入ったようなもんだろ?」
2人は、町に入る前の関所にいた。その列の最後尾に並んでいたのっだった。
待つこと15分──
「思ったよりも早いな」
「2人は一緒かい?」
「そうでうす。2人です」
「んじゃ、一人150Gだな。見たところ、2人とも駆け出しだな?」
「そんなところだ!」
「そうかいそうかい、若いっていいなー。冒険者登録するなら場所を教えてやろう。この道を真っすぐ進み、青い建物がある。そこを右に曲がればいい。組合は白くてでかい建物だ。みればわかる。冒険者なんかが集まるから、迷子にはならんだろ」
「おっ、そうなのか。おじさんありがとな!!」
「いいってことよ!おっと、忘れるとこだった。ごほん」
おっさんは改めると。
「ようこそ!!始まりの町『ウィンノック』へ!!がんばれよ!!」「おう!!」
2人は関所から抜け冒険者組合へと足を向け、衛兵の言われた通りに白くてでかい建物を探す。
「マップは平面図だからなー、建物がどんな感じか分からんから、教えてくれるのはありがてー」
「教えてくれても、たどり着けないけどね」
「そういやー方向音痴だったな」
「マップの指示通りでもたどり着かない」
「重症だな。このマップにナビ機能とかあんのかな?後で調べてみるか。俺が一緒じゃない時もあるはずだから、道は覚えろよ?」
「無理。いなかったら殺す」
「へいへい。つーか即答かよ」
そんな会話をしながら歩くと組合に着いた。
おっさんの言う通り白くてでかい建物だった。
「まじででかい」
「でかすぎじゃねーか??20階建てぐらいはあるよな?」
「た、たぶん??」
「とりあえず入ろ」
「う、うん」
建物の大きさと沢山の人の往来に圧倒されながらどうにか足を進める。
入るとさらに大勢の人で賑わっていた。
5階分が吹き抜けになっており、1階1階の元々の高さが高い。その為、建物自体の規模がかなり大きいのである。
「「はー」」
二人して息が漏れる。周りを見回していると声をかけられてた。
「こにちは!ようこそ冒険者組合へ!!何かお困りでしょうか?」
「え?あ、はい。冒険者登録をしたいんですけど…」
「畏まりました。では、こちらへ」
声をかけてきた女性に着いていく。
「ベールさん、新人の方よ。冒険者登録の手続きをお願い」
「はーい」
「では、私は失礼します」
「あ、はい」
「君達が登録するのね?2人でいいかしら?登録料で一人1000Gだけど大丈夫?」
「大丈夫です」
「じゃ、二人ともこの石板に手を置いてねー。そしたら、名前と職業を思い浮かべてね。あ、ジョブがまだなら初期職って出るからね。ちなみに登録後のジョブ変更は何度でもできるから、それじゃあ思い浮かべて」
「「はい」」
2人分の2000Gを払い、手を置き頭に思い浮かべる。俺はウォリアーだが後々の為にマジシャンにしておこう。
しばらくすると石板に文字が浮かび上がってきた。読めないと思ったが、自動翻訳してくれるみたいで日本語の表示に切り替わった。
名前は由がユナで表記されたので、おそらく璃亜も一緒だろう。名前以外に職業、ステータスなど他にも項目が表示されている。
「っと、出たわね。あら?2人ともマジシャンなの?」
「はい、そうです。他も覚えてはいますが、近接は怖くて…」
「確かに、モンスターと戦うのは怖いわよねー、分かるわ~。これをカードに登録するからちょっと待っててね」
石板を受け取ったベールさんは、奥へ引っ込んだ。
そこで、璃亜が袖を引っ張った。
「なんで、あんたマジシャンなの?さっき剣使ってたでしょ?嘘つく必要あるの?」
「まぁ、今は気にするな。それよりもスムーズに行きすぎないか?」
「え?あっ、言われてみると確かに」
「だろ?取り敢えず俺に合わせてろ」
「おけ」
怖いくらいトントン拍子に進んでいく。スムーズに行き過ぎだ。ラノベなんかで転生ものを見たりするが、「主人公は疑問に思わないのか?」って、思ったことがあった。目の当たりにすると、思ってたよりも疑心暗鬼になるな。ふむ、しばらくは色んなことを疑って動いた方がいいだろう。
「待たせたね。そういえば自己紹介がまだだっけ?私の名前はベール。主な担当は冒険者への依頼受付などね。今後もよろしくね!」
「よろしく!俺はユナ」
「リア」
「自己紹介は終わったから、次にいくよー。はい、これが冒険者カードね」
受け取ったカードはシンプルなデザインだった。免許証に近いものを感じる。顔写真はないけど。
表には名前、年齢、ジョブ、レベル、実績、所持金があり、裏には、経験値、ステータスがあった。
「この冒険者カードは身分証にもなるかなくさないでね。再発行はできるけどめんどくさいから、ほんとなくさないでね!」
だいぶ念を押してくる。
「んで、さっき言ったけどジョブはいつでも変更できるの。あ、もちろん取得済みのだけよ。変更には自分のSPが必要なの、SP10ね。変更の仕方は必要になったら教えて。次だけど、ステータスに関しては分かるよね?」
「はい」
「ま、そうだよねー。久しぶりにこんな高い新人見たよ!期待しちゃうわ!!」
「まじ?ふつうはどんくらいだ?」
「新人だと、20~30ぐらいね」
ここに来る前に戦闘慣れしようとモンスターを倒しすぎたらしい。やべー完全に目立ったな。
「その様子だと、レベル上限がないのも知らない?」
「「え?」」
「やっぱ知らなかったかー。親や村の人は何をしてたのかしら」
「あはははは」
スロフィットには上限がなかった。まさかないとは思ってなかった。そりゃーそうだよな、人に限界なんてないよな。あぁーレベル上げが楽しみだ!!
「復習と勉強がてら、レベルとステータスについて教えるね」
「助かる!!」
『レベル』
レベルに上限はない。冒険者登録をする若い人はレベルが20~30が殆どで、冒険者の平均が200〜250。市民の平均レベルは100~150らしい。殆どの人が冒険者登録をし、ある程度まで上げるとやめていくそうだ。なぜなら、ステータス上げの為だからだ。
『ステータス』
レベルが1上がるごとに5ポイント。(例)200レベル×5=1000ポイント
ステータスポイントをSTR、INT、VIT、MEN、DEXに振り分けることで、ステータスが上昇する。
STR:ATK上昇、筋力上昇
INT:MATK上昇、WIS、精神力上昇
VIT:DEF・HP上昇、回復力上昇
MEN:MDEF・SP上昇
DEX:CRI・LUC上昇、基本・上位・最上位職パッシブスキルの効果増加
HP:体力・ヒットポイント。0になると死亡する。時間経過で自動回復する。30秒毎に最大HPの0.5%回復。(武具により秒数減少、%増加可能)
SP:魔力・スキルポイント。0になるとスキルが使用できなくなる。時間経過で自動回復する。30秒毎に最大SPの0.5%回復。(武具により秒数減少、%増加可能)
ATK:物理攻撃。STR+武具装飾品などのATK+自身のパッシブスキルの合計
DEF:物理防御。VIT+武具のDEF
MATK:魔法攻撃。INT+武具装飾品などのMATK+自身のパッシブスキルの合計
WIS:魔法能力。(潜在能力の為個人差がある)
MDEF:魔法防御。(MEN+武具のMDEF)
CRI:クリティカル値。
LUC:運。回避率、命中率、ドロップ率。
ベールさんは細かく丁寧に教えてくれた。
魔法能力なんてなかった。やはり異世界だからなのか…。ステータス以外にも見えない隠し要素がありそうだな。
「ベールさんありがとう!」
「いいってことよ!でもね、まだまだ続くよ!!」
ベールさんの初心者講座は日が暮れるまで掛かった。
「ふー、これで終わりかな。あ、ごめん!こんな時間までかかった!2人とも宿は決まってる?」
「いや、着いたのは今日だからまだだ」
「そうだよね。今日は、組合に泊まっていきな」
「え?泊まれるの?」
「まぁね、10~15階は宿泊できるの」
「それじゃあお願いしようかな」
「今回は冒険者の門出ということで、2泊3日分をタダにしておくよ!10階の1012と1013ね」
「何から何までありがとう」
鍵を受け取り部屋に向かおうとすると、ずっと黙っていたリアが喋った。
「ちょっと待って!!二部屋なの?」
「ええ」
「そうだろ?」
「一部屋にできない?」
「できるよ」
「ん⁉」
なにを言うんだこいつは?男女が部屋をとるとなったら普通に二部屋になるだろ??
「いやまて!なんで?普通に二部屋だろ??」
「は?なに?文句?」
「いえなんでもありません」
すごい迫力だった。こえー。なんでだ?殺す勢いだぞ!!
「はい、同じ10階の1020室ね」
「ありがと」
鍵を受け取ったリアは満足げにうなずき礼を言って部屋に向かった。
追いかけようとするとベールさんが話かけてきた。
「いやーいいねー。あんた、あの子を大切にしてやんなよ」
「ああ当り前だ」
「ま、そうだろうね」
「ベールさん今日はありがとう。明日もよろしくな」
礼を言いリアを追いかける。
◇◇◇◇◇◇
「明日ね~」
ユナを見送り二人の事務処理を行いながらつぶやく。
「ふぅー、まさかLv100手前だなんてびっくりしたー」
石板には組合の人しか見れないような仕掛けがあった。それを見ながら処理を進めていく。
(何にも知らないのに新人としては高Lv、ステータスは勿論Lv通り、これは当然ね。それにしてはおかしい基本職をコンプしているなんて…)
「よー」
「元気にしているかい?ベールの嬢ちゃん」
「え?あ、イグニスさんとディモンズさんこんばんは」
ベールに話しかけてきたのはユナ達が組合に来るまでに会った2人である。最初の人が道中に会ったおっさん達の一人、ディモンズ。嬢ちゃんと言ったのが、関所の衛兵のイグニス。
「イグニスさんは久しぶりですね、お二人ともどうしたんですか?」
「いやー暇だから?」
「違うじゃろう、まったくすぐふざけるのは変わらんのうぉ」
「いいじゃないですかー」
「で、どうしたんですか?」
「登録をしに来た二人がいたじゃろう?」
(ユナ達の事かしら?)
「ええ」
「その二人のステを教えてくれんかのう?」
「イグニスさん何故です?ステを聞くなんて二人に犯罪履歴はありませんでしたよ?」
組合の人しか見れないものの一部で犯罪履歴を見る事が出来るのだ。ベールも高Lvを不審に思い犯罪履歴を真っ先に見たのだ。
「無いのか!!良かった!」
「ええ、無いですよ。それで何でステを?」
「あぁ、そうだなー。あいつら強いだろ?」
「ッ?」
ふざけていたディモンズがまじめに聞いてきた。
「あら、ディモンズさんが真面目だなんて嵐でも来るのかしら?」
「まぁそういうなよ」
「ええっと、二人のステでしたよのね?これです」
二人にユナ達の石板を見せる。
「ほう…予想以上だ……」
「……ふむ」
この二人はたかが新人を気にする人たちではない。そのことを知っているベール。
「あの…この二人がどうしたんです?」
「わしは関所でおうただけじゃ。所作は素人同然、装備を見れば初心者のように感じたが握手したらそうではないと思ったのじゃ」
「それほどなのか?」
「そうじゃ。おぬしは?」
「あぁ…、俺が見たのはゴブリンと戦っていた時だ。最初は女のほうが攻撃していてな、ファイアスピアとアイススピアを使っていたからマジシャンというのは分かった。その次に男が攻撃していたな。スラッシュを使っていたからウォリアーだと思ったんだ。だが、ローグのナイフスローを使ったんだよ」
「ほう…ジョブマスターをか……」
「びっくりだろ?だから聞きに来たんだ」
ユナは何気なく二職のスキルを使っていたのだが、初心者が他のジョブスキルを使えるのは普通おかしいのである。勿論、セルダンではスロフィットのように取得が可能である。しかし、そのジョブのスキルを各500回使用するまでには冒険者になって2~3年を要する。なぜならばLv80になると基本職から上位職になるのが通常である。そうなると強いスキルを覚えるので基本職のスキルを使わなくなるのは当然である。その為、取得をするのが遅くなるのだ。
「なるほど、お二人が気になったのもうなずけますね。こちらを」
石板の閲覧制限を解除してみせる。
「まじか?」
「ええ、まじです。石板の偽装は難しいのはお二人ならよくわかりますよね?」
「そうじゃが…こりゃぁ異常じゃのう」
二人が見たのはユナたちのジョブ取得欄とスキルレベルである。
勿論、二人は基本職を全て覚えておりスキルはLvMAXになっていたのだ。
「レベルを上げるだけなら誰でもできるのは分かる。が、このレベルで全スキルがカンストなんて聞いたことがないぞ?」
「いや、ある」
「ええ、イグニスさんの言う通りあります」
「ディモンズは知らんかったのじゃな。まぁ無理もないか」
「知らないのが普通ですから」
「本を読まん能筋じゃからな」
「ええ、そうですね」
「おい!!黙って聞いてりゃ馬鹿にしてんじゃねーか!」
「ディモンズさんこれを見てください」
「スルーすんのかよ!!」
差し出されたのはページが開かれた本だった。ぶつぶつ文句を言いながらも読む。そこに書かれていたのは。
───死に物狂いで倒す。真剣に倒す。真摯に倒す。そのいずれかでモンスターを倒すと普段の倍以上のスキル経験値を得ることができる。また、その度合いは人それぞれである。
「これ本当なのか?」
「はい残念ながら本当です」
「知らんのも当然じゃ、ゴブリンは物心ついた子供でも倒せるからのう」
「ああ、そうだな。普通に知っていれば知らんな…」
「大人がついていれば、子供に倒させることなんて普通ですからね。しかも、ゴブリン100体ほど倒せばレベルは20~30まで上がりますからね」
「そうじゃ、小さい村だと子供じゃろうと自営の為に倒さなければならぬし、ここだと適齢期なれば冒険者に連れられて倒しに行くじゃろう?」
「そうか100体なんて冒険者登録するまでには倒すか…」
「そういうことじゃ」
「まて、無理だろ?ゴブリンだけで上げれるのか?迷宮は組合管理だから入れないよな?」
「私もそう思って見たけど、勿論侵入経歴は無かったよ。おそらく5千は超えているでしょう」
「……そうか」
「異常じゃな……彼らの生い立ちが気になるが詮索はいかんじゃろう?」
「その言い方だと」
「ちと昔馴染みにな」
「さすがだ。もう上がったんだろ?」
「そじゃ、結果じゃがのう…恐らく異世界人じゃ」
「納得だな」
「ですね」
「こ奴らが──だといいんじゃがのう」
「そう願うしかねぇな」
「そうですね。組合でも目をつけておきます」