四話
ここが訓練場なのか何もない空間だな。取り合ず、ここのメニューを開く。
「んー、どうしよう。環境設定は今は無しでいいよな。っと、敵は無しに…あ、訓練用の的とかあるのか、それからにしよう」
早速、ダミーの一つにある案山子を設置した。ウォリアーのスキル、スラッシュを使う、その際にはイメージのし易いよう口に出しながら発動する。そして、ウォリアーのスキルを全て発動させた。
「うん、あの頃にイメージした通りだ。次の職業だな。今更だが、スキルを覚えるのはモンスター狩りをしないといけないのに……。一応、神から貰ったからいいのかなー。きっといいよなー。気にしてもしゃーない。次だ次」
スロフィットには初期職のノービス、基本職のウォリアー、ローグ、レンジャー、クリエイター、マジシャン、アコライト、ワンダラー、リベンジャー、サモナーの9つが存在する。基本職の上に上位職がある。上位職は基本職の9職に対して各8職、計72職も存在し、さらに最上位職も存在するのだ。職だけを見て合計すると、80職以上存在する
これだけを見聞きすれば、どこにでもある普通のMMORPGだと思うだろう。だが、スロフィットは今までゲームとは違った。一定条件を満たせばどの職業であろうと全職業スキルが使えるのだ。例として挙げれば、ウォリアーでありながらサモナーのスキルが使えるというものだ。ちなみに、その条件は簡単で基本職の各スキルを各500回使用するだけである。
MMORPGの定番であるPvPもスロフィットでは人気だった。なぜなら、全ジョブのスキルが使用可能という事なら、対策が難しく定石が存在しない。その為、勝てば必ず注目される。その優越感に浸りたい者、強さを求める者、様々なプレイヤーが腕を磨き頂点を目指した。由もその一人である。
「よし、思った以上に時間が掛かったがこれで好きにスキルが使える。そろそろセルダンに行こうかな。っと、その前にバッグの中身と装備を確認しないとだな。あ、所持金もだなー。」
プロフィールから所持金、装備、アイテムバッグの中身を確認した。
「うん、殆どある。だけどあの武器はないのかー。最優先で取りに行こうかなー。あぁーどうしよう。つーか、なんで俺の私物まであるんだよ!!!意味わかんねぇ!!」
なんと、アイテムバッグの中には生きていたころに所有していた物があった。
「服はありがたい。ルービックキューブ、本に漫画、趣味の物いいよな。うん、なんで車が入ってるんだよ!!!!!」
一呼吸おいてもう一度言う。
「なんで車が入っているんだ!!」
いや、叫んだ。
「ガソリンなんてあるのか?どうすんだ??ええ??」
ここにいないサリーに叫んでみたが勿論反応はない。
「まぁいいや、所持金があっただけいいか。生活はなんとかなるしな。いって考えよう」
ゲートに入る。
◇◆◇◆◇◆
──源ノ屋 由さんが死亡しました。
え⁈あいつが死んだ?え?は⁉︎
私は、ニュースで報道されている事実を受け入れる事が出来ずに混乱した。
泣いて、泣き疲れて意識を手放した。
目を覚ましたが目は閉じており、意識は朦朧としている。
あぁ、あいつは死んだのか…。今、何時だろう。仕事に行かなきゃ。泣いてたけど、目は腫れてないかな。どうしよう、休んであいつの家に行こうかな。葬式はいつだろう。あぁ、いやだなぁ。
職場に電話をしようと目を開け体を起こす。
「…?ここは……??」
見たことない床……周りを見回すと、女性が居て目が合った。
「あら、nanoちゃん起きたようね」
「っ⁉」
「あら?璃亜ちゃんは思ったよりも顔に出ないタイプ?」
「だいぶ驚いてるわよ。あんた何者なの?」
誰にも言っていないのに何でその名前を知っているの?
目の前のヤツを観察する。
「私は神の一柱、魂の管理神よ」
「神?」
「ええ、神。だからと云う訳じゃないけど、貴女のことなら何でも知っているわ」
「神ねぇ…。まったく信用できないわね」
「まっ、そんな怖い顔しないで由とは大違いだわ」
「由⁉あいつはここに来たの??」
「違うわ、貴女とは別の空間に居て私の分裂体とお話し中なの」
「サリーって言ったわね!あいつは何処に行くの?私も行けるの??」
「落ち着きなさい。そして私の話を聞いてちょうだい」
頭の整理が追い付かないし、目の前のこいつは信用していいか分からない。けど、言われた通りこいつの話を聞かないといけないのは直感でわかる。
由が関わっているんだもの。絶対面白くなるに決まってる!!
「分かった、さっさと話してちょうだい」
「そう、急かさないで。」
由と同じ話を聞くこと数時間
「確かに訓練場は必要ね。私も欲しいから頂戴。そして、由と同じ場所で5分早い時間に調整して、それぐらい出来るよね?」
「勿論、それぐらいしてあげるわ」
「ありがとう。それじゃぁ行くわ」
「いってらっしゃい」
◆◇◆◇◆◇
「ここがセルダンね!!あいつが来るまで何しようかなー。絶対驚くだろうなー。びっくりする顔が楽しみ!!」
私は、ゲームが好きじゃなかった。でも、あいつが好きだから共通の趣味などがあったらいいなと思い、あいつがハマったゲームを内緒で始めた。けど、ゲームで探すことができなかった。まさかこんな形で一緒になれるなんて!!サリーありがとう。
あいつはあの時のことを気にしているはずだけど、そこは前のように戻れるよね。てか、戻らないと璃亜が来た意味がないしね。
「ついたぞぉー!!ここがセルダンだな!!!」
物思いに更けていたらあいつが来た。
「由!!遅いわよ!!!」
今度は、由から絶対離れないんだからね!!