二話
「ん、あれ…?」
目が覚めると、白い部屋だった。
白い部屋ではあるが、壁がるのかどうかすら怪しい只々広い空間と表現するほうが適切な部屋だった。
「ここは、どこだ?俺は死んだはずだよな?」
「あら、起きたの?」
「ッ?」
人がいるような感じはしなかった。
確かに人ではなかった、羽…いや翼があったのである。
「どうしたの?顔に何かついてる??」
「え?いや?は?」
「まぁ、落ち着いて?ね?」
目の前の女性は微笑む
「まずは深呼吸しましょう」
流されるまま
スーハー、スーハー
「落ち着いたようね」
「あ、あぁ」
「自分のことはわかる?」
「俺は、由」
「ええそうね。ほかに覚えてることは?」
「確か…。死んだのか?」
「ええそうよ。貴方は死んだのよ。もう一度言うわ…。貴方は死んだの。」
目の前の女性はそう言うと雰囲気が変わった。
ヒリヒリと肌が焼けるような感覚である。
「そんなに身構えないで、少し脅さないと話を聞いてくれなさそうだもの。」
「……」
「さて話を始めますよ。貴方の名前は、源ノ屋 由。そして、高速道路の下で渋滞に嵌っている最中に、高速道路が崩壊して貴方は下敷きになり死んだ。よろしいかしら?」
「そ、そうだな。多分あっていると思う…ます。」
「別に敬語じゃなくていいわよ。楽にして」
「あっ、はい」
「続けるわよ」
「ああ」
「貴方は死んだ。それは理解いているわね?」
俺はうなずく。記憶はそこまでしかないからである。
「ここからが本題かな。貴方は、3年前に世界的人気ナンバーワンのゲームを引退したわよね?」
「あー、引退したな。それがどうしたんだ?」
「その、ゲームに近い世界があるのだけど、そこに転生しない?」
俺が引退したゲームというのは、SLFITと言う。
正式名称は【適者生存】∼Survival of the fittest∼といい、プレイヤーが言い出したのがきっかけでスロフィットが浸透していったのだ。
世界的人気理由の一つとして、不正ツールが絶対に使えず、プレイヤースキル依存だからである。
そんなことはあり得ないと誰もが思った。
何万人もの腕自慢が挑んだが、結局チートは使えなかった。
だからこそ、タイトル通りだと界隈は騒ぎ、人気に拍車がかかった。
結果、玄人、素人関係なく多くのプレイヤーが集まった。
由は、そんなゲームのトッププレイヤーだったのだ。
あの頃を懐かしみながら俺は考える。
確かに俺は死んだ。死んだからどうした?
やりたいことはあった。だが、死んだら何もできない。
異世界に生まれ変わって何ができる?
「『人は何の為に生まれてくるのか。人は何の為に死ぬのか。その答えは誰も知らない。でもその答えを知る為に人は生まれてくのだろう。』…か……」
ふと思い出し、頭に残っている誰が言ったか分からない言葉を呟いた。
聞かれた時には決まっていたようだ。
「ああ、そうだな。行くよあの頃に戻れるなら」
「決めたようね。そういえば自己紹介がまだだったわね、私の名は魂の管理神よ。分からなきことがあればなんでも聞いて。」
「あー、そうだなー・・・。何で俺はここにいるんだ?」
「簡単よ。死んだから。」
「それだけ?」
「一言だとね」
「成程、一言ね」
「聞きたいかしら?」
「長いか?」
「まぁ、それなりに?」
「なら、一応聞いとく」
「あなた達の世界には、輪廻転生って考えがあるわよね?」
たしか、魂が何度もこの世に生まれ変わってくる。だったか?と思いながら頷く。
「それなんだけど実は無いのよ」
「え?」
「魂は存在するの。でも、あなた達世界の言う輪廻転生って無くてね、魂は一度きりなの。但し例外はあるのよ、君みたいなのがその例ね。」
「どう言うことだ?」
「例外っていうのは、何かひとつの事にのめり込む人、若しくは頂点に達した人がそれに該当するの。その人達は、死後に私の元に来る事になっている。そして、私が案内するの。つまり、平凡な人生を送った魂は消滅し、例外は転生できる。何となく分かったかしら?」
「まぁ、何となく…な」
「まっ、あなたは例外になるから転生できるって事よ。」
「ふーん。で、俺は何をすればいいんだ?」
「特に無いわよ」
異世界もののテンプレは無いのか?
暫く考えていると
「あなたが好きなように生きなさい。2度目の人生なのよ、存分に楽しみなさい。」
「分かった。さっきなんでもって言ったよな?」
「ええ言ったわね」
「いくつか聞きたいんだが、あのゲームと似てるということは、ステータスがあるのか?」
「ええ、あるわよ。後で説明するから心配しないで」
「ほかに聞きたいことといえば…」
俺は、あいつのことを思い出す。久しぶりに会ったあいつのことを…。
「なあ神だからなんでも分かるんだよな?」
「それなりにね」
「俺は、あい…つの……。いや、なんでもない。」
「貴方の想っていることを信じなさい。それが本心よ」
やはりそうか…俺はいまだに璃亜が好きなのか。
「分かった。ありがとう」
「どういたしまして。さて、そろそろ説明するわよ」
サリーから聞いた説明をめるとこうだった。
今から行く世界は、スロフィットと似て非なるらしい。
地球とは違い、ステータスが存在して………
「あー、あれだな、行けば分かんだな?」
「貴方、話を聞いてなかったのね。まあいいわ!後悔すればいいのよ!!」
「まぁまぁ、怒んなって。言葉通じるってのは分かったから大丈夫だろ」
サリーの話が長すぎるから、途中から聞いてなかったのだ。
どうせ忘れるし、行けばどうにかなるのだ。
「なぁ、ステはあの頃と同じなんだよな?」
「ええ、そうよ。それがどうしたの?」
「それは別にいいんだけど、ただな使いこなすことができるか心配でな」
「そんなこと心配するの?『ヤッッハァァーーーーー!!!俺最強!!!まじぱねえぇぇぇ!!!!俺、TUEEEEEEEE!!!!!』ってならないの?」
「いや、普通はそうなるんだろうけど…って、演技力すげーな!おいっ!!」
思わず突っ込んしまった。
サリーをほっといて、ひとまず考える。
あの頃のステータスと同じって事は、あの職業があるんだな。そうか、あるのか。良かった。
あれがあればどんな敵が来ようがどうにでもなる。
よし決めた!取り敢えずサリーに聞いてみよう。
「なぁ、サリーいくつか頼みがあるんだがいいか?」
「なにから?」
「一つ目、どんなスキルを使っても壊れない訓練場が欲しい。二つ目、転生先の基本的知識及び情報など。三つ目、──────。お願いできるか?」
「私を誰だと思ってるの?これでも神なのよ!!任せなさい!でも、三つ目に関してはちょっと無理かもしれない。」
「まぁだよな。おけ、じゃぁ宜しく!」
「任せなさい!!!」
そしてサリーの転生講座が始まった