十話
俺達一行は、組合裏にある演習場にやってきた。もちろん、あの場に居た殆どの冒険者もついてきてきた。
移動している間にPVPで使う道具とその説明を受けた。
アイテム名は【演練冠】と言って、これを装着している人どうしなら、殺り合っても死なないそうだ。
しかも、お得なことに冠を外せばHPMPが元に戻り、装備などのキズ汚れも元どおりだそうだ。
HPは相手、周囲に見えるようになり、ダメージ表示が1HIT毎、ダメ累計など細かく設定できるみたい。
終わった後は何も無かったことになるって、なんか、仮想世界みたいだな。
元々が騎士の訓練用に開発されたのでそのまんまの名前になったらしい…。製作者のネーミングセンスが……とか思っちゃダメだよな。うん、言っちゃダメ。
ベールさんが設定し終わったようだ。
「支部長終わりました」
「ありがとう。設定してもらったので、ルールを説明するよ!」
周囲にも聞こえるように大きな声で説明し始めた。
「一対一のPVP。制限時間は10分間で、10分耐えるか、ディモンズに一撃を入れる。実力を図るならこれぐらいでいいんじゃないかな?君たちはそれでいいよね?」
「いいですよ。対人戦なんてやったことないから5分持つか分かんないですけど。お前はそれでいいよな?」
「ん~、いいんじゃない?」
「だ、そうです」
俺たちの返答にうなずき、おっさんに目を向けた。おっさんはそれにうなずき、離れたところに移動しながら俺たちに聞いてきた。
「青年たちよ!!どっちからだ?」
顔を見合わせると、リアは顎で返事をした。
「俺からみたいだ!!」
「みたいだな!!まぁどっちからでもいいかけどな!!!!」
ワハハッ!!っと笑いながら準備運動をしている。笑っている。けど、その笑いは獲物を見つけた時の笑いだった。
あーあ、やだねぇ。コワイワー。こわいこわい。
死なないみたいだから、死ぬ気で教わろう。そうでなきゃ意味がない。
「ほー、少年よ。準備はできているみたいだな」
「おう!!できているぞ!」
俺は片手杖を2本取り出し両手に装備した。杖には両手杖と片手杖がある。両手杖は攻撃力が高い代わりに攻撃速度は低く、逆に、片手杖は攻撃力が低い代わりに攻撃速度が高い。
今回は一撃を入れるだけなので片手杖を選択した。さらに、2本にしたのは少しでも攻撃速度を上げる為である。
おっさんと対峙した。
「これより冒険者ランクアップ特別適性試験を始める!!!両者良いな?」
一言だけ発する。
「「あぁ」
返事を聞いたとたんに大勢の人が静かになった。静かになって数秒、そして……風が吹いた。
「はじめ!!!!」