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73話 交渉

大変お待たせいたしました。申し訳ございません。

「…… う、ん…… 」


 生活感の欠片もない病室で桜は目を覚ました。彼女自身、フォックスに敗北したところまでしか記憶がないが病室で寝ているという現状と比較して抜け落ちている時間に何があったのかを察することが出来た。


「助け…… られたのか」


「らしいな」


 隣のベッドから想像していなかった声が返ってきた。桜が飛び起きて横を見ると確かにアレクセイがそこにいた。


「隊長! どうしてこんな…… 」


「ははっ、若い奴には敵わんな。俺も歳らしい」


 アレクセイが笑う。その笑顔は敗北した者だとは思えないほどに爽やかな表情である。


「やっと起きたか。全く、人を待たせおってからに…… 」


  桜たちの覚醒に気付いたのか、部屋の端から何者かの声が聞こえた。桜はその声の主を悟ると同時に胸の内に秘めていた何が溢れるのを感じつつ口を開いた。


「お前は…… なぜ私を助けた!! 」


本堂 桜(もとどう さくら)だったか? ルイス中尉の件は悪かった。重傷にはならんように加減したが急に飛び出されるとどうにも敵わん」


 フォックスが頭を掻く。フォックスの言葉の意味が飲み込めず首を傾げる桜にフォックスが更に言葉を続ける。


「あ、もしや俺が勝手に殺した事になってんのか? ……やっぱりな、あいつは殺す気なんか更々無かったよ。そもそも恋愛感情剥き出しな奴のギアを潰してろくな目に会ったためしがない」


 フォックスが立ち上がった。「ここに用はない」と言い放ち、ドアを開ける。


「それに…… 」


「な、なんだ! 」


「お前だって恋人残して死にたくないだろ? 男はその辺拘りはないが女の方は持ってることがあるらしいからな」


 去り際になぜか微笑みを浮かべるフォックス。桜もアレクセイもその笑顔の意味が分からないようだ。


「……なんで、私相手に慈悲をかけたんだろう? 」


「それが奴さ。『無駄な殺しはしない』、しかし全く変わっていないとは…… 」


 二人がそれぞれに呟いた直後、扉がノックされる音が病室に木霊した。


「今、大丈夫かな? 」


「問題ありません。お気になさらず」


 アレクセイが返事すると、フィリップが花束を抱えて入って来た。


「調子はいかがですか? フォックス君には加減を頼んだのですが界人君はそうもいかなかったようで…… 申し訳ない」


 フィリップの言葉を聞いて桜は目が点になった。アレクセイは「やはりか…… 」と呟いてため息をついた。


「え? 大佐は分かってたんですか? 」


「考えてもみろ、もし手加減でないならなぜ我々は五体満足な状態で済んでいるんだ? 」


 アレクセイが呆れ顔で返すと、桜は何かを悟ったように静かに下を向き顔を赤らめ始めた。


「まぁいいでしょう。お二方の無事を確認したところで、あなた方に交渉したいことがある」


 フィリップが真面目に切り出すと、アレクセイの顔つきも即座に軍人のそれになった。


「今の我々には話を聞くしか出来ませんね。それに内容にもよります」


「だったら、私の話から聞いてもらうとするかな」


 そう言って扉を開けたのは、アレクセイにとって意外すぎる人物だった。それは点になったアレクセイの目を見れば一目瞭然で、誰だってそうなるに違いない男である。


「フェルディナンド…… 閣下」


「変な敬称はよしてください。私は既に政府を追われた身ですから」


 アレクセイが静かに頷く。フェルディナンドが語り出した。


「さて、大して時間もないし手短にいくよ…… 」




 ─────────────────────

 その頃、一星(イーシン)産業第7ラボにて


「ここも然り、各地のラボは予定通りに動いている。この調子では今年中の完成が望めそうです」


 劉が資料を渡しながらアルバートの顔を除き込む。資料の中身を確認してアルバートは静かに頷いた。


「やはり人を統べるに一番良いのは『神』だよ。後は神の降臨にふさわしい人柱を探し出せ」


「了解した。ロバートの方に頼んで頂けるかな? 」


「相分かった。早急に連絡しよう」


 アルバートと劉はお互いの顔を見て少しだけ微笑み、その場を後にした。

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