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72話 守るべきもの

長らくお待たせ致しました。申し訳ない

「ウッ!? ガァァ…… 」


 割れるような頭痛と脇腹の熱で目が覚める界人。周りの状況を探ろうと首を振ると、頭蓋が裂けるかというほどの激痛に見舞われた。


「ァ痛ってぇ…… 」


 界人がうめき声を上げると、ベッドの足の方でむくりと起き上がる影があった。


「……ユリ? 」


「ん、んん〜…… 」


 界人の推測は正解だった。ストレートの黒髪にモデルと見間違うほどのスタイル、そして何よりも待ち望んだ可愛らしい寝顔に思わず界人は頬が緩んだ。


「ユリ? おーい、起きてくれよ…… 」


「ん? 何…… っ!! 」


 一瞬眠そうな目を擦ったユリだったが、界人の笑顔を見た瞬間に目が潤み、みるみるうちに口角が上がっていく。


「界人! 界人ォォォ!! 」


 ユリが思い切り界人を抱き締める。「痛いっ! 勘弁してくれ!! 」と界人が必死に頭を撫でると、数秒間界人の胸に頭をうずめた後ゆっくりと顔を上げた。


「だって、あれから半日も寝てたんだよ? 怖かったんだもん…… 」


「悪かった、無茶をしすぎた。反省してる」


「ホント? 」


「あぁ、本気で。もうこんな傷負いたくない」


「でも…… 良かったよぉぉ〜 」


 再び涙を堪えきれずに界人に覆い被さるユリ。黙って界人が頭を撫でると嬉しそうに顔を擦り寄せる。


「おーい、起きたか? 」


 ノックと共にフォックスの声が聞こえて来る。界人が「大丈夫です」と返すと、フォックスとレオンが手のひらサイズの黒い箱を抱えて入って来た。


「お、やっと目を覚ましたか。全く、肋骨をぶつけて呼吸もまともに出来ん状態で戦闘なんぞするからこうなる」


「はい、すみません…… 」


「だが見つけたようだな、『捨てちゃいけないもの』を」


 フォックスがニヤリと笑うと、界人は恥ずかしそうに左手で頭を掻きながら答えた。


「それは…… はい」


「じゃあちゃんと思いを伝えろ。ほれ、お見舞いは置いていくから。な? 」


「……はい」


 顔を赤くしながら界人が箱を受け取ると、フォックスとレオンは微笑みながら部屋を出ていく。部屋を出る直前、レオンが「ちゃんと受け止めてあげなよ? 」とユリを見るとユリまで顔が赤くなっていく。


「その顔ならば問題は無さそうだ。二人ともしっかりやるんだぞ? 」


 フォックスたちが出ていってからも二人は話を切り出すことが出来なかった。お互いに顔を赤らめながら相手の顔を見合う。数分の沈黙を破ったのは界人の方だった。


「あのさ……俺、ユリが好きなんだ」


「知ってる」


 ストレート過ぎるユリの返答に若干肩透かしを食らいつつも界人は痛みで疼く肺から息を振り絞って続ける。


「でさ、ユリはフォックス以上をお望みだと思うんだけどそれは無理っぽい」


「違うの! あれは、そのぉ…… 」


 ユリがますます顔を赤くする。しかし界人はユリの顔から目を逸らさない。


「でさ、色々あったんだけどこれが一番良いかなって」


 そう言うと界人はフォックスから渡された箱を取り出した。中には二本の指輪が入っている。


「なんとか『Hive』のパイロット時代の給料から買っておいたんだけどさ、宝石付けれるほどのお金が出せなくてさ」


「え? じゃあこれ…… 」


「まぁね。あの時は渡す勇気が無かったしさ、レオンさんに預かってもらってたんだ」


「そ、そうなんだ…… 」


 ユリが指輪に目を落とすと、界人は静かに小さい方を取り出してユリの左手に差し出した。


「受け取って欲しい、この指輪を」


 ユリは少し考えるような仕草をみせてから首を傾げた。


「何それ? なんかの歌詞? 」


「ま、まぁな。正直に言うのが恥ずかしくてさ」


「そうだよねー」


 そう言うとユリは指輪を薬指にはめて界人に飛び付いた。


「……私も、素直になる」


「あぁ、ありがとう」





 ──────────────────────

 一方、フォックスとレオンは既に格納庫まで戻り作業を始めていた。


「さて、あっちはどうせアツアツだからこっちはこっちで仕事をしますか」


「そうだな。お前も界人を見習ってもう少し無茶を控えてくれると伴侶として気が楽なんだがな」


「考えておくよ」


 そう言うと、フォックスはゼロのコックピットハッチに手をかけた。


「やっぱりこいつが一番だな。じゃあレオン、こいつのOSのアップデートを始めるからアシスト頼むわ」


「分かった。ただし徹夜は認めないからな? 」

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